金価格見通し(1/22):トランプ関税に右往左往も4900ドル視野、国内金利と米市場の動きを警戒
IG証券のアナリストによる金価格の見通し。トランプ関税に右往左往するも4900ドルが視野に。国内金利の動きを注視。米国市場のリスク要因となる可能性も。
要点
- トランプ関税に金価格が右往左往している。21日の取引で初の4800ドル突破となったが、トランプ米大統領が「グリーンランド関税」の撤回を表明。金価格は一転して4750ドル台へ下落
- 日本国債の動きを注視したい。国内金利の上昇が米市場に波及すれば、安全資産としての金需要を高める要因になり得る
- 金価格は次の節目水準4900ドルを視野に強気相場にある。この水準も突破すれば、心理的節目の5000ドルを意識することになろう
トランプ関税に右往左往するも4900ドル視野に強気相場維持
今週の金価格は、トランプ関税に右往左往している。21日の取引で金価格は初めて4800ドルを突破した。急騰の主因は、グリーンランドの領有権をめぐる米欧の対立激化にあった。トランプ米大統領は17日、グリーンランドの領有に反対する欧州8か国に対し「2月1日から10%の関税を課す」と表明。6月には25%への引き上げも示唆している。
しかしトランプ氏は21日、「グリーンランド関税」の措置を撤回すると表明した。関税懸念が後退し、金価格は高値4888ドルから4755ドルへ急落した。
金価格の15足チャート:1月19日~21日
TradingView提供のチャート
ベッセント米財務長官の危機感、国内金利と米市場の反応を注視
グリーンランド問題を含め、国際情勢の不透明感を背景に金価格は年初から強気相場にある。このトレンドが加速する要因として、今後は国内の債券市場と米国市場の反応も注視する必要がある。
20日に新発10年物国債の利回りが一時2.38%に上昇(債券価格は下落)し、1999年2月以来およそ27年ぶりの高水準に達した。超長期ゾーンの利回りも上昇している。30年物国債利回りは3.8%付近、40年物国債利回りは4.21%台へ上昇し(債券価格は下落し)、いずれも過去最高の水準に達した。
高市首相が2月8日の解散総選挙を発表し、2年間限定ながらも食品消費税ゼロ%を打ち出した。野党も消費減税を掲げており、財政悪化が一段と進むとの見方が金利の上昇を促している。
ダボス会議(世界経済フォーラム)で、ベッセント米財務長官は日本国債の急落(金利の上昇)について言及し、日本側が市場を落ち着かせるための行動をとることに期待を示した。ベッセント氏の発言は、国内金利の上昇(日本国債の売り)が、米債市場に波及するリスクを米国側が強く認識していることを示唆している。
米財務省の国別保有額データによれば、2025年11月時点で日本は約1.2兆ドル保有し最大の保有国だ。次いで英国(8885億ドル)、中国(6826億ドル)と続く。国内金利のさらなる上昇は、日本勢の本国還流(リパトリエーション)を促す要因になり得る。財政懸念がくすぶる中でこの動きが確認される場合は、米金利の上昇圧力になり得る。米金利の上昇は米国株(リスク資産)の下落要因になり得る。
米国債 国別の保有額:2017年(第1次トランプ米政権)以降
ブルームバーグと米財務省のデータで作成
グリーンランド問題の懸念はひとまず後退している。しかし、中国とロシアの北極圏進出という根本の問題が存在する以上、再燃リスクはくすぶり続ける。
トランプ関税は「米国不信」を招く要因だ。今回の「グリーンランド関税」を受け、デンマークの職域年金基金アカデミカーペンションのアナス・シェルデ最高投資責任者(CIO)は、月内にも米国債投資からの撤退を表明した。この問題が再燃すれば、他の欧州機関投資家も追随する可能性がある。外為市場で米ドル安が続いていることも、米国不信の表れといえる。
金は「どの国にも属さない安全資産」として、投資妙味がさらに高まる状況にある。
米ドル 今週の動向 対G10通貨:19~22日
金価格のテクニカル分析
次の焦点は4900ドル
日足チャートで金価格のトレンドを確認すると、5日線(4700ドル付近)と10日線(4645ドル)、MACDはいずれも上向きにあり上昇トレンドの強さを示唆している。
今日以降も強気地合いを維持する場合、目先の焦点は次の節目水準4900ドルの突破となろう。この水準は、4時間足チャートのフィボナッチ・エクステンション100%水準4892.72ドルと重なる。昨日の高値水準4888ドルの突破は、4900ドルをトライするサインと考えたい。金価格が4900ドルを完全にブレイクアウトすれば、心理的節目の5000ドルが次の上値ターゲットに浮上する。4900ドルがサポートラインとして意識される場合は、その可能性がより高まろう。
20日のIGコモディティレポートで指摘した通り、現在の金相場は買い要因に囲まれており、上昇幅が拡大しやすい状況にある。節目の5000ドルをも難なく突破すれば、フィボナッチ・エクステンション161.8%水準5112ドルのトライが焦点に浮上しよう。
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チャートポイント:レジスタンス
・5112ドル:フィボナッチ・エクステンション161.8%
・5000ドル:心理的節目のレジスタンスライン
・4900ドル:レジスタンスライン、エクステンション100%(4892.ドル)
・4888ドル:1月21日の高値水準
4700ドルの維持が焦点に
日足と4時間足のRSIはいずれも金価格の買われ過ぎを示唆している。買い要因に囲まれているとはいえ、年初来ですでに500ドル高(12%高)の状況にあることを考えるならば、急反落を常に警戒しておきたい。
金価格の年間変動率:2000年以降
ブルームバーグの価格データを基に作成
下値トライの局面では4700ドルの維持が焦点となろう。現在、このラインには5日線が推移している。4700ドル前後は、テクニカル面でサポートラインとして意識されやすい状況にある。
「TACOトレード※」を受け、金価格が4700ドルを一気に下方ブレイクする売りに直面する場合は、サポートラインへの転換が確認された4550ドルを視野に下落拡大を警戒したい。4645ドル付近で推移している10日線とサポートラインに転換する可能性がある4630ドル(4時間足)の下方ブレイクは、4550ドルをトライするサインと考えたい。
チャートポイント:サポート
・4755ドル:1月21日下落を止めた水準
・4700ドル:サポートライン、下に5日線
・4645ドル:10日線
・4630ドル:サポート転換の可能性あり
・4550ドル:サポートライン
※TACO:「Trump Always Chickens Out(トランプはいつも腰砕け)」の略。トランプ氏の関税威嚇がいずれ撤回されることを見越した投資行動を指す
金価格の日足チャート:昨年11月以降
TradingView提供のチャート
金価格の4時間足チャート:昨年12月下旬以降
TradingView提供のチャート
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