ドル円 今週の見通し(6/30~7/4):142.00-146.15予想、米雇用統計でドル安加速も
中東不安が後退し外為市場は米ドル安の圧力が高まっている。今週は米経済指標、特に6月の雇用統計に注目したい。予想外に下振れすればドル安の加速を警戒。ドル円の週間予想レンジは142.00-146.15。注目のチャート水準をIG証券アナリストが分かりやすく解説。

記事の要点
・中東不安の後退で外為市場では米ドル安の圧力が高まっている
・今週は米経済指標にらみの1週間、6月の米雇用統計を警戒
・米ドル安が進行しても円安が相殺する展開が予想される
・ドル円の週間予想レンジは142.00-146.15
中東不安の後退で米ドル安再燃、今週のドル円は下落警戒
今週のドル円(USD/JPY)は142.00-146.15円レンジを予想する。
先週の外為市場は中東不安の後退で、「有事の米ドル買い」から一転して米ドル安へ転じた。先週のアメリカ株式市場ではS&P500とナスダック指数が最高値を更新し、投資家のリスク選好姿勢が強まっている。これらの状況を考えるならば、今週も米ドル安優勢の展開が予想される。米ドル安はドル円の上値を抑制するだろう。レンジの下限142.00レベルの方を目指す可能性がある。
米ドル 先週の変動率 / 対G10通貨とドル指数

ブルームバーグの為替データで筆者が作成
今週の米ドルは経済指標にらみ、米雇用統計の下振れはドル安要因に
今週の米ドル相場は、経済指標を注視する展開が予想される。6月のISM製造業と非製造業景気指数、そして雇用関連の経済指標が材料視されると思われる。
注目すべきは、7月3日の6月米雇用統計である。ブルームバーグがまとめた市場予想(6月27日時点)では非農業部門雇用者数変化が11.3万人増、失業率が4.3%と5月から労働市場の軟化が見込まれている。また、平均時給は前月比と前年同月比でともに5月から低下する見通しにあり、賃金インフレも抑制される可能性がある。
米雇用統計で労働市場の軟化が示される場合、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ期待が高まろう。米債市場では金利に低下の圧力が高まることが予想される。米金利の低下は米ドル安の要因となるだろう。
米雇用統計 各項目の動向:直近1年間

出所:ブルームバーグ / 赤の棒グラフとドット:6月の予想、6月27日時点
米ドル安を円安が相殺、ドル円の下落幅は限定的か
今週の経済指標が米ドル安の要因となれば、ドル円(USD/JPY)は下値を試す展開を想定したい。だが、現在の外為市場では円安の圧力がじわりと高まっている。5月以降、外為市場では円安優勢の状況にある(下チャート、左の棒グラフを参照)。先週は中東不安の後退と原油安が材料視され米ドル、ノルウェークローネ、カナダドルで日本円が上昇した。しかし、他の主要通貨では円安優勢の状況が続いた。
円相場の変動率

ブルームバーグの為替データで筆者が作成
日銀の植田和男総裁は20日、「経済・物価の見通しが実現していくとすれば、経済・物価情勢の改善に応じて引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになる」と述べた。しかし、見通しの実現については、「各国の通商政策等の今後の展開やその影響を巡る不確実性がきわめて高い状況にあることを踏まえ、内外の経済・物価情勢や金融市場の動向等を丁寧に確認し、予断を持たずに判断していくことが重要」と述べ、今後の利上げについては慎重に判断していく姿勢を維持した。
変動の大きい生鮮食品を除く消費者物価コア指数(CPI)は5月に前年同月比で3.7%へ上昇し、3カ月連続で伸び率が拡大した。それでも短期金融市場では年内の追加利上げの期待が後退している。この状況が、円安の圧力がじわりと高まっている一因と考えられる。
ドル円にとって米ドル安の影響は大きい。しかし、米ドル安が進行しても円安がその影響をある程度相殺することで、ドル円の下落幅は限定的となることが予想される。
ドル円の週間見通しとテクニカル分析
予想レンジの下限:142.00
冒頭で述べたとおり、今週のドル円(USD/JPY)の予想レンジ下限を142.00レベルと予想する。この水準は5月の下旬以降、相場を下支えしている重要ラインである。
通貨オプション市場のリスクリバーサルは、1週間と1ヶ月のそれらがドルプットへ傾いている。しかし大きな変動は見られない。予想変動率は1週間と1ヶ月がともに10%前後にあり、こちらも大きな変動は見られない。米ドル安優勢を意識しながらも、円安がその影響を相殺する可能性を意識した動きと考えられる。
ドル円のリスクリバーサルと予想変動率:日足 年初来

ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 6月27日まで
ドル円は現在、50日線を意識する状況にある。この移動平均線を完全に下方ブレイクする場合、次の焦点はフィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準にあたる144.00の攻防を想定したい。先週はこのテクニカルラインを一時下方ブレイクし、安値143.75レベルまで下落する局面があった。しかし、ローソク足の実体ベースでは144円を維持した。
今週、ドル円が下値を試す局面で最も注目したいのが、4月22日の安値を基点とした短期サポートラインである。このラインは今週、143.65→143.90レベルで推移する。
ドル円が短期サポートラインを下方ブレイクする場合は、6月13日の安値142.79レベルを視野に下落幅の拡大を想定したい。このサポート水準をも下方ブレイクすれば、予想レンジ下限の142.00レベルを目指す展開を想定したい。
サポートライン
・144.37:50日線(日足)
・144.00:フィボナッチ・リトレースメント76.4%(4時間足)
・142.79:6月13日の安値(日足)
・142.00:予想レンジの下限(日足)
予想レンジの上限:146.15
6月の雇用統計を含め今週の経済指標で米景気の底堅さが示される場合は、「米金利の反発→米ドル買い」を想定したい。しかし現在は、米FRBの利下げ期待が高まっている。また、米国と各国の通商交渉で進展が見られないことも考えるならば、米ドル買いは短期で終息すると予想する。
週間の予想レンジ上限は146.15レベルを想定。このテクニカルラインは5月29日以降、レジスタンスラインとして意識されている(日足チャート、青矢印を参照)。
ドル円(USD/JPY)が146.15をトライするサインとして、3つのレジスタンスラインの攻防が焦点となるだろう。まずは日足の一目雲の上限、そして3月28日高値と4月22日の安値の半値戻しの水準が重なる145.55レベルの突破を確認したい。次に注目したいのが89日線である。このテクニカルラインは今日現在、145.75レベルで推移している。先週25日に相場の上昇を止めた半値戻しの水準145.89レベルの突破は(4時間足チャート、赤矢印を参照)、ドル円が146円台へ再上昇し、予想レンジの上限146.15レベルをトライするサインと捉えたい。
7月3日の米国市場は短縮取引となり、4日は独立記念日の祝日で休場となる。今週のドル円は、7月3日のロンドンタイム終了までの動向を注視したい。
レジスタンスライン
・146.15:フィボナッチ・リトレースメント61.8%、予想レンジの上限(日足)
・145.89:半値戻し(4時間足)
・145.75:89日線(日足)
・145.55:雲の上限、半値戻し(日足)
ドル円のチャート
日足:今年3月以降

出所:TradingView
4時間足:6月11日以降

出所:TradingView
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