ドル円、有事の円高の可能性も 157円台 イラン交戦で米国売り?
ドル円相場で有事のドル買いが鳴りを潜めている。米国発の火種が世界経済を混乱させれば、2025年上半期同様の米国売りも起こりえる。
ドル円相場が落ち着いた値動きをみせている。ドル円相場は日本時間6日午前の取引で1ドル=157円台で推移。アメリカとイスラエルによるイラン攻撃前日にあたる2月27日との比較では1.5円程度の円安水準だ。イラン攻撃後、最初の取引となった2日に「有事のドル買い」が起きた以外は、ほぼ横ばいでの値動きといえる。ドル買いが長続きしなかった背景には、米国とイランとの交戦が長期化して世界経済が大きく揺れる筋書きへの懸念がある。この場合は、ドナルド・トランプ大統領の高関税政策への懸念が高まった2025年上半期同様、有事の「円高」が起きる展開も考えられそうだ。一方、原油価格上昇を伴った中東での戦火拡大は、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ見通しを大きく後退させており、円安要因とみることもできる。ただ、米国の長期金利(10年物国債利回り)上昇は米国売りの兆しともいえ、ドル円相場での円高に火をつける可能性もある。
ドル円相場は157円 有事のドル買いは長続きせず
ドル円相場(USD/JPY)は日本時間6日午前12時01分段階で1ドル=157.47円で取引されている。ブルームバーグによると、米国とイランの交戦開始前日にあたる27日のニューヨーク市場の終値は156.05円で、6日の水準は1.42円の円安だ。交戦開始後初の取引となった2日に終値で前週末比1.34円の円安が進んだ後は、小さな値動きが続いている。
イラン交戦は長期化の可能性 1年前は米国不信で17円の円高
中東での戦火拡大でもFX市場でドルの人気が高まらない理由には米国の政治や経済に対する不信感がありそうだ。トランプ氏は2日のホワイトハウスでの演説で、イランとの交戦が当初想定していた4-5週間よりも「はるかに長くなる」可能性を示唆。ピート・ヘグセス国防長官は4日の記者会見で、米国とイスラエルが「今後数日のうちに」イランでの制空権を握るとの見通しを示したが、イランから周辺国への攻撃は5日以降も数多く報じられている。石油の重要通商ルートであるホルムズ海峡の封鎖状態が長引けば、世界経済が大混乱に陥る恐れが高まる。
こうした事態はトランプ氏の高関税政策が世界経済への不安を高めた2025年上半期の状況と重なる。当時のトランプ氏は高関税政策と同時に、FRBのジェローム・パウエル議長が利下げに消極的だと批判し、解任を示唆。金融市場では、ドルと米国株と米国債が同時に値下がりする「米国売り」が起きている。ブルームバーグによると、ドル円相場は4月22日には1ドル=139.89円をつけ、2024年末比で17.31円もの円高が進んだ。当時のFX市場では、円だけでなく、ユーロやポンド、豪ドルもドルに対して値を上げている。
原油価格上昇でFRBの利下げ見通しは大きく後退 円安要因か
一方、中東の戦火が原油価格の上昇を伴っている点は2025年上半期とは様相が異なる。ブルームバーグによると、原油先物市場の指標価格であるWTI(翌月渡し、WTI原油)は日本時間6日午前5時台に1バレル=82.16ドルをつけ、27日終値との比較で22.59%高となった。3日につけた77.98ドルを超え、2024年7月19日(82.88ドル)以来の高値となっている。原油価格はガソリン価格の低下を狙うトランプ氏の大統領就任後、下落傾向が続いてきたが、足元ではイランとの交戦長期化の恐れが強い値上がり圧力として働いている。
こうした中、金融市場では原油高が物価上昇を加速させるとの見方から、FRBの利下げ見通しは大きく後退している。ブルームバーグによると、5日の金融市場で見込まれている12月FOMC後の政策金利の水準は3.251%で、27日比で0.219%ポイント上昇。2月中旬には53%まで高まった年内3回利下げの確率はゼロとなっている。こうした米国での金利の先高観が材料視された場合には、ドル円相場で円安が進む可能性もある。
米国経済への懸念拡大なら米国売りも 2月雇用統計も焦点に
ただ、外部要因による米国の利下げ見通しの後退は米国経済にとっての不安材料だ。ブルームバーグによると、米国の長期金利(10年物国債利回り)は5日終値で4.137%となり、27日比で0.196%ポイントの上昇。すでに米国債が売られ始めているとみられることもできそうだ。緊張感が高まっている米国の株式市場では5日、S&P500種株価指数(SPX)が前日比0.56%安の反落。6日発表の2月雇用統計を機に大きく下落することになれば、ドル円相場でも米国売りが広がり、円高が急進する展開も想定されそうだ。
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