【為替】「米国売り」再燃でドル安進行、トランプ氏発言でFRB独立性に懸念、ドル円は140円割れを警戒
トランプ米大統領の利下げ要求で「米国売り」が再燃。外為市場では米ドル売りが止まらない。ドル円は140円割れが視野に入る。

記事のサマリー
トランプ米大統領は自身のSNSで米連邦準備制度理事会(FRB)に早期の利下げを要求。パウエル議長の慎重姿勢を批判した。関税リスクに加えて中銀の独立性に対する懸念までが浮上し、21日の市場で「米国売り」が再燃した。外為市場では米ドル売りが止まらない。ドル指数は2022年以来となる98ポイント割れの局面が見られた。ドル円は、昨年9月以来の安値水準まで下落。節目の140円割れが視野に入る。
米ドル売り進行、日本円とスイスフランが受け皿に
外為市場では米ドル安が止まらない。21日の市場で米ドル相場のトレンドを示すドル指数(DXY)は一時2022年3月以来となる98ポイント割れの局面が見られた。
通貨別では、対スイスフランで0.8040レベルまで下落する場面があった。2015年1月以来、およそ10年ぶりの米ドル安水準である。対日本円でも米ドル安が進行し、昨日は140.47レベル(IGレート)まで下落した。昨年9月以来の米ドル安・円高水準である。米ドル売りの受け皿として、スイスフランと日本円が選好されている今の状況は、投資家心理の悪化(リスク回避姿勢)を示唆している。
ドル指数のチャート:月足 2020年以降

出所:TradingView
トランプ米大統領利下げを要求、FRB独立性の懸念で「米国売り」再燃
トランプ米大統領は自身のSNSで米連邦準備制度理事会(FRB)に早期の利下げを要求し、パウエル議長の政策姿勢を批判した。
米相互関税に端を発する貿易戦争の激化とそれによる景気の減速が懸念されるなか、トランプ氏の言動でFRBの独立性に対する懸念までが浮上。21日の米株式市場で主要指数は総崩れとなった。ダウ平均の下落幅は一時1,300ドルを超す場面が見られた。
注目すべきは米債市場の動きである。リスク回避(株安)は安全資産の買い需要を高める要因である。国際商品の市場では昨日XAUが3,400ドルを突破し、連日の最高値更新となった。しかし、同じ安全資産である米国債は売られた。米10年債利回りは4.4%台へ上昇した。
本来であれば、米金利の上昇は米ドル買いの要因である。しかし、冒頭で述べたとおり外為市場では米ドル売りが止まらない。4月の第2週目に見られた「米国売り」が再燃した。
「米国売り」の震源地はトランプ米大統領である。そのトランプ氏は各国との関税交渉で強気の姿勢を貫き、公然とFRBには早期の利下げまで要求してきた。これらの状況を考えるならば、「米国売り」を警戒する状況が続こう。外為市場でのさらなる米ドル安を意識したい。
米国10年債利回りとドル指数:1時間足 4月以降

出所:TradingView
ドル円の見通しと注目のテクニカルライン
4回利下げの可能性を意識し始めた市場
週間のIG為替レポートで、今週も米ドル安の継続を予想すると述べた。その理由の一つが、上で述べた「米国売り」だった。
米ドル売り継続の要因としてもう一つ注目すべきは、市場が抱く米FRBの利下げ観測である。この点を短期金融市場の動向で確認すると、今年12月末の政策金利の予想水準が3.3%台へ低下している。今月8日には3.2%台まで低下する局面が見られた。市場参加者が4回利下げの可能性を意識し始めている今の状況は、相互関税による米国経済の先行きリスクを意識した動きと考えることができる。市場の予想通りとなるかはまた別問題だが、米連邦公開市場委員会(FOMC)参加者の想定(2回利下げの予想)を超える利下げ観測もまた、米ドル安の要因となろう。
米FRB 政策金利の予想推移

ブルームバーグのデータで筆者が作成 / OISに基づく予想 / 22日8時時点
節目の140.00割れを意識する局面に
日足のMACD、DMIそしてADXはいずれもドル円(USD/JPY)の弱気相場の勢いが増している状況を示唆している。上で述べた「米国売り」の再燃を考えるならば、今日も下落相場を想定したい。焦点は、節目のライン140.00のトライとなろう。米ドル売りが止まらない状況を考えるならば、140.00割れを意識する局面にある。
ドル円が140円を完全に下方ブレイクすれば、週間のIG為替レポートで取り上げた138.00レベルを視野に下落幅の拡大を想定したい。昨年9月16日の安値139.58レベルの下方ブレイクは、139.00レベルをトライするシグナルとなろう。139.00ラインをも一気に下方ブレイクすれば、138.00レベルを視野にドル円の下落幅拡大を想定したい。
サポートライン
・141.47:4月21日の安値
・140.00:心理的な節目(週足、日足)
・139.58:昨年9月16日の安値(週足)
・139.00:サポートライン(日足)
・138.00:予想レンジの下限(週足、日足)
まずは5日線の突破が焦点に、反発の局面では「急反落」を警戒
今週24日(米国現地時間)に日米の財務相会談が予定されている。為替会談が開催される場合、焦点となるのが円安に対する米国側の思惑である。週間IG為替レポートで述べたとおり、スコット・ベッセント米財務長官は直近の円高について日本の経済ファンダメンタルズと日銀の利上げ姿勢を反映した動きと判断している。米国側が現在の米ドル安・円高の状況を評価する場合は、短期間で下落幅が拡大したドル円の急反発する要因になり得る。このケースでは、週間レポートで取り上げたレジスタンスラインの攻防に注目したい。
警戒すべきは、日米会談で米国側がさらに円安是正を求めてくる場合である。このケースでは、上で述べた138円トライが現実味を帯びてくるだろう。このケースでは相場の反発も限られよう。目先は5日線までの調整相場(反発)を想定したい。しかし、この移動平均線を突破しても4月9日と10日に相場の反発を止めた10日線での反落を想定したい。
上で述べたとおり、今は「米国売り」によるドル安のさらなる進行を警戒する必要がある。ゆえに、ドル円の反発局面では「急反落」を警戒したい。
レジスタンスライン
・142.95:10日線(日足)
・142.00:レジスタンスライン
・141.61:5日線(日足)
ドル円のチャート
週足:2022年9月以降

出所:TradingView
日足:今年3月以降

出所:TradingView
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