米国株見通し(11/12):くすぶるAI過熱相場懸念 エヌビディア決算に注目、S&P500短期展望
S&P500の短期見通し。くすぶるAI過熱相場の懸念。エヌビディア決算まで高値圏で売り買い交錯か。株価指数CFD「米国500」の重要チャート水準をIG証券のアナリストが詳細解説。
NYダウ最高値更新もくすぶるAI過熱相場の懸念
米政府機関の閉鎖が解除されるとの期待が米国株を支えている。11日の市場ではハイテク株売りを他のセクターがカバーし、S&P500種株価指数が3日続伸。ダウ工業株30種平均も3日続伸で最高値を更新した(11日終値:4万7927ドル96セント)。
10日のハイテク株買いは、AI相場に対する過度の悲観が後退しつつあることを示唆した。しかし、11日の米株式市場ではその買いが続かずナスダック総合指数と100指数が下落で終えたことは、AI相場がけん引する株高ストーリーの懸念がくすぶり続けていることを示している。
米株価指数の変動率:11月11日
ブルームバーグの価格データを基に作成
AI相場主導の株高はエヌビディア決算次第
AI相場の株高トレンドを左右するのが、エヌビディア(NVDA)の株価動向になると筆者は考えている。
10日の市場で同社の株価は、前週末比5.8%高と急反発した。しかし11日の市場では前日比3%安で終え上値の重さを印象付けた。ソフトバンクグループ(9984)によるエヌビディア株売却が影響したとの見方がある。しかし、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)やマイクロン・テクノロジー(MU)など、他の半導体株も売られた状況を考えるならば、AI過熱相場を投資家が警戒していることがうかがえる。
エヌビディアの予想PERは30倍台まで低下しているが、S&P500や情報技術セクターやコミュニケーション・サービスセクターを上回っている。データセンターへの投資を加速させている米ビッグテック企業の予想PERも上回る状況にある。
予想PERの推移:2023年以降
ブルームバーグのデータを基に作成 / 予想PER:12か月先
だが、相対的に高い予想PERはエヌビディアに対する期待の表れでもある。ゆえに、堅調な業績の成長がエヌビディア株の割高懸念を払しょくする最大の材料となろう。9日のIG米国レポートで述べたとおり、エヌビディアの予想EPSは増加の傾向を維持している。
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また、売上高と営業利益(EBIT)の5年平均成長率(CARG)は、生成AIの需要拡大を受け2024年以降劇的に上昇している。ブルームバーグのデータによれば、直近のアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)の売上高成長率(5年CARG)は27%、営業利益’(同)は23.12%。ブロードコム(AVGO)はそれぞれ22.34%、42.33%であることを考えるならば、エヌビディアの成長が突出している。
売上高・営業利益 5年間の年間平均成長率推移:2017年以降
ブルームバーグのデータを基に作成 / 年平均成長率:5年CARG
同社は来週19日、第3四半期(8-10月期)決算を発表する。レポート掲載時点でのブルームバーグのコンセンサス予想では、EPS(1株あたり利益)が1.25ドル(前年同期0.81ドル)、売上高は548億8500万ドル(前年同期比56.45%増)が見込まれている。第4四半期(11-1月期)のEPSは1.42ドル(前年同期0.89ドル)、売上高は612億4800万ドル(前年同期比55.73%増)と堅調な伸びが予想されている。
業績の見通しを含め投資家の期待を上回る決算内容ならば、同社の株は再び200台の攻防が予想される。エヌビディア株の上昇は、他のAI関連銘柄の買いを促す要因となろう。
一方、決算が株価下落の要因となれば25日線や50日線の攻防が焦点となろう。これら移動平均線を下方ブレイクする場合は、日足の一目雲の維持が焦点に浮上しよう。
エヌビディアの株価チャート:2025年9月以降
TradingView提供のチャート
AI相場はS&P500のトレンドを左右する。エヌビディア決算で過熱懸念が後退する場合、ダウ平均と同じくS&P500も最高値更新を視野に強気相場を維持する展開を想定したい。エヌビディア決算前の今週は、現在の高値圏で売り買い交錯の相場を予想する。
同指数の株価指数CFD「米国500」は後述するチャート水準の攻防に注目したい。
米国500の短期展望とチャート分析
目先の展望
現在の米株式市場ではAI過熱相場の他、雇用不安と消費者マインドの低下も株安要因として警戒したい。しかし、レポート掲載時点で米長期金利(10年債利回り)は4.1%台で推移しており、大きく低下する反応は見られない(11日の米債市場は休場)。VIX指数も警戒水準の20を下回る状況にある。S&P500の続伸も考えるならば、今週の米国500は10月30日に付けた最高値6921を意識する展開を想定したい。一方、反落の局面では、50日線が推移している6720の維持が焦点となろう。
上限:6921
今日以降、反発地合いが継続する場合は、6853と6880の攻防に注目したい。前者の6853はフィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準にあたる。レポート掲載時点では、このテクニカルラインをトライする状況にある。
後者の6880はサポートラインとしてもレジスタンスラインとしても意識された経緯がある。レジスタンスラインとして相場の反発を止める場合は、地合いの弱さを市場参加者に印象付けるだろう。6880の突破に成功すれば、6900ラインのトライを想定したい。このラインの突破は6921をトライするサインとなろう。
来週のエヌビディア決算を待たずに米国500が6921を上方ブレイクする場合は、このラインのサポート転換が焦点となろう。この状況が確認される場合は、節目の7000ドルを視野に上昇拡大の可能性が高まろう。まずは、6950の突破を確認したい。
上値の水準
・7000:次の節目水準
・6950:レジスタンスライン
・6921:今週の上限、最高値水準
・6880:レジスタンスライン
・6853:76.4%戻し
下限:6720
米国500の下落局面では、以下にまとめた下値水準の攻防に注目したい。
焦点はサポートラインとして相場を支えている50日線の維持となろう。この移動平均線は現在、6720台で推移している。6720を今週14日までの下限と想定したい。直下の6710は半値戻しにあたる(日足チャートを参照)。50日線と共にサポートゾーンを形成する可能性がある。
米国500が50日線をトライするサインとして、まずは25日線の攻防に注目したい。この移動平均線を下方ブレイクする場合、次の下値焦点は6755レベルとなろう。このラインを挟んで2つのフィボナッチ・リトレースメントの水準-38.2%戻し(6760)と23.6%戻し(6754)が展開している(日足チャートを参照)。6755レベルは、サポートラインに転換する可能性がある。
10月以降、下落の局面では下げ幅が拡大し、長い下ヒゲが表れる局面が見られる。今日以降、同じ状況に直面する場合は、先週7日の急落を止めたフィボナッチ・リトレースメント38.2%の水準6650を瞬間的にトライすることも意識しておきたい。
下値の水準
・6785:25日線
・6755:サポートライン、上に38.2%戻し、下に23.6%戻し
・6720:今週の下限、50日線、直下に半値戻し
・6650:38.2%戻し
米国500の日足チャート:2025年7月以降
TradingView提供のチャート
米国500の4時間足チャート:10月以降
TradingView提供のチャート
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