ドル円予想 6/20:144.40-146.15レンジ、中東リスクで上振れ意識
IG証券のアナリストによる20日のドル円展望。予想レンジは144.40-146.15。中東懸念は「有事の米ドル買い」要因に。円相場は「原油高→貿易・経常収支の悪化懸念→円安」を警戒。ドル円の上振れを意識する局面に。

要点
・中東の地政学リスクはドル高・円安の要因に
・金(ゴールド)の軟調地合いは、ドル買い需要の強さを示唆
・現在の日米中銀の政策姿勢もドル円の押し上げ要因となろう
・ドル円、今日の予想レンジは144.40-146.15
中東リスクは「有事の米ドル買い」要因、ゴールドと立場が逆転
イスラエルがイラン攻撃に踏み切った6月13日以降、外為市場では対G10通貨で米ドル高が進行。中東の地政学リスクは「有事の米ドル買い」要因として意識されている。
米ドルの変動率:6月13日~20日

ブルームバーグの為替データで筆者が作成
今の米ドル買い需要の強さは、金価格の動向からもうかがえる。
イスラエルとイランの紛争にアメリカ軍が介入する可能性が意識されている。トランプ米大統領は19日、イランへの軍事行動について2週間以内に決めると表明した。トランプ米政権がイラン攻撃に踏み切れば、中東に展開しているアメリカ軍が報復攻撃の標的となろう。中東の地政学リスクはもう一段階上昇することになる。
本来であれば、リスク回避の局面では米ドルと同じ安全資産としての妙味がある金(ゴールド)の買い需要が強まってもおかしくない。しかしスポット金価格は13日以降、トランプ関税のリスクが意識された4月相場とは対照的に軟調地合いにある。「有事の米ドル買い」が上値の重さの一因だが、高値警戒感もまた相場の重石となっていると考えられる。現在は、米ドルが金(ゴールド)より安全資産として選好されている。
金価格のチャート:日足 今年4月以降

出所:TradingView
中東リスクは円安の要因に
米ドルと対照的なのが日本円である。13日以降の動きを確認すると、スウェーデンクローナとNZドル以外で円安が進行している。これら2通貨の上昇率も限定的である。
中東懸念が意識されるなかでも日本円が下落している要因の一つに、日米の株式市場が強気地合いを維持していることが挙げられる。
日本円の変動率:6月13日~20日

円安要因として、もう一つ注目したいのが原油高の影響である。
トランプ米政権の動き次第では、中東リスクのレベルがもう一段上昇するだろう。国際商品市況では供給懸念が一層高まり、原油高を招くだろう。日本は原油輸入の約90%を中東地域に依存している。したがって原油高は、貿易収支が悪化する要因となろう。
貿易収支の悪化は経常収支の悪化につながる。経常収支の悪化は円安要因である。イスラエルとイラン紛争の「落としどころ」の目途が見えるまでは、市場参加者が「中東リスク→原油高→貿易収支と経常収支の悪化懸念→円安」トレードを仕掛ける可能性がある。
利上げに慎重な日銀、利下げに慎重な米FRB
今週は日米中銀の政策会合が開かれた。日銀の植田和男総裁は今後の金融政策について、トランプ米政権の相互関税と各国の通商交渉の動向と今後のデータを見極める必要性に言及し、慎重に判断していく姿勢を維持した。
一方、米連邦準備制度理事会(FRB)は利下げを巡り慎重姿勢を維持した。最新の政策金利見通し(ドットプロット)では年内2回の利下げ予想が維持された。しかし、3月予想の9人が8人と一人減った。また、1回利下げの予想は4人から2人へ減った一方、年内利下げ無しの予想は4人から7人に増えた。
パウエルFRB議長は「金融政策を調整する前に、今後の経済見通しについて詳細に知るために十分待てる立場(well-positioned to wait)にある」と述べた。米国と各国の通商交渉次第でインフレ再燃の可能性が高まれば、パウエルFRBの見通しがさらに“タカ派”寄りとなることが予想される。日米の政策姿勢も短期的な米ドル高・円安の要因として意識したい。
FOMC参加者による2025年の利下げ予想回数

出所:Federal Reserve Bank、Summary of Economic Projections

ドル円 今日の見通しとテクニカル分析
予想レンジの上限:146.15
上述の米ドル高・円安の要因を考えるならば、今日のドル円(USD/JPY)も上値トライを想定したい。
予想レンジの上限は146.15レベルを想定(日足チャート、赤矢印を参照)。このラインは5月高安のフィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準に当たる。5月29日に相場の上昇を止めた経緯がある。また現在は、89日線と短期レジスタンスラインが146.15レベルと交錯する。テクニカルの面で重要なレジスタンスラインと想定したい。
ドル円が146.15レベルをトライするサインとして2つの水準-3月28日の高値と4月22日の安値の半値戻しの水準145.55レベル(日足チャート、青矢印を参照)、19日の高値145.77レベルの攻防に注目したい。145.77の突破は146.00をトライするサインと捉えたい。
なお、筆者の想定を超えてドル円の上昇幅が拡大する場合は、5月15日の高値146.75レベルのトライを意識したい。
レジスタンスライン:日足
・146.15:予想レンジの上限
・146.00:レジスタンスライン
・145.77:6/19高値水準
・145.55:半値戻しの水準
予想レンジの下限:144.40
ドル円(USD/JPY)の反落局面では、以下にまとめたサポートラインの攻防に注目したい。今日の予想レンジ下限は144.40レベル。このラインは、直近高安のフィボナッチ・リトレースメント38.2%の水準144.63とともにサポートゾーンを形成する可能性がある。
まずは、フィボナッチ・リトレースメント23.6%の水準にあたる145.00レベル(145.06)の攻防に注目したい。この水準でドル円が反発する場合は、来週も上述のレジスタンスラインを視野に強気地合いを維持するだろう。
一方、ドル円が144円台へ反落する場合は10日線の攻防に注目したい。この移動平均線は今日現在、144.70台で推移している。10日線の下方ブレイクは、144.40-60ゾーンをトライするサインと捉えたい。
サポートライン
・145.06:23.6%戻しの水準(1時間足)
・144.71:10日線(日足)
・144.63:38.2%戻しの水準(1時間足)
・144.40:サポートライン(1時間足)
ドル円のチャート
日足:今年3月以降

出所:TradingView
1時間足:6月11日以降

出所:TradingView
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