株式のトレーダーは選挙をヘッドラインイベントとして見ます。債券のトレーダーは、財政を左右するイベントとして見ます。11月3日の米国中間選挙が近づくなか、投資家は誰が勝つかよりも、その結果が歳出、財政赤字、政策への期待に何を意味するかにより注目しているかもしれません。こうしたものは、株価に表れるより先に、米国債利回りに表れる傾向があります。
債券市場はすでに動いています。米10年債利回りは9月中旬に5%を上回り、2023年以来の5%超えとなりました。10月上旬には5.34%に達し、24年ぶりの高水準となりました。原油価格の上昇とインフレ懸念で売りが膨らんだためです。政権は投票前に借入コストの引き下げを図っており、財務省は長期債の買い戻しを拡大し、10〜30年ゾーンでの買い戻しオペの上限額を20億米ドルから40億米ドル超へと倍増させました。それでも利回りは高止まりしており、10月9日の10年債利回りは5.24%でした。 市場は、9月の利上げに続く米連邦準備制度理事会(FRB)のさらなる利上げの可能性を一定程度織り込んでいます。
そのため、選挙関連の価格見直しが最初に表れやすいのは金利です。
分断された議会は、新たな歳出を抑える可能性があります。一方、与党が両院を握る議会であれば、減税の延長や財政支援の追加が容易になるかもしれません。いずれにせよ、債券市場の問いは同じです。どれだけの債務を、どの価格で消化する必要があるのか、ということです。
そのため、投資家に売却される新規国債の発行量は現実的なリスクです。供給が多く、買い手が足りなければ、政府は買い手を引き付けるために、より高い利回りを提示しなければなりません。政治的なシナリオがどうであれ、利回りは急速に跳ね上がる可能性があります。
歴史は、ある程度の利回り低下を示唆しています。過去を見ると、10年債利回りは中間選挙の年の前半に上昇し、後半に低下する傾向がありました。 しかし、これはパターンであって約束ではありません。10年債利回りは第3四半期に急上昇しており、今年のインフレと原油の動向がそれを覆す可能性もあります。
利回りの変動が市場にどう波及し得るかは次のとおりです。
米国債とドル―諸刃の剣: 利回りの上昇は海外投資家を引き付ける傾向があり、ドルを支える可能性があります。ドル指数は、利回りが上昇した9月に約2%上昇しました。ただし、状況は常に単純とは限りません。財政赤字が拡大しそうな場合、追加の債務への懸念から利回りが上昇し、米国の財政への不安からドルが下落する可能性があります。
銀行―利ざやの拡大、バランスシートの悪化: 長期金利が短期金利より速く上昇すると、銀行は融資でより多く稼げる可能性があります。しかし、利回りの急上昇は、銀行が保有する債券の価値を目減りさせます。エコノミストは、10年債利回りが5%を上回る場合の中小規模銀行へのリスクを指摘しており、利回りはすでにこの水準を上回っています。
グロース株―割引率の影響を最も受けやすい: テクノロジー株をはじめとする長期デュレーションの株式は、収益が将来の遠い時期にあるため、割引率に最も敏感です。利回りの上昇は、業績が順調でも、バリュエーションを圧迫し得ます。
金―ヘッジ手段と機会費用の板挟み: 金は、インフレヘッジとしての役割と、利回りを生まない資産を保有する機会費用の間で板挟みになっています。利回りが急上昇する局面で下落し、その後、インフレ指標の軟化で利上げ観測が後退すると小幅に反発しましたが、高い利回りが反発を抑えています。注目すべきは実質利回りとドルです。
住宅関連株―金利ストレスの最前線: 住宅ローン金利は10年債利回りに連動するため、住宅建設会社、建材会社、住宅ローン会社は金利ストレスの自然なバロメーターです。10年債利回りは、住宅ローン、自動車ローン、企業の借入のベンチマークであり、住宅ローン金利は7%近くに戻っているため、 利回りが高止まりすれば、住宅の購入しやすさ(アフォーダビリティ)に直結します。これは両党が注目しているテーマです。
今後数週間のチェックリストです。
国債入札: 新規国債への需要が強いか弱いかは、利回りにどの程度の圧力がかかっているかを示します。
5.34%のピーク: 2023年には5%が上限として機能したように、今回も5%が上限になるのかが注目されてきましたが、10年債利回りはすでに数週間にわたり5%を上回って推移しています。1 問題は、10月上旬の高値が維持されるのか、それとも長期金利がより高いレンジに定着しつつあるのかです。
インフレとFRBの織り込み: 9月の消費者物価指数(CPI)は10月14日に発表され、前年同月比3.7%上昇でした。FRBの政策決定は10月28日に予定されています。CPIとFRBのトーンが、政策当局にどの程度の余地があるかを左右します。
選挙後の財政シグナル: 歳出、減税措置、債務上限に関する初期のコメントは、選挙結果そのものよりも利回りを動かす可能性があります。
クロスアセットの動き: ドル、金、銀行株がいずれも利回りに対して同じ方向に反応するなら、金利が市場全体のペースを決めている可能性が高いでしょう。
選挙結果は不透明であり、どの結果が市場を特定の方向に動かすと保証されるものでもありません。より明確なのは、その連鎖の仕組みです。財政への期待が利回りに、利回りがドルに、そしてそこから銀行、グロース株、金、住宅関連株へと波及していきます。
中間選挙が市場を動かすなら、最初にそれを示すのは債券市場かもしれません。引き続きご注目ください。
本記事は IGグループが作成した英文記事をもとに、IG証券が日本の読者向けに再構成したものです。
原文: Midterms and the rates trade: will bonds move first?
日本語版編集: IG証券
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