金価格見通し(9/30):3800ドル台の攻防、高まる米政府機関閉鎖の可能性、3900ドルが視野に
米利下げ観測でスポット金価格が史上初めて3800ドルを突破。米政府機関の閉鎖となればさらなる上昇も。土壇場で回避ならば雇用統計が焦点に。利下げ見通し修正なら急反落を警戒。目先の予想レンジは3790~3955ドル。

要点
スポット金価格は29日、史上初めて3800ドル台に到達。高値3831ドルまで上昇した(IGレート)。押し上げ要因は米連続利下げ観測だが、つなぎ予算案が成立せず政府機関が閉鎖となれば、さらに上値を目指す展開が予想される。一方、土壇場で閉鎖が回避されれば10月3日の9月雇用統計が最大の焦点となろう。予想外に強い内容となれば、利下げ見通しの修正による急反落を警戒したい。目先の予想レンジは3790~3955ドルを想定。
金価格が史上初の3800ドル、さらに上値を目指すムード
金相場の上昇が止まらない。スポット金価格(以下、金価格)は29日の市場で初めて3800ドル台へ到達。高値3831ドル(IGレート)まで上昇する局面が見られた。
日足チャートでトレンドを確認すると、大陽線で節目の3800ドルを突破。30日の市場でも強気相場を維持している。一目転換線と10日線がサポートラインとなり、MACDが上昇基調にある状況も考えるならば、今週の金価格はさらに上値を目指す展開が予想される。
金価格の日足チャート:2025年8月以降

TradingView提供のチャート
米利下げ観測が下支え、高まる政府機関閉鎖の可能性
金価格の押し上げ要因となっているのが、米利下げ期待である。9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で米連邦準備制度理事会(FRB)は0.25%の利下げを決定。OIS市場では10月と12月のFOMCでの連続利下げの可能性を意識する状況にある。上の日足チャートを確認すると、FOMC以降、金価格の上昇幅が拡大している。米連続利下げを意識した動きと捉えることができる。
米利下げ予想確率の推移:2025年6月以降

ブルームバーグのデータを基に作成 / OIS市場の予想確率(9月30日13時30分時点)
米連邦政府機関の一部閉鎖のリスクも金価格の上昇要因として注目したい。
トランプ米大統領と連邦議会の与野党指導部が29日、ホワイトハウスでつなぎ予算案について協議したが決裂した。バンス副大統領は記者団に対し「われわれは政府閉鎖に向かっている」と述べた。新年度初日の10月1日から一部政府機関の閉鎖の可能性が高まっている。
米労働省は29日、政府機関が閉鎖された場合、10月3日に予定されている雇用統計などの経済指標の発表を停止すると明らかにした。また、つなぎ予算案が成立次第、通常業務を再開すること、ニュースリリースの公表日程に変更があれば通知するとした。
29日の外為市場では、政府機関閉鎖のリスクが米ドル安の要因となった。第1次トランプ政権の時は35日間政府機関が閉鎖された。この時も外為市場では主要通貨でドル安優勢の展開となった。政府機関閉鎖で米ドル安が進行すれば、金価格をさらに押し上げる要因となろう。
閉鎖回避なら9月雇用統計が焦点に、急反落を警戒
現時点では米政府機関閉鎖の可能性が高いが、土壇場で回避される場合は、米雇用統計にらみの展開が予想される。
10月3日に9月の雇用統計が発表される。ブルームバーグがまとめた市場予想によれば、非農業部門雇用者数(前月比)は5.1万人と低い増加にとどまる見込みである。一方、失業率は前月から横ばいの4.3%が予想されている。労働市場の軟化を示唆する内容となれば、米連続利下げの観測が金価格の押し上げ要因となろう。
問題は、予想外に強い内容となる場合である。前述のとおり、米FRBは雇用の下振れリスクを警戒し0.25%の利下げを決定した。米連続利下げの観測もまた雇用の下振れリスクが土台となっている。強い雇用統計はこの土台を揺るがす要因になり得る。
上で取り上げた利下げ予想確率の推移のチャートをあらためて確認すると、9月25日に12月の予想確率が70%を割り込む場面があった。この日発表された第2四半期GDP確報値と週間の新規失業保険申請件数の強い内容が利下げ観測の修正を迫ったと見られる。現在も70%台まで予想確率が低下している(レポート掲載時点)。強い雇用統計は、市場に利下げ見通しのさらなる修正を迫る要因となろう。この場合、最高値を更新し続けている金価格の急反落を警戒したい。
米雇用統計 各項目の動向:過去1年間

ブルームバーグのデータを基に作成 / 赤の棒グラフ・ドット:9月の市場予想
金価格のテクニカル分析
予想レンジの上限:3900ドル
ゴールドETFの動向も金価格の強気相場を示唆している。SPDR Gold Sharesの日次出来高の推移を確認するとばらつきは見られるが、9月以降は増加の傾向にある。25日移動平均は9月中旬以降、徐々に上向きの基調にある。
SPDR Gold Sharesの日足チャート:2025年8月以降

ブルームバーグのデータを基に作成
30日の市場で金価格は昨日の高値3831ドルを突破した。その後も強気相場を維持し、3717ドルと3791ドルのV計算値にあたる3865ドルをトライする局面にある。この水準をも完全に突破すれば、フィボナッチ・エクステンション100%の水準3881ドルの攻防を意識したい。
3881ドルの突破は、次の節目のライン3900ドルをトライするサインとなろう。このラインをも突破する場合は、3627ドルと3791ドルのE計算値にあたる3955ドルを視野に上昇拡大の可能性が出てくる。この水準を今週(10/3まで)の上限と想定したい。
レジスタンスライン
・3955ドル:予想レンジの上限
・3900ドル:節目のライン
・3881ドル:フィボナッチ・エクステンション100%
・3865ドル:レジスタンスライン
予想レンジの下限:3790ドル
一方、金価格の反落局面では、3800ドルの維持に注目したい。筆者はレジスタンスラインとして意識された経緯のある3791ドルのサポート転換に注目している。すぐ下の水準3790ドルを今週3日までの下限と想定したい。3800ドル前後で相場の反発が確認される場合は、強気相場継続の可能性を市場参加者に意識させるだろう。
サポートライン
・3800ドル:サポート転換に注目
・3790ドル:予想レンジの下限
金価格の4時間足チャート:9月17日以降

TradingView提供のチャート
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