金価格続伸、米ドル安再燃なら3500ドルが視野に 米中関税交渉とFOMCにらみ
スポット金価格は6日、3400ドル台へ急反発した。関税交渉の不透明感を受け、外為市場では米ドル安が再燃しつつある。FOMCでの調整売りを警戒しながらも、金価格は3500ドルが再び視野に入る。

概要
今週に入りNY金が続伸している。スポットの金価格は6日、高値3435ドルまで上昇する局面が見られた。米ドル安の再燃が金価格の押し上げ要因となっている。一方、米債市場では10年債利回りが4.3%台で高止まりしている。関税交渉の新たな報道次第で金価格は3500ドルのトライが再び視野に入ろう。
NY金続伸、スポット価格3400ドル台へ、今週に入り一時6%高
国際商品市況でNY金相場が再び騰勢ムードにある。スポット金価格は今週に入り2日続伸し、4月22日以来となる3400ドル台へ急反発した。高値3435ドルを付け、前週末比で一時6%高となる局面が見られた。日足のMACDはゴールデンクロスへ転じるムードにある。ゴールドに地合いの強さが戻りつつある。
スポット金価格:日足 2月下旬以降

出所:IGチャート
米ドル安再燃のムード、米金利は高止まり、関税交渉を注視
ゴールド買いが再燃している要因は米ドル安にある。昨日の外為市場で米ドルは、全ての対G10通貨で米ドルが下落した。ドル指数(DXY)は節目の100ポイントを再び下抜け、ドル安再燃のムードが高まっている。一方、米債市場では10年債利回り(長期金利)が4.3%台で高止まりしている。
これら市場の動きは、トランプ米政権と各国との関税交渉の不透明感を各市場の参加者が強く意識していることを示唆している。
米ドルの動向:5月6日

ブルームバーグの為替データで筆者が作成
市場参加者が最も注視している米中交渉では、本日早朝に新たな動きが見られた。中国外務省は、同国の何立峰副首相が9~12日の間にスイスでベッセント米財務長官と会談する予定と発表した。関税交渉を巡る協議を行うと見られる。ヘッドラインを受け、外為市場では米ドルが買い戻され、ゴールドは売られた。これらの動きは、米中交渉の重要性を示唆している。だが、米中交渉は難航が予想される。
米中交渉以外でも不透明感が漂う状況にある。欧州連合(EU)は、通商交渉の結果次第で約1000億ユーロに相当する米国製品に追加関税を課す計画があるという。7日にも新たな報復案の詳細が示されるとブルームバーグが報じている。また、トランプ米大統領は6日、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の再交渉を検討する考えを示したが延長を目指しているわけではないこと、そもそも必要なのか疑問だと述べた。
関税交渉の不透明感が完全に晴れない限り、目先は米ドル安の再燃とゴールド買いの進行を意識する局面にある。
FOMCで利下げ方針見極め、パウエル会見での調整売りを警戒
7日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、利下げの見送りが決定されるだろう。ゆえに焦点は今後の政策方針となろう。パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長の会見で、そのヒントを探ることになるだろう。
現状、短期金融市場では6月利下げの可能性が後退し、7月の利下げを意識する状況にある。現時点では60%の確率で利下げを織り込む状況にある。パウエルFRB議長の会見で利下げ時期がさらに後ずれすれば、ゴールドの調整売りを警戒したい。米中交渉の進展を伝える報道も重なれば、調整売りの進行を警戒したい。
だが、現在の米ドルと米債市場を動かしているのは、関税交渉に対する市場参加者の思惑である。上で述べた不透明感が意識される限り、「米国売り」再燃の可能性もくすぶり続けるだろう。ゴールドの調整売りは押し目買いの好機と捉えたい。
米政策金利の予想推移

金価格の見通しと注目のテクニカルライン
3500ドルの再トライが視野に
5日のIGコモディティレポートで、レジスタンスラインとして意識されている3360ドルの攻防が上昇局面での焦点になると述べた。昨日、このラインを大陽線で突破し3400ドル台へ急反発した。日足の一目均衡表が三役好転の状況にあることも考えるならば、4月22日に付けた3500ドルのトライが焦点に急浮上してきた。
今日以降、金価格が3500ドルをトライするサインとして、昨日の高値3435ドルとフィボナッチ・エクステンション50%の水準3467ドルの攻防に注目したい。後者のテクニカルラインの突破は、3500ドルをトライするサインと考えたい。
3500ドルがレジスタンスからサポートのラインへ転換する場合は、さらなる上値トライのシグナルとなろう。このケースでは、フィボナッチ・エクステンション61.8%の水準3530ドルを視野に上昇幅の拡大を想定したい。
レジスタンスライン
・3530:フィボナッチ・エクステンション61.8%(4時間足)
・3500:心理的節目、4月22日の高値(4時間足)
・3467:フィボナッチ・エクステンション50%(4時間足)
・3435:5月6日の高値
3360ドル、サポート転換なるか?
日足のRSIは買われ過ぎの水準付近でデッドクロスへ転じているが。4時間足のRSIも同じ状況にある。短期的な買いの過熱感が意識される状況で5月のFOMCを迎える。
パウエルFRB議長が定例会見で、労働市場の底堅さとインフレ再燃の可能性に言及し、追加の利下げに慎重な姿勢を示す場合は金価格の調整売りを促す可能性がある。米中交渉の進展期待を伝える報道も重なれば、調整売りの進行を想定したい。しかし今週の強気地合いを考えるならば、金価格の下落は押し目買いの好機と考えたい。
目先は、以下のサポートラインで反転する可能性を意識したい。特に5日のIGコモディティレポートで取り上げた3360ドルは、レジスタンスからサポートのラインへ転換する可能性がある。レポート掲載時点では、今朝の米中会談の報道による調整売りを止めている。
調整売りの進行で金価格が3360ドルを下方ブレイクする場合は、昨日の安値3323ドルと日足の一目転換線が推移している3316ドルの維持が焦点となろう。転換線をも下方ブレイクする場合は、3360ドルと同じくサポート転換の可能性がある3280ドルまでの反落を想定したい。今週8日に短期サポートラインが3280ドルと交錯する(4時間足チャートを参照)。日足のフィボナッチ・リトレースメント38.2%の水準3292ドルの下方ブレイクは、3280ドルをトライするサインと考えたい。
サポートライン
・3360:サポート転換の可能性あり(4時間足)
・3323:5月6日の安値(4時間足)
・3316:一目転換線(日足、5/7時点)
・3292:フィボナッチ・リトレースメント38.2%(日足)
・3280:サポート転換の可能性あり(4時間足)
金価格のチャート
日足:今年の2月以降

出所:TradingView
4時間足:4月以降

出所:TradingView
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