ドル円週間見通し:161円視野に強気維持か、FOMCと日銀会合 それぞれの焦点
今週のドル円見通し。161円視野に強気地合いの維持を予想。焦点はFOMC。ウォーシュ新FRB議長の政策姿勢とドットプロットに注目。日銀の利上げは織り込み済み。内田副総裁が利上げに慎重なら円安進行も。週間想定レンジは159.00-161.30円。
要点
- 先週の米ドルは方向感を欠いた。 米イラン停戦合意が実現すれば、今週前半は「有事のドル買い」の後退による米ドル安を想定したい
- 最大の焦点はFOMC(16-17日)だ。 ウォーシュ新議長の政策姿勢とドットプロットに注目したい。いずれもタカ派と受け止められれば年内の利上げ観測が強まり、米ドル高が再燃することが予想される
- 日銀の金融政策決定会合(15-16日)では、利上げが織り込まれている。内田副総裁の会見に注目。インフレ見通しと利上げトーンが短期的に円相場のトレンドを左右するだろう
- ドル円(USD/JPY)の週間想定レンジは159.00-161.30円。FOMCが米ドル高の要因、日銀会合が円安の要因となれば、161円台の攻防が焦点に浮上しよう
停戦合意なら週前半の米ドル安を想定
先週の米ドルは方向性に欠ける1週間となった。かく乱要因は中東情勢を巡るトランプ米大統領の発言だった。米国とイランの軍事的緊張が残るなか、11日にトランプ氏がイランとの戦闘終結に向けた和平合意について「週末にも署名が可能」と述べた。NY原油先物価格には売り圧力が強まり、週次で6%超下落して終えた。
原油安に連動して米金利の上昇も一服し、一時再燃した「有事のドル買い」は急速に後退。結果、米ドルは主要通貨(G10通貨)で売り買いが交錯し、方向感を欠く動きとなった。
米ドルのパフォーマンス:6月8日~12日
ブルームバーグの為替データで作成
トランプ米大統領は米東部時間13日午後(日本時間未明)、イランとの戦闘終結の合意について、14日に署名される予定とSNSに投稿した。一方、仲介役を務めるパキスタンのシャリフ首相も13日、合意は「24時間以内に成立する見通し」とSNSに投稿し、早ければ翌14日の電子署名に向けて準備を進めていると述べた。
停戦協議は大詰めを迎えていると見られるが、合意が成立するかはなお不透明だ。イラン側は14日の署名に関する観測を否定し、条件を巡る双方の説明には食い違いも残る。それでも停戦が実現すれば、原油安が米金利の上昇を抑え、インフレ圧力も和らげる。外為市場では「有事のドル買い」が後退しよう。今週前半は米ドル安へ振れる可能性がある。
NY原油先物と米長期金利 1時間足チャート:5月以降
TradingView提供のチャート
FOMC:焦点はウォーシュ新議長の政策姿勢と政策金利見通し
だが、中東情勢が米ドル安の要因となっても、その動きは短期で終息する可能性がある。そのきっかけとなり得るのが、16-17日の米連邦公開市場委員会(FOMC)だ。
5月にケビン・ウォーシュ氏が米連邦準備制度理事会(FRB)の新たな議長に就任し、今回が初のFOMCとなる。注目はウォーシュ氏の労働市場とインフレに関する見解、そして政策姿勢の示し方にある。政策金利(FF金利)の誘導目標は現在3.50-3.75%にあり、今回は据え置きが予想されている。市場の関心は、年後半の利上げの可能性とその時期に集中するだろう。ウォーシュ氏が労働市場とインフレの先行きについてどのような見解を持ち、それらをどのような表現で伝えるかは、市場の利上げ観測に大きく影響しよう。
もう一つの注目材料が、ドットプロット(FOMC参加者の政策金利見通し)だ。ウォーシュ氏はドットプロットに否定的な立場と見られるが、市場参加者は重要な指標として引き続き注目するだろう。経済見通し(SEP)で、インフレとともに政策金利の見通しが上方シフトするかが最大の焦点となる。
足元の翌日物金利スワップ(OIS)市場では、今年12月までに1回の利上げを約80%の確率で織り込むが、先週は10月会合での利上げ確率が70%台へ上昇する場面が見られた(12日時点では40%台へ低下)。年内の利上げ時期を巡る市場の思惑が揺れやすい状況にある。ゆえに、今回のFOMCが"タカ派"と受け止められれば、年内の早期利上げ観測が高まり、米ドル高の要因となろう。
米政策金利の見通し
ブルームバーグのデータで作成 / 12日時点
日銀会合:植田総裁欠席のもと、内田副総裁の会見が焦点
15-16日に日銀は金融政策決定会合を開く。植田和男総裁は入院(肝嚢胞感染症、約2週間)のため会合を欠席する。会合の議長は氷見野良三副総裁が代行し、会合後の記者会見は内田真一副総裁が担う。
IG為替レポートで述べてきた通り、OIS市場では6月の利上げを完全に織り込んでいる。このため利上げが決定されても無風で通過することが予想される。円高要因となっても、一過性で終わるだろう。
焦点は、内田副総裁の会見トーンにある。内田氏が年後半の利上げペースに慎重な姿勢を示せば、市場ではハト派と受け止められ、会見中に円安が進行する可能性がある。
一方、インフレリスクへの対応を重視する姿勢を示し、利上げの必要性に言及する場合はタカ派と解釈され、円高の要因になり得る。もっとも、前述の通りFRBは年内に利上げへ動く可能性がある。年2回の日銀利上げも年初から意識されている。仮に内田副総裁の会見がタカ派と受け止められても、円高は短期で終息すると予想する。
ドル円のチャート分析、週間想定レンジ159.00-161.30円
米ドル高進行なら161円の攻防を想定
ドル円(USD/JPY)のトレンドを日足チャートで確認すると、RSIは50以上~70以下の水準で推移し、短期的な過熱感を意識する状況にはない。ゼロラインを上回るMACD、21日線と50日線のゴールデンクロス、159.50円レベルのサポート転換も踏まえれば、ドル円の地合いは強い。FOMCが米ドル高の要因、日銀会合が円安の要因となれば、ドル円は以下にまとめたチャート水準の攻防に注目したい。
先週12日に相場の反発を止めたフィボナッチ・リトレースメント76.4%の160.34円(1時間足、青矢印)を突破すれば、先週高値の160.60円、そして4月30日の大陰線高値160.72円へと上昇拡大が予想される。160.72円を明確に上抜ければ、節目の161.00円が次の攻防ラインとなろう。
ドル円が161円台へ上昇する場合は、1時間足チャートのフィボナッチ・エクスパンション161.8%水準161.35円レベルを視野に上昇拡大が予想される。12日の高値水準から約1円上の161.30円レベルを今週の上限と予想する。
注目水準:レジスタンス
・161.30円:上限予想、フィボナッチ・エクスパンション161.8%(161.35円)
・161.00円:節目水準
・160.72円:4月30日の高値水準
・160.60円:先週の高値水準
・160.30円:6月12日の高値水準
下値の焦点は159円の維持、投機的な円高に要注意
一方、中東懸念の後退による米ドル安や、日銀会合(内田副総裁の会見)が短期的な円高要因となりドル円(USD/JPY)が下値を試す場合は、以下のチャート水準の攻防に注目したい。
最初の焦点は159.50円レベルだ。現在、21日線が159.50円台へ上昇している。先週はレジスタンスからサポートへの転換も確認された(日足チャート、青矢印)。
ドル円が159.50円を明確に割り込めば、次は159.00円を試す展開となろう。5月下旬以降、サポートラインとして意識されている50日線が、直下の158.90円台で推移している。テクニカル面でも意識されやすい159.00円を今週の下限と予想する。
警戒すべきは、投機的な円ショートの巻き戻しだ。米CFTCのデータによると、9日時点で非商業部門の円売り(ショート)ポジションは26.7万枚に増加し、ネットの売り越しは14万5818枚へ拡大した。投機筋が円売りに大きく傾いているだけに、内田副総裁の会見が“タカ派”と受け止められれば、ポジション調整(円の買い戻し)の材料となりやすい。
非商業部門 円ポジション動向:2025年以降
CFTCとブルームバーグのデータで作成 / 6月9日時点
米ドル安と円ショートの巻き戻しが同時に進めば、その規模次第では159.00円を下方ブレイクし、158.00円(89日線)レベルをトライする展開を想定しておきたい。
注目水準:サポート
・159.50円:21日線、サポート転換
・159.00円:下限予想、50日移動平均線(158.90円台)
・158.00円:89日線(158.17円)
※移動平均線の水準:6月12日時点
ドル円 日足チャート:3月以降
TradingView提供のチャート
ドル円 時間足チャート:6月5日以降
TradingView提供のチャート
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