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関税ドミノはどの順に倒れるか:為替から企業業績まで

関税のニュースが、すべての市場を一度に動かすことはまれです。影響は順番に広がる傾向があり、為替は数分で反応する一方、企業業績が追いつくには数四半期かかります。アジア太平洋地域のトレーダーにとっては、ドミノが倒れる順番を知ることが、政策そのものと同じくらい重要になりえます。

Source: Getty

動き続ける米国の通商政策

米国の通商政策は、決して固定されたものではありません。米シンクタンクのタックス・ファウンデーションは、2025年1月以降の関税の変更が50回を超えると数えており、新たな関税の対象は2026年の米国の財輸入の約54%に及ぶと推計しています。2月には、緊急権限に基づいて課された関税を米連邦最高裁判所が違法と判断し、政権は別の法的根拠を使って関税の手段を立て直してきました。

米中の休戦にも、注目すべき期限があります。合意の条件は11月10日に期限を迎える予定でしたが、ベッセント財務長官は、条件を2027年1月10日まで維持すると述べています。市場が織り込もうとしているのは「一時停止」であって、「決着」ではありません。

ドミノ①:米ドル(通商摩擦が最初に響く場所)

最初に反応するのは為替ですが、その方向は決まっていません。理論上は、関税の強化によって投資家が安全資産を求め、ドルが買われる可能性があります。しかし実際には、2025年4月の「解放の日」の関税発表の後も、2026年1月に欧州への関税が示唆されたときも、投資家が円やスイスフランに資金を移し、ドルは下落しました。関税は米国の成長を損ない、インフレを押し上げ、報復を招く可能性があり、そのいずれもドルの重しになりえます。アジア太平洋地域にとって最初の目安になるのは、円、豪ドル、人民元に対するドルの動きです。

ドミノ②:モノの価格(誰がコストを払うのか)

関税は輸入品にかかる税金です。そのため、最大の問題は誰がそれを負担するのかです。コストは、輸入業者、小売業者、消費者が、海外の輸出企業と分け合います。その配分が企業の利益を左右します。推計には大きな幅があります。経済学者キャロライン・フロイント氏の最近の研究では、2025年の関税負担の約47%を海外の輸出企業が吸収したとされ、これまでの研究よりはるかに高い数字になりました。一方、ニューヨーク連銀などの分析では、輸出企業の負担は6〜14%にとどまるとしています。

ドミノ③:小売業(最初に利益率に響く業種)

衣料品、家電、家具など、輸入への依存度が高く、1件あたりの利益が薄い小売業者は、売上高が変わる前に株価が動くことがよくあります。2月20日に最高裁が緊急権限に基づく関税を違法と判断した際には、アディダス(独フランクフルト:ADS)、デッカーズ・アウトドア(DECK)、アンダーアーマー(UAA)など輸入依存度の高いスポーツ用品株が、売上高に変化が出るずっと前に、午前の取引で2%超上昇しました。数日後に代わりの関税が発動され、税率を15%に引き上げる方針が示されると、ナイキ(NKE)やギャップ(GAP)の株価は下落しました。

ドミノ④:製造業(影響が両方向に表れる業種)

製造業には2つの効果が同時に働きます。購入する素材や部品への関税はコストを押し上げる一方、完成品への保護は米国の生産者を助ける可能性があります。投資や生産の国内回帰の計画には時間がかかるため、影響は新規受注や工場の景況感調査に、遅れて表れる傾向があります。

ドミノ⑤:商品(需要が方向を決める)

金属や農産物などの商品(コモディティ)は、需要の見通しで動きます。中国の工場の減速は産業用金属の重しになります。一方、休戦や9月の米中首脳会談に関連した大豆や石炭などの購入約束は、農産物やエネルギー市場の支えになりえます。ただ、実際の引き渡しにはばらつきがあります。金(スポット金)は、関税そのものより、ドルや金利に連動することが多い資産です。

アジア太平洋市場への影響

輸出企業の業績に影響が表れるのは最後ですが、株価は期待で早めに動くことがあります。地域ごとの展開は次のとおりです。

  • 日本:円は連鎖の最上流にあります。円安は自動車や機械などの輸出企業の支えになる一方、リスク回避による急な円高は、日経平均株価(日本225)の主力銘柄に打撃を与える可能性があります。最初の目安になるのは米ドル/円(USD/JPY)の動きです。

  • オーストラリア:豪ドルと豪州の鉱業株は、中国関連の需要を測る良い指標です。中国の工業活動を支える休戦の延長は、鉄鉱石や銅の市場心理を支える傾向があります。緊張が高まれば、豪ドルと資源株はすぐに打撃を受ける可能性があります。 

  • シンガポールと香港:どちらも貿易・金融のハブ(拠点)であるため、海上輸送量、再輸出、投資家のリスク選好の影響を受けます。シンガポールの主要株価指数(IG証券での取り扱いはありません)は銀行と不動産投資信託の比重が大きいため、金利見通しも重要です。香港は、中国関連のテクノロジー株や消費関連株への依存度がより高くなっています。

  • 中国関連の市場:人民元、CSI300指数(IG証券での取り扱いはありません)、ハンセン・テック指数は、関税、レアアース(希土類)、輸出規制に関するあらゆるニュースに反応します。中国によるレアアース規制の一時停止は休戦の重要な要素であるため、そこが揺らげば、まずこのグループが打撃を受ける可能性が高いでしょう。

トレーダーが注目したいポイント

確認しておきたい点は次の4つです。

  • 休戦の詳細:延長が正式に決まるか、レアアースと購入約束が維持されるか。

  • 新たな分野別関税:特定の分野を狙った関税は、休戦の枠外で課される可能性があります。 

  • 為替の動き:ドル、円、人民元がそろって動けば、市場が通商リスクを幅広く織り込み直している可能性があります。

  • 企業の業績見通し:小売業者や製造業者の発言から、誰がコストを吸収しているのかが見えてきます。

まとめ

通商政策がすべてを一度に動かすことはまれです。通常は、為替、セクター別の株価、商品、企業業績の順に影響が広がり、その間の時間差が機会にもリスクにもなります。政策は短期間で変わりうるため、個々のニュースより、波及の順番のほうが重要です。

通商政策では、次のニュースがいつ出てもおかしくありません。今後の動きにも注目です。

本記事はIGグループが作成した英文記事をもとに、IG証券が日本の読者向けに再構成したものです。

原文: How tariff dominoes fall

日本語版編集: IG証券

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