【米国株】ナスダック100 AI相場急失速で視界不良、CPI警戒 12日スペースX上場
ナスダック100の週間見通し。AI・半導体相場が急失速。今週の焦点は5月米CPIとPPI。インフレ加速なら下落拡大を警戒。12日にスペースXが上場。ナスダック100への影響注視。米国テク株100の週間想定レンジは27000~30700。
要点
- ブロードコム・ショックで米AI・半導体相場が急失速。今週のナスダック100は下落拡大を警戒したい
- 焦点は米インフレ指標と12日のスペースX上場。5月CPIとPPIでインフレ加速が示されれば、長期金利の上昇→AI・半導体関連株の調整売り加速を警戒。一方、スペースX上場はナスダック100への組み入れ期待から下支え要因となるか注目したい
- 株価指数CFD「米国テク株100」の週間想定レンジは27000~30700
ブロードコム・ショックでAI・半導体株相場が急失速
今週の米株式市場は下落相場を警戒したい。特にハイテク株比率の高いナスダック100は調整売りが加速する可能性がある。
4月以降、米株高をけん引してきたAI・半導体相場が先週後半に急失速した。トリガーとなったのが、ブロードコム(AVGO)の2026年2〜4月期決算だった。同社が示した5~7月期のAI半導体売上高見通しが160億ドルと市場予想の172億ドルを下回り、AI成長の勢いに対する警戒感が強まった。決算発表後の2日間で同社の株価は19.5%急落した。
ブロードコム急落の影響は、他の主力半導体株のみならず大型ハイテク株にも波及した。ハイテク株比率の高いナスダック総合指数と100指数はいずれも週次4%を超す急落となった。トランプ関税のリスクが意識された4月上旬以来の大幅下落は、AI・半導体相場の急失速を市場参加者に印象付けた。
ナスダック指数 週次騰落率:2025年以降
ブルームバーグのデータで作成
5月CPIとPPI警戒、ナスダック100は下落拡大も
米利上げ観測もAI・半導体相場の重石となった。米労働省が5日発表した5月雇用統計で、非農業部門雇用者数が前月比17万2000人増とブルームバーグ予想の8万8000人増を大幅に上回った。失業率は4.3%で前月から横ばいだった。
労働市場の底堅さが示されたことで、米債市場では10年国債利回りが4.55%台へ上昇。翌日物金利スワップ(OIS)市場では年内に米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げに踏み切ることを完全に織り込む状況にある(6月5日時点)。
米10年債利回り 5分足チャート:5日 米雇用統計後の動き
ブルームバーグのデータで作成 / 赤棒グラフ・ドット:5月予想
今週は、米国の物価動向を確認する重要な経済指標の発表が相次ぐ。
まずは、10日の5月消費者物価指数(CPI)が焦点だ。ブルームバーグがまとめた市場予想では、前年比で+4.2%と、前月の+3.8%から加速が見込まれている。強い雇用統計に続きCPIが市場予想を上回れば、市場参加者のインフレ懸念を強めるだろう。米債市場ではさらなる長期金利の上昇が警戒される。インフレ懸念による長期金利の上昇は、過熱したAI・半導体相場の調整売りを促す要因になり得る。この点は翌11日の生産者物価指数(PPI)にも言える。
CPIとPPIで同時にインフレ加速が示される場合は、AI・半導体株相場の調整売り加速→ナスダック100の下落拡大を警戒したい。
米消費者物価指数(CPI)の動向:過去1年間
ブルームバーグのデータで作成 / 赤棒グラフ・ドット:5月予想
米生産者物価指数(PPI)の動向:過去1年間
ブルームバーグのデータで作成 / 赤棒グラフ・ドット:5月予想
12日にスペースXが新規上場、「宇宙企業」という誤解、真の姿は?
期待ベースではあるが、ナスダック100を下支えする要因として注目したいのが、12日のスペースX上場だ。同社は「宇宙ロケット会社」というイメージが強い。しかし実際のビジネス構造を見ると、その印象は大きく変わる。同社の事業は大きく3つのセグメントに分かれている。
【スペースXの事業セグメント】
・Connectivity(通信事業):「Starlink」を中心とする通信事業。100カ国以上でサービスを展開し、個人向けに加え企業・政府向けも急拡大している。グループ唯一の収益源として、他の事業への投資を支える稼ぎ頭
・Space(宇宙事業):ロケット「ファルコン9」を中心とした打ち上げサービスを展開。NASAや米国防総省との大型契約を抱える。次世代大型ロケット「スターシップ」の開発に年間約30億ドルを投じており、宇宙輸送コストの大幅削減を目指した先行投資フェーズにある。
・AI(AI事業):X(旧ツイッター)とAI企業「xAI」を傘下に収める。AIアシスタント「Grok」の提供と、大規模なAI計算インフラの構築が主軸。現状は赤字だが、将来のAI分野での競争力確保に向けた先行投資分野と位置づけられている。
スペースX 事業セグメント別概要:2025年12月期
出所:Form S-1(フォームS-1)
2025年12月期の全体の売上高は約187億ドルにのぼるが、そのほとんどがConnectivity(通信事業)であり、営業黒字(約44億ドル)はこの事業分野だけだ。一方、Space(宇宙事業)は約7億ドルの赤字だ。AI事業に至っては、約64億ドルの赤字となっている。
ただし、現在の状況は経営の失敗ではなく、将来に向けた意図的な先行投資と捉えることができる。その証拠に、AI事業への設備投資は約127億ドルとグループ全体の6割超を占める。米テネシー州ではAIの開発・学習に使う大型計算施設「Colossus」の建設を進めており、投資の本気度が伝わってくる。
Form S-1の内容から考察するに、スペースXという企業は「Connectivityで稼ぎ、そのお金をAIに全力で投じる企業」と筆者は捉えている。今回の上場でこうした実態が広く知られることで、AI・半導体関連株への期待を高める材料となりうる。
ナスダック100は今年5月、大型IPO銘柄を上場後15取引日以内に組み入れられるよう採用ルールを緩和した。スペースXの上場後、数週間以内の組み入れが見込まれる。まずは、スペースX上場に対する反応を確認したい。
米国テク株100のチャート分析、週間想定レンジ27000~30700
今週の米株式市場でインフレ懸念が強まれば、ナスダック100の下落拡大を警戒したい。同指数が原資産の株価指数CFD「米国テク株100」は、以下にまとめたチャート水準の攻防に注目したい。
最初の焦点は、サポート転換が確認された28500レベルの攻防だ。このラインを下方ブレイクする場合は、50日線→フィボナッチ・リトレースメント38.2%水準27711レベルが視野に入る。
4月以降の株高を考えるならば、調整売りが続く可能性がある。サポート転換が確認され、かつ節目水準でもある27000を今週の下限と想定し、このラインをも下方ブレイクする場合は、半値戻しの水準26770レベルもしくは90日線が推移している26500レベルを瞬間的にトライする可能性も想定しておきたい。
注目水準:サポート
・28500:サポート転換
・28240:50日線(28244レベル)
・27711:38.2%戻し
・27000:下限予想
・26770:半値戻し
・26500:90日線(26531レベル)
一方、市場予想を下回る米インフレ指標やスペースX上場をポジティブに捉えた期待先行の買いが米国テク株100を下支えする場合、最初の焦点は29640レベルで推移する25日線の突破となろう。この移動平均線の上方ブレイクは、心理的節目の水準30000トライのサインと捉えたい。
米国テク株100が30000台を回復すれば、ブロードコム・ショックは短期の調整売りで終わるサインになり得る。このケースでは、6月3日高値水準30756の攻防が視野に入る。先週の3日続落の高値水準30700レベルを今週の上限と想定し、このレジスタンスを上方ブレイクすれば、次の節目水準31000トライの可能性が高まろう。
注目水準:レジスタンス
・31000:節目水準
・30700:上限予想、6月3日高値水準(30756)
・30000:心理的節目の水準
・29640:25日線(29638レベル)
米国テク株100日足チャート:3月以降
TradingView提供のチャート
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