ドル円週間予想(5/26-30):米国不信続く、ドル安・円高警戒
外為市場では米国不信によるドル安が続いている。国内金利の上昇による円高も警戒したい。5/26-30週のドル円予想レンジは140-145円。注目のテクニカルライン。

記事の要点
・根強い米国不信で米金利の上昇と米ドル安が同時に進行している
・今週の米ドルは関税報道と米PCEデフレーターで動くことが予想される
・国内金利が上昇、円高の進行を警戒
・ドル円の週間予想レンジは140.00-145.00
高止まりの米金利、止まらない米ドル安
米債市場で長期ゾーン利回りが高止まりしている。10年債利回りは4.5%台で推移し、先週の市場では2月中旬以来およそ3ヶ月ぶりに4.6%へ到達する局面が見られた。30年債利回りは5.1%まで上昇した。ブルームバーグのデータによれば、2023年10月以来の高水準である。
米長期ゾーン利回り:日足 2023年以降

ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 5月23日までの動向
本来であれば米金利の上昇は米ドル高の要因である。しかし、米ドルのトレンドを示すドル指数(DXY)は50日線で反発が止められ、レジスタンスラインを形成。直近では節目の100ポイントを再び下抜ける状況にある。日足のMACD(移動平均収束拡散法)はゼロラインを下回り、RSI(相対力指数)も売られ過ぎの水準「30」を視野に低下している。
直近のテクニカルの攻防とそれらの動向は、米ドルの地合いの弱さを示唆している。この地合いの弱さの根底にあるのは、以下で述べる「米国不信」だと筆者は考えている。
ドル指数のチャート:日足 2月以降

出所:TradingView / 5月23日までの動向
根強い米国不信、今週も米ドル安の進行を警戒
本来であれば、米金利の上昇と高止まりは米ドル高の要因である。しかし、国債価格の下落と通貨安が同時に進行している今の状況は、市場参加者が抱く「米国不信」の根強さを示唆している。この根底にあるのは、トランプ米政権が推し進める相互関税と大型減税がインフレと財政に及ぼす懸念である。この懸念はすぐに後退するものではない。ゆえに、今週も米ドル安の進行を警戒したい。
米ドルの変動要因として注目したいのが、米国と各国との関税協議に関する報道である。トランプ米大統領は23日、欧州連合(EU)との関税交渉に不満を示し、6月1日からEUからの輸入品に50%の関税を課す考えを示した。日米交渉では、自動車関税で両国の隔たりが大きいとの報道が見られる。関税交渉についての先行き不透明感を伝える報道が続けば、米ドル安の進行を警戒したい。
30日の4月個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)も米ドルの変動要因として注目したい。ブルームバーグがまとめた市場予想では、トレンドを示す前年同月比でインフレが鈍化する見通しにある。米債市場では、トランプ政策によるインフレ再燃と財政悪化に対する警戒感から長期ゾーン利回りに上昇の圧力が強まっている。いわゆる「悪い金利の上昇」である。この状況でPCEデフレーターが予想外に上振れしインフレの粘着性が示される場合は、悪い金利の上昇による米ドル安の進行を警戒したい。
一方、PCEデフレーターが予想の範囲内におさまる場合は、米金利の一時的な低下と米ドルの買い戻しを想定したい。しかし、基本的に米金利の低下は米ドル安の要因である。また、金利リスクの後退が米ドルの買い戻し要因となっても、上で述べた根強い米国不信を考えるならば、米ドルの買い戻しは一過性の動きに終わることが予想される。
米国 個人消費支出価格指数:過去1年間の動向

ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 赤の棒グラフとドット:4月の予想
国内金利にも上昇圧力、円高を警戒
現在は米ドル安だけでなく、円高の進行も警戒したい。先週行われた日米財務相会談では為替水準に関する協議はなかった。しかし円相場は主要通貨で円高優勢となった。
米金利の上昇に注目が集まりがちだが、国内の金利も上昇している。先週の20年債入札は不調に終わった。今週28日の40年債入札も低調となれば、米金利の動向次第では日米利回り格差が縮小するだろう。また、金利の上昇リスクが日本株の下落要因となる展開も予想される。国内金利の上昇は円高の要因として警戒したい。
円相場の変動率 対G10通貨:5月19~23日の週

ブルームバーグの為替データで筆者が作成
ドル円の週間見通しとテクニカル分析
週間予想レンジの下限:140.00
日足のRSIは「50」を下回り、MACDはデッドクロスへ転じゼロラインを下抜けてきた。日足の一目遅行線は低下基調にありローソク足に接近している。いずれも地合いの弱さを示唆している。5/26~30週のドル円(USD/JPY)も米ドル安・円高を警戒したい。
週間予想レンジの下限は節目の140.00。ドル円が140.00をトライするサインとして注目したいのが142.00の攻防である。4月下旬にサポートラインとして相場を支え、フィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準(141.96レベル)にあたるこのラインを下方ブレイクする場合は、ドル円の下落幅が拡大する展開を想定したい。5月上旬の安値水準142.35レベルの下方ブレイクは、142.00をトライするサインと考えたい。
ドル円が142.00を下方ブレイクする場合は、141.00を視野に下落幅の拡大を予想する。141.00をも下抜ける場合は、予想レンジの下限140.00のトライを想定したい。
サポートライン
・142.35:5月上旬の安値水準(4時間足)
・142.00:76.4%戻し、サポートライン(4時間足、日足)
・141.00:サポートライン(4時間足)
・140.00:予想レンジの下限(4時間足、日足)
週間の予想レンジ上限:145.00レベル
4時間足のストキャスティクスとRSIは「売られ過ぎ」の水準にある。短期間で下落幅が拡大した反動で、ドル円(USD/JPY)が反発する場合は、以下にまとめたレジスタンスラインの攻防に注目したい。
反発要因として注目したいのが、関税報道と米経済指標である。特に前者の関税報道で米国と各国との合意期待が高まれば、米ドルを買い戻す要因となろう。だが、米国不信と米中協議後の米ドル買いが一過性で終わった状況も考えるならば、米ドルの買い戻しとドル円の反発は短期で終息すると予想する。
週間予想レンジの上限はレジスタンスラインへ転換する可能性がある145.00。今日現在、日足の一目転換線がこのラインまで低下している。ドル円が145.00をトライするサインとして、まずは143円台への再上昇が焦点となろう。ドル円が143円台へ上昇し、かつこの水準をしっかりと維持する場合は、5月23日の高値144.07を視野に上昇幅の拡大を想定したい。この高値水準を突破すれば、日足の一目基準線と21日線の攻防に注目したい。21日線の上方ブレイクは、145.00をトライするサインとなろう。
レジスタンスライン
・145.00:一目転換線、予想レンジの上限(日足)
・144.48:21日線(日足)
・144.27:一目基準線(日足)
・144.07:5月23日の高値
・143.00:レジスタンスライン
なお、26日は英国がバンクホリデーの祝日、米国はメモリアルデーの祝日のため市場参加者が限られる。明日以降の動きに注目したい。
ドル円のチャート
日足:今年3月以降

出所:TradingView
4時間足:4月以降

出所:TradingView
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