ドル円の週間見通し、米中協議の評価は?リスクオン続けば円安を想定 米インフレ指標とインド・パキスタン情勢には要警戒
今週のドル円について。まずは米中協議の市場評価を確認したい。経済指標では米国のインフレ指標が材料視されよう。インド・パキスタン情勢は円高要因として警戒したい。

概要
今週のドル円は米中協議の市場評価、米国のインフレ指標そして対立が深刻化しているインド・パキスタン情勢で上下に振れる展開が予想される。米中協議の内容が肯定的に評価される場合は、リスクオン継続の米ドル高・円安を想定したい。米FRBの利下げ期待が後退している。今週の物価指数でインフレの粘着性が示される場合は米ドル高の要因になり得る。インドとパキスタンの対立が激化している。情勢次第ではリスク回避の円高要因として警戒したい。ドル円の週間予想レンジは142.00~148.00を想定。
米中協議の市場評価は?リスクオン継続なら米ドル高・円安を想定
今週のドル円(USD/JPY)は、3つの要因でトレンドが左右されるだろう。
まずは、米中の関税協議に対する市場の評価を確認したい。10~11日に米中両政府はスイスで初の関税協議に臨んでいる。ロイターによれば、10日に行われた初日の協議は約8時間にわたり、現地時間の午後8時頃(日本時間11日午前3時)に終了したという。11日も議論を継続する。
トランプ米大統領は自身のソーシャルメディアで、とても良い会談が中国とできたと評価した。多くのことが話し合われ合意し、大きな進展があった(GREAT PROGRESS MADE!!!)と投稿した。
注目は週明けの市場の反応である。初協議が肯定的に評価される場合は、米中懸念の後退による米ドル高の展開が予想される。リスクオン(選好)の継続は円安の要因となろう。
後退する米利下げの観測、インフレ指標を警戒
2つ目の要因として注目したいのが、米国のインフレ指標である。5月の米連邦公開市場委員会(FOMC)声明文では、”一段(further)”という文言を追加し、経済見通しの不確実性に言及した。一方、失業の増加とインフレ率の上昇リスクに対する警戒感も示した。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長もFOMC後の会見で、トランプ関税によるインフレ率の上昇、失業の増加そして経済の不確実性に言及した。利下げについては今後のデータを精査し慎重に判断する姿勢を維持した。
パウエルFRBは新たなデータ待ちの状況にある。そのデータとして今週は、インフレ指標に注目が集まるだろう。13日に4月の消費者物価指数(CPI)、16日にミシガン大学調査の5月期待インフレ率がある。9日時点でのブルームバーグ予想を確認すると、4月CPIの前月比は3月から上昇する見込みである。前年同月比は横ばい予想にある。一方、5月期待インフレ率の予想は出そろっていない。
米国の消費者物価指数(CPI):直近1年間

ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 赤の棒グラフとドット:4月の予想
ミシガン大学消費者態度指数も材料視される可能性がある。ブルームバーグ予想は53.3と4月確報値の52.2から改善の見通しにある。消費者の先行景況感も48.0と、前月の47.3から改善が見込まれている。期待インフレ率の上昇と消費者マインドの低下が止まれば、米国株の上昇要因になり得る。米株高は円安の要因になり得る。
ミシガン大学消費者態度指数と期待インフレ率:直近1年間

ブルームバーグのデータで筆者が作成
4月の雇用統計と5月FOMCの内容を受け、短期金融市場では米利下げ観測が急速に後退している。関税リスクが意識された先月8日に今年12月の予想水準が、3.2%台まで低下する局面が見られた。しかし、5月9日時点での予想水準は3.6%台にある
現在は7月の利下げが意識されている。だが、確率は五分五分の状況にある。今週の物価指数で市場参加者にインフレの粘着性を意識させる内容が続けば、米利下げ観測がさらに後退することが予想される。米中懸念が後退するなかでの利下げ観測の後退は、米ドル高の要因になり得る。
米政策金利の予想推移

ブルームバーグのデータで筆者が作成 / OISに基づく予想
インド・パキスタン情勢、リスク回避の円高要因となる可能性も
今週のドル円(USD/JPY)を動かす3つ目の要因として注視したいのが、インド・パキスタン情勢である。両国が領有権を争うカシミール地方で4月に発生した観光客の襲撃事件は、深刻な軍事対立に発展している。
インドは7日、領有権を争うカシミール地方でパキスタンの支配地域にある計9カ所をテロリストのインフラであるとし攻撃した。パキスタン軍は10日、インドへの軍事作戦を開始し複数の軍事施設を攻撃したと発表した。米国が仲介役となりインドとパキスタンの両政府は10日、即時停戦で合意した。しかし、インドは停戦合意後も攻撃を受けたと非難し、パキスタンはこれを否定する状況にある。
両国は12日、軍の幹部が協議を行うと発表した。事態が鎮静化に向かえば、外為市場への影響は限定的となることが予想される。しかし、両国はカシミール地方の領有権問題だけでなくインダス川の水資源を巡っても衝突している。新たなテロ攻撃や偶発的な衝突で核を保有する両国の対立がエスカレートすれば、リスク回避の円高要因になり得る。
ドル円の週間予想とテクニカルライン
週間予想レンジの上限は148.00レベル
今週もドル円(USD/JPY)が反発基調を維持する場合、最初に注目したいのが50日線の攻防である。今年2月以降、この移動平均線はレジスタンスラインとして意識される傾向にある。3月28日と先週後半もこの移動平均線の手前で反落した。今は4時間足のフィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準146.43もレジスタンスラインとして意識されている。今週も50日線とともに相場の反発を止める可能性がある。
ドル円が146.43レベルを完全に突破する場合は、日足のフィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準146.88のトライを想定したい。このテクニカルラインの突破は147円台へ上昇するサインと捉えたい。
ドル円が147円台へしっかりと上昇する場合は、148.00レベルを視野に上昇幅の拡大を想定したい。この水準は、4時間足のフィボナッチ・リトレースメント76.4%戻しにあたる。また、4月上旬の反発相場を止めた経緯もある(4時間足を参照)。148.00レベルを週間予想レンジの上限と想定したい。
レジスタンスライン
・147.98:76.4%戻し、予想レンジの上限(4時間足、日足)
・146.88:61.8%戻し(日足)
・146.43:61.8%戻し(4時間足)
・146.30:50日線(日足、5/9時点)
週間の予想レンジ下限は142.00レベル
米中協議の市場評価とインド・パキスタンの情勢次第では、米ドル安・円高へ振れる可能性があろう。ドル円(USD/JPY)が下値をトライする場合は、サポートラインへ転換する兆しがある142.00レベルの維持が焦点となろう。この水準を週間予想レンジの下限と想定したい。142.28レベルは4月22日の安値と先週高値のフィボナッチ・リトレースメント61.8%戻しの水準にあたる(4時間足を参照)。このテクニカルラインの下方ブレイクは、142.00をトライするサインとなろう。
ドル円の下落局面では、1円レンジの攻防に注目したい。145.00レベルは先週9日の反落相場を止めた経緯がある。144.00レベルには日足の一目転換線と基準線が重なり推移している(5月9日時点)。4月22日の安値を基点とした短期サポートラインは今週、143円台で推移する。短期サポートラインの下方ブレイクは、142.28と142.00をトライするサインと考えたい。
サポートライン
・145.00:サポートライン(4時間足)
・144.00:一目転換線と基準線(日足)
・143.00:サポートライン(4時間足)
・142.28:61.8%戻し(4時間足)
・142.00:予想レンジの下限(4時間足、日足)
ドル円のチャート
日足:今年3月以降

出所:TradingView
4時間足:4月以降

出所:TradingView
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