米国株見通し(9/1週):S&P500予想6350~6550、ISM・雇用統計に注目、下落警戒
9月第1週のS&P500は6350~6550レンジを予想。焦点は経済指標。ISM指数と雇用統計が市場予想を下回れば下落警戒。IG証券のアナリストが米国500の重要チャート水準を徹底解説。

要点
・9月第1週は経済指標にらみ、ISM指数と雇用統計に注目
・弱い経済指標が続けば、S&P500の下落を警戒したい
・米国500の週間予想レンジは6350~6550
※米国500:S&P500が原資産の株価指数CFD
米株高失速、ナスダック指数は2週続落
米株高の勢いが失速している。多くの機関投資家が運用指標にするS&P500種株価指数は先週、前週末比0.1%安と4週ぶりの下落で終えた。ハイテク株比率の高いナスダックは総合指数と100指数がともに2週続落となった。
米国株価指数の週間変動率:7月以降

ブルームバーグのデータで作成 / 8月25日週まで

ブルームバーグのデータで作成
市場の利下げ観測を左右する経済指標、ISM指数と雇用統計に注目
8月22日のジャクソンホール講演でパウエルFRB議長は、「リスクバランスの変化が政策スタンスの調整を正当化しうる」と述べ、9月利下げの道筋をつけた。これまでインフレ抑制重視の姿勢を維持してきたパウエルFRB議長が労働市場の先行きに懸念を示したことで、OIS市場では9月16日~17日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、米連邦準備制度理事会(FRB)が0.25%の利下げに踏み切ることを織り込んでいる。
注目は10月と12月の利下げの可能性である。現状、OIS市場での10月利下げ確率は50%前後で推移しており、今後の経済指標で市場の思惑が大きく揺れ動くだろう。12月の利下げ確率は80%台にある。しかし3か月以上も先の予想であり、こちらも今後の経済指標次第で確率が低下する可能性がある。
9月1日のレイバーデイが明けた後、市場参加者の利下げ観測に影響を与える重要な経済指標が順次発表される。筆者が注目しているのが、8月のISM製造業・非製造業景気指数と雇用統計である。
パウエルFRB議長が雇用の下振れリスクに言及してきた以上、ISM指数では総合だけでなく雇用にも注目したい。製造業の雇用は今年2月以降、景気判断の分かれ目である50を下回る状況が続いている。非製造業(サービス業)のそれは、2か月連続で50を下回る状況にある。
ISM製造業・非製造業景気指数の動向:過去1年間

ブルームバーグのデータで作成 / 赤ドット:8月予想、レポート掲載時点
5日に8月の米雇用統計が発表される。ブルームバーグがまとめた非農業部門雇用者数変化の市場予想は7.5万人と、7月の7.3万人からほぼ横ばいの見通し。失業率は4.3%へ上昇することが見込まれている。ISM指数と雇用統計が総じて市場予想を下回る場合は、10月と12月の利下げ観測を高める要因になり得る。
雇用統計 各項目の動向:過去1年間

ブルームバーグのデータで作成 / 赤ドット:8月予想、レポート掲載時点
割高懸念、9月下落のアノマリー、弱い経済指標は株安要因に
米利下げ期待は株式市場の下支え要因である。しかし、さえない経済指標が続く場合、現在は利下げ期待よりも景気不安の方が強く意識されやすい状況にあると思われる。
そう考える理由の一つが、割高懸念である。米国株式市場の時価総額の約80%をカバーするS&P500種株価指数は先週、連日で最高値を更新する局面が見られた。4月8日にS&P500はトランプ関税ショックを受け、終値ベースの安値4982.77をつけた。それ以降は上昇幅が拡大し、8月29日時点で4月8日の安値から29.65%も上昇している。株高の進行を受け予想PERが24倍台へ上昇する一方、株式益回り(PERの逆数)は米国10年債利回りを下回る状況にある。
上で述べた状況を総合的に考える場合、現在は弱い経済指標がS&P500(米国株)の割高懸念を意識させやすい状況にあると言える。
S&P500の予想PER、株式益回り、米国10年債利回り:日次 2023年以降

ブルームバーグのデータで作成 / 8月29日時点
もう一つ注目したいのが、「9月下落のアノマリー」である。1957年以降のデータで算出した月間の平均変動率をみると、S&P500は9月にパフォーマンスが低迷する傾向が見られる。
S&P500 月間の平均変動率:1957年以降

ブルームバーグのデータで作成
※1957年以降
※1月から8月まで:2025年の動きを反映
米国500の週間見通しとテクニカル分析
予想レンジの下限:6350
9月1日はレイバーデイで原資産の米株式市場は休場となるが、S&P500の株価指数CFD「米国500」は2日(火)午前5時まで取引ができる。しかし、大きく動くのはレイバーデイ後となろう。今週の米経済指標、特に雇用関連の指標が労働市場の軟化を示す場合は、景気不安を意識した米株安を警戒したい。
米国500の週間予想レンジの下限を6350と想定したい。4時間足チャートでトレンドを確認すると、6350ラインは下値支持線へ転換する可能性がある。一方、日足チャートでは、すぐ上の水準6360レベルに一目基準線が推移している。このテクニカルラインは、8月20日~22日に連日で相場を支えた経緯がある(日足チャート、緑矢印を参照)。6350のラインとともにサポートゾーンを形成する可能性がある。
米国500が6350をトライするサインとして2つのテクニカルライン―10日線と25日線の攻防に注目したい。10日線は、先月29日の下落相場を止めた経緯がある。25日線は、6400維持のテクニカルラインとして注目したい。
サポートライン
・6445:10日線(日足、8/29時点)
・6400:25日線(日足、8/29時点)
・6360:一目基準線(日足)
・6350:週間予想レンジの下限(4時間足)
予想レンジの上限:6550
一方、今週の米経済指標で市場予想を上回る内容が続けば、米国500は以下にまとめたレジスタンスラインの攻防に注目したい。しかし、前述した割高懸念、「9月下落のアノマリー」、そして今月中旬のFOMCで政策の方向性を確認する必要があることも考えるならば、上昇幅は限定的になると予想する。
6547レベルは、フィボナッチ・エクステンション100%の水準にあたる。すぐ上の水準6550のラインを週間予想レンジの上限と想定したい。
米国500が6550のラインをトライするサインとして、まずはレジスタンスラインへ転換する可能性がある6485レベルの突破を確認したい(4時間足チャート、黒矢印を参照)。次の焦点は、8月28日の高値6507の突破となろう。6507の突破、そして節目の6500ラインが下値支持線へ転換する場合は、6550を視野に米国500の上昇幅が拡大するサインと捉えたい。
レジスタンスライン:4時間足チャート
・6550:週間の予想レンジ上限、エクステンション100%
・6507:8月28日の高値水準
・6485:レジスタンスライン
米国500の日足チャート:6月下旬以降

出典:IG / TradingView
米国500の4時間足チャート:7月下旬以降

出典:IG / TradingView
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