ドルは数か月ぶりの高値圏にあります。目先の焦点は、ドル高をけん引しているのが米金利の上昇なのか、それとも主にユーロ安なのかです。
ドルは力強い1か月となりました。主要通貨に対するドルの価値を示すドルインデックス(DXY)は2025年4月以来の高値に上昇し、ユーロは1ユーロ=1.12ドル近辺と、17か月ぶりの安値圏まで下落しました。
ドルインデックスは102.3前後で推移しており、高値の102.54をわずかに下回っています。
一見すると、話は単純です。米連邦準備制度理事会(FRB)は9月16日、12対0の全会一致で政策金利を3.75〜4.00%に引き上げました。参加者の予測の中央値は、年内にもう1回の利上げと、来年は利下げなしを示しています。一般に、金利が上がれば通貨は強くなります。
では、何がジレンマなのでしょうか。
利上げは全会一致で、議事要旨でも政策決定者全員が支持したことが示されました。ただ、その理由をめぐっては議論がありました。エネルギーなどの供給ショックが経済全体に広がるのに備えた「保険」として利上げを捉えた参加者がいる一方、需要の強さですでに利上げは正当化されるとみる参加者もいました。
次の展開については、シンガポールのDBS銀行とオランダの金融大手INGの見方が分かれています。DBSは、FRB高官が10月の利上げに否定的な姿勢を示すなか、ドル高は金融政策の支えを失いつつあると警告しています。一方INGは、ユーロ売りに支えられ、ドルインデックスが102.85に向けて上昇する余地はまだあるとみています。
ドルインデックスは、ドルそのものの強さを測る純粋な指標ではありません。構成通貨の58%をユーロが占めているためです。今回の動きが主に欧州側の問題によるものなら、トレーダーはドルの強さを過大評価しているおそれがあります。
より実態に近い姿は、158円近辺で推移する米ドル/円(USD/JPY)や、資源国通貨(主要な資源輸出国の通貨)のバスケットから読み取れるかもしれません。
最も重要なのがこの点です。米10年債利回りは10月5日(月)に5.349%をつけ、7日(水)には5.365%と2002年以来の高水準まで上昇した後、9日(金)には5.24%まで低下しました。
米国経済が強いために利回りが上がっているのなら、ドルの支えになります。一方、米国債を持つ見返りとして投資家がより大きな上乗せ金利を求めていること(タームプレミアムの上昇)が理由なら、警戒信号です。今回の債券売りの一因は、膨らみ続ける政府債務にあります。
前者は米国に資金を呼び込みますが、後者はやがて資金を米国から遠ざける可能性があります。
主要な水準、金利、FRBの見通し、原油価格。トレーダーが注目したいポイントは次のとおりです。
ドルインデックス(DXY):ドルはさらに上値を伸ばせるか。INGは102.85を上値のめどとみています。上昇の勢いが続くかどうかは、102を上回って推移できるかが目安になります。
米10年債利回り:利回りは高値を再び試すか。一時5.35%を上回った利回りが再び上昇すれば、利上げ観測を通じてドルを支える可能性があります。ただ、財政への懸念が理由であれば、市場心理を冷やすおそれもあります。
FRB:追加利上げを示唆するか。10月27〜28日の会合を前にした高官の発言は、金利見通しやドルをめぐる市場心理を変える可能性があります。
北海ブレント原油(北海原油):原油高はドルの変動を大きくするか。原油価格の上昇はインフレ懸念やリスク回避の動きを強め、FRBの見通しとドル需要の両方に影響する可能性があります。
ドルの強さは本物ですが、その背景には複数の要因があります。その日、どの要因が相場を主導しているのかを見極められるトレーダーは、指数の数字だけを追うトレーダーより有利な立場に立てるかもしれません。
※数値は2026年10月9日時点のものです。過去の実績は、将来の成果を示すものではありません。
本記事はIGグループが作成した英文記事をもとに、IG証券が日本の読者向けに再構成したものです。
原文: The dollar dilemma
日本語版編集: IG証券
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