【ドル円の週間展望】円安再燃のムード、FOMCにらみ、パウエルFRB議長の会見は米ドル買い要因か?
円安再燃のムードが高まっている。FOMCとパウエルFRB議長の会見が米ドル買いの要因となれば、今週のドル円は上値水準の見極めが焦点となろう。

概要
トランプ関税ショックによる米ドル安が一服している。しかし、買い戻しは限定的である。今週6~7日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が開かれる。米ドル買いの要因となるか?パウエルFRB議長の政策姿勢に注目したい。円安再燃のムードが高まっている。今週のドル円は、新たな上値水準の見極めが焦点となろう。予想レンジの上限は148.00レベル。一方、予想レンジの下限は142.00レベル。
米ドル売り一服も買い戻しは限定的、金利の動きと乖離
外為市場では、トランプ関税ショックの米ドル売りがひとまず一服している。しかし、米ドル高へ転じるムードにはない。米ドル相場の大まかなトレンドを示すドル指数(DXY)は21日線すら突破できずにいる(チャートの緑矢印を参照)。
ドル指数のチャート:日足 今年2月下旬以降

出所:TradingView
米ドルの買い戻しが限定的である主因は米債市場との関係-「米金利の上昇→米ドル買い」、「米金利の低下→米ドル売り」という従来の関係が崩れていることにあると筆者は考えている。
先週2日の米債市場では4月米雇用統計の内容を受け、2年債利回りと10年債利回りが上昇した。本来であれば、米金利の上昇は米ドル買いの要因である。しかしこの日の外為市場では、主要通貨に対して米ドル売り優勢の展開となった
市場間の相関関係が崩れることは、特段珍しくはない。だが、米国のトランプ大統領が相互関税を発表して以降、約1ヶ月の間に米ドルと米金利の相関関係が崩れる局面が多く見られる今の状況は、トランプ関税のショックから米ドルが完全に脱し切れていない状況を示唆している。ゆえに今週の外為市場も、米中の通商交渉に関する報道が米ドルの変動要因となろう。
ドル指数と米金利の動向:日足 2024年9月以降

ブルームバーグのデータで筆者が作成
FOMC、焦点はパウエル議長の政策姿勢、米ドル買いの要因となるか
現在の米ドルは、材料次第で上にも下にも振れる状況にある。今週は米中交渉の他、米連邦公開市場委員会(FOMC)も米ドルの変動要因となろう。今回のFOMCでは政策金利の据え置きが予想されている。ゆえに焦点は、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が示す政策姿勢となろう。
4月の米雇用統計が労働市場の底堅さを示す内容と受け止められたことで、6月FOMCの利下げ確率が30%台へ急低下している(5月2日時点)。米中懸念の後退で米ドル安が一服するなか、パウエルFRB議長が定例会見でインフレ抑制重視の構えを崩さず、追加の利下げについて慎重姿勢を維持すれば、短期的な米ドル買いの要因になり得る。
米ドルの買い戻しが進行すれば、ドル指数(DXY)は21日線を突破し、101ポイントのトライが予想される。テクニカルの面では、3月の高値と4月安値の半値戻しの水準101.30レベルのトライに注目したい。この水準は、トランプ米大統領が相互関税を発表した直後の安値水準でもある(上の日足チャート、黒矢印を参照)。
円安再燃のムード、ドル円の焦点は新たな上値水準の見極め
円安再燃のムードが高まっている。今週もこの流れが続く可能性があると筆者は考えている。そう考える理由の一つが、日銀による追加利上げ観測の後退である。
日銀は先週1日の金融政策決定会合で、政策金利となる無担保コール翌日物金利の誘導目標を0.5%に据え置いた。基調的な物価の上昇率が目標としている2%に届くとの見通しが実現すれば、追加の利上げをする従来の構えを崩していない。しかし、植田和男総裁は日銀会合後の定例会見で、各国の通商政策などの影響による不確実性(海外経済の減速、国内企業の収益減少、成長ペースの鈍化)に言及した。追加の利上げについては、関税とその影響を慎重に見ていく必要があり、適切な時期を示すのは難しいとの見解を示した。
短期金融市場では追加利上げの時期が後ずれするとの観測が強まり、「年内の追加利上げなし」を次第に織り込み始めている。日銀イベント後に円売りが進行し、先週の円相場は対主要通貨で下落した。今週も利上げ観測の後退を意識した円売りを想定したい。
円相場 週間の変動率:4月28日~5月2日

ブルームバーグの為替データで筆者が作成
リスク選好のムードが強まている状況も円安の要因となろう。2日の米株式市場では、多くの機関投資家が運用指標にするS&P500が9日続伸した。ダウ平均も2023年12月以来、約1年4カ月ぶりの9連騰となり、4月2日以来の高値で終えた。
市場の混乱を受けトランプ米政権は硬軟織り交ぜた関税外交を展開している。一方、中国が通商交渉開始の手がかりを模索しているとの報道や一部の米国製品について関税の適用除外を非公表で開始したとの報道も見られる。これら両国の動きは、通商交渉が進展するとの期待を高めている。
今週も米中懸念が和らげば、米国株は反発地合いを維持することが予想される。日本や欧州の主要指数も追随しよう。リスク選好相場は、過去最高水準に積み上がっている投機筋の円買いポジションを調整する要因にもなり得る。
非商業部門のポジション動向:日本円

CFTCとブルームバーグのデータで筆者が作成 /4月29日時点
ドル円の週間見通しと注目のテクニカルライン
円安再燃なら50日線の攻防が視野に、予想レンジの上限は148.00
今週も円安が続く場合、ドル円(USD/JPY)は一目基準線と半値戻しが重なる145.55レベルをローソク足の実体で突破するだろう。先週2日の上昇を止めた146.00レベルをも上方ブレイクすれば、50日線のトライが視野に入ろう。
米FOMCとパウエルFRB議長の会見が米ドル買いの要因となれば、50日線の突破を想定したい。この移動平均線は、フィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準146.90レベルで推移している(5月2日時点)。
日足のRSIは50付近で推移し、買いの過熱感は見られない。円売りと米ドル買いが重なりドル円が50日線(61.8%戻し)を完全に突破すれば、4月の上旬に相場の反発を止めた148.00レベルを視野に上昇幅の拡大を想定したい。大陰線となった4月10日の高値147.71の突破は、148.00をトライするサインとなろう。
レジスタンスライン:日足
・148.00:予想レンジの上限
・147.71:4月10日の高値
・146.90:50日線、61.8%戻し
・146.00:レジスタンスライン
・145.56:半値戻し、一目基準線
※移動平均線と基準線の水準:5月2日時点
米ドル安再燃なら21日線と転換線に注目、予想レンジの下限は142.00
5日に4月のIMS非製造業景気指数がある。ブルームバーグ予想は50.3と、前月の50.8から低下する見通しにある。景気懸念を強める経済指標は米ドル安の要因となろう。筆者の予想に反してFOMCとパウエルFRB議長の会見が米ドル売りの要因となれば、ドル円(USD/JPY)は以下にまとめたサポートラインの攻防に注目したい。週間予想レンジの下限は、先週28日と29日に相場を下支えした142.00レベルを想定したい。
ドル円が142.00レベルをトライするサインとして、まずは先週2日の下落を止めた21日線と4月の下旬以降サポートラインとして意識されている一目転換線の攻防に注目したい。21日線は1時間足の直近高安のフィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準付近で推移している。一目転換線は、フィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準と重なっている(いずれも1時間足チャートを参照)。サポート転換の可能性がある143.20レベルの下方ブレイクは、一目転換線をトライするサインとなろう。転換線の下方ブレイクは、142.00をトライするサインとなろう。
サポートライン
・144.00:サポートライン
・143.80:21日線(日足)、61.8%戻し(1時間足)
・143.20:サポート転換の可能性あり(1時間足)
・142.90:一目転換線(日足)、76.4%戻し(1時間足)
・142.00:予想レンジの下限(1時間足、日足)
※移動平均線と転換線の水準:5月2日時点
ドル円のチャート
日足:今年2月下旬以降

出所:TradingView
1時間足:4月28日以降

出所:TradingView
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