米国株 週間見通し(11/3日~7日):AI相場で強気維持もナスダックの調整警戒、トリガーは経済指標か
米国株の週間展望。AI相場で強気維持も短期調整を警戒。ナスダック100の株価指数「米国テク株100」のチャート水準をIG証券のアナリストが詳細解説。
 要点
- ナスダックの総合指数と100指数の上昇拡大は、AI関連のハイテク株が株高をけん引していることを示唆している。米利下げ期待の不透明感が強まる中でも10月31日の市場で反発した状況は、地合いの強さを示している。今週も強気相場が予想される
 - だが主要指数は3週続伸し、短期的な過熱感が意識されやすい状況にある。今週は調整売りを警戒したい。そのトリガーとなり得るのが強い経済指標である
 - しかし、AI相場が崩れるまで、反落は押し目買いの好機と考えたい。ナスダック100の株価指数CFD「米国テク株100」の週間予想レンジは24800~27000ポイント
 
主要指数3週続伸、ナスダック上昇拡大
米国株が強気相場を維持している。注目はナスダック指数の勢いだ。総合指数は3週連続で2%の上昇を記録。10月29日に一時24000ポイント台へ上昇する局面が見られた。終値で23958.47ポイントを付け最高値を更新した。ナスダック100は28日に初めて26000ポイント台へ到達。29日に終値で26119.85ポイントへ上昇し最高値を更新した。
主要3指数 週間変動率:9月以降
 ブルームバーグのデータで作成
ナスダック指数の上昇拡大とS&Pセクター別パフォーマンスが、今の株高の構図-AI関連のハイテク株の買いに支えられている構図を浮き彫りにしている。
10月13日から31日まで(直近3週間)の変動率を確認すると、世界で初めて時価総額が5兆ドルに達したエヌビディア(NVDA)が属する情報技術セクターが8%高と、S&P500の上昇をけん引した。景気敏感セクターの一般消費財が6.7%高、コミュニケーション・サービスの5.3%高と続いた。一般消費財セクターの上昇は、アマゾン・ドット・コム(AMZN)とテスラ(TSLA)の株価上昇の影響が大きい。コミュニケーション・サービスはアルファベット(GOOGL)株の上昇に支えられた。
S&Pセクター別の変動率:10月13日~31日
 ブルームバーグのデータで作成
今週も強気相場維持か
先週は、米国株のトレンドに影響を与える2つの動きがあった。一つが、10月30日に行われた米中首脳会談である。中国がレアアース(希土類)の輸出規制を1年間停止する一方、米国は中国製品に対する100%追加関税を撤回した。さらに、中国が合成麻薬フェンタニルの違法取引を取り締まることを条件に、米国は20%の追加関税を10%に引き下げ、残りの10%も削減する可能性を示した。
米中の貿易摩擦は今後も続くだろう。しかし、両国が全面的な貿易戦争を避けながら交渉を続ける姿勢があらためて確認されたことで、この問題が米国株の重大なリスク要因ではないことが、先週の株高で示された。
もう一つの注目すべき動きが、米利下げの見通しに不透明感が漂い始めていることだ。29日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、米連邦準備制度理事会(FRB)は政策金利(フェデラルファンド金利)を0.25%引き下げ3.75~4.00%とした。しかし、米カンザスシティ連銀のシュミッド総裁が据え置きを主張し、利下げ判断で意見が割れた。
パウエルFRB議長は定例会見で、12月会合での政策運営についてメンバー間で強く異なる見解があったと述べた。また、12月利下げは既定路線ではないと市場をけん制した。
FOMC前のOIS(オーバーナイト・インデックス・スワップ)市場では、12月の追加利下げを織り込む状況にあった。しかし、FOMC後は利下げ確率が60%台へ急速に低下した。
利下げ期待の後退は米株安の要因となった。しかし下落幅は限定的で、31日の市場では主要3指数が反発した。3日続落していた中小型株のラッセル2000も反発で終えた。
また、VIX指数は警戒水準の「20」以下で推移しており、投資家の心理は落ち着いている。利下げ見通しの不透明感が漂い始めた状況でも米株安が限定的だったことを考えるならば、AI相場(ハイテク株買い)が崩れない限り、今週の米国株も強気相場が予想される。
VIX指数の日足チャート:2025年3月以降
 ブルームバーグのデータを基に作成
調整のトリガーは強い経済指標か
しかし、主要指数の3週続伸は短期的な過熱感を意識させる。強気相場のなかの調整売りを警戒したい。
そのトリガーとなり得るのが、予想を上回る経済指標である。12月利下げで不透明感が漂い始めている中、強い経済指標が続けば、「良いニュースは悪いニュース」となり調整売りを促す要因となり得る。
本来であれば、米雇用統計が注目される週だが米政府機関の閉鎖が続いている。10月のISM製造業・非製造業景気指数とADP雇用後の米国株の反応に注目したい。ブルームバーグがまとめたISM製造業の市場予想は49.5と、前月の49.1から改善の予想にある。非製造業も50.0から50.8への改善が見込まれている。一方、9月に予想外の減少(3.2万人減)となったADP雇用統計だが、10月は3万人増が予想されている。
これら重要指標が総じて市場の予想を上回る内容となれば景気不安が後退し、12月の利下げ確率がさらに低下する可能性がある。利下げ期待の後退は調整売りの要因となろう。しかし、単月の指標が現在のAI相場を崩すほどの影響力はないだろう。OIS市場で来年9月までに3回利下げの可能性が意識されている状況も考えるならば、米株反落の局面は押し目買いの好機と捉えたい。
AI銘柄(ハイテク株買い)主導の相場であることを考えるならば、その影響を強く受けるナスダック100に多くの取引機会があるだろう。同指数が原資産の株価指数CFD「米国テク株100」は、以下のチャート水準の攻防に注目したい。
米政策金利の見通し:2026年9月まで
 ブルームバーグのデータで作成 / OIS市場の確率 / 10月31日時点
※左軸のマイナス:利下げ
米国テク株100のチャート分析
予想レンジの上限:27000
今週もAI相場(ハイテク株買い)が続く場合、米国テク株100は以下にまとめた上値水準の攻防に注目したい。焦点は、次の節目水準27000ポイントのトライとなろう。このラインを今週の上限と想定したい。
米国テク株100が27000のラインを試すサインとして、まずは先週の上昇を止めたフィボナッチ・エクステンション100%の水準26202ポイントの攻防が焦点となろう(日足チャート、緑矢印を参照)。このテクニカルラインを突破する場合は、9月と10月の高安で算出されるV計算値の水準26420ポイントのトライを想定したい。26420ポイントを完全に突破すれば、27000ポイントを視野に上昇拡大を想定したい。
筆者の想定を超える上昇で米国テク株100が27000ポイント台へ上昇する場合は、フィボナッチ・エクステンション161.8%の水準27575ポイントのトライが焦点に浮上しよう(日足チャート)。
注目の上値水準:日足チャート
・27575:フィボナッチ・エクステンション161.8%
・27000:予想レンジの上限
・26420:V計算値
・26202:フィボナッチ・エクステンション100%
予想レンジの下限:24800
一方、米国テク株100の下落局面では、以下にまとめた200ポイント幅の水準の攻防に注目したい。
最初の水準は25600ポイントである。この水準付近には10日線が上昇している。一方、25640ポイントはフィボナッチ・リトレースメント38.2%の水準にあたる(4時間足チャート参照)。
次の焦点は25400ポイントである。上の水準25451ポイントは、直近高安の半値戻しにあたる。一方、直下の25385ポイントはもう一つのフィボナッチ・リトレースメント38.2%の水準にあたる(いずれも4時間足チャート参照)。
米国テク株100が25400ポイントを下方ブレイクする場合は、重要水準25200ポイントのトライを意識したい。このラインは10月10日の高値水準にあたり、サポート転換の可能性がある。上の水準25262ポイントは、フィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準にあたる(4時間足チャート参照)。一方、直下には20日線が上昇している。
米国テク株100が25200ポイントを下方ブレイクする場合は、24800ポイントを視野に下落拡大を想定したい。この水準ではサポート転換が確認されており、かつ直下には50日線が上昇している。24800を今週の下限と想定したい。25000ラインの下方ブレイクは、24800ポイントをトライするサインとなろう。
注目の下値水準
・25600:10日線、38.2%戻し
・25400:38.2%戻し、半値戻し
・25200:20日線、10/10日高値、61.8%戻し
・25000:サポートライン
・24800:予想レンジの下限
※移動平均線の水準:10月31日時点
米国テク株100の日足チャート:2025年9月以降
 TradingView提供のチャート
米国テク株100の4時間足チャート:10月以降
 TradingView提供のチャート
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