米国株、ハイテク決算の混乱回避か S&P500先物上昇 原油高に不安
S&P500の先物商品は大手ハイテク4社の決算発表後に上昇。一方、原油高やFRBの利上げの可能性が感じられたことは悪材料といえる。
アメリカの株式市場は大手ハイテク企業の決算発表をひとまず好感したようだ。S&P500種株価指数に関連した先物商品の価格は29日夕方以降の取引で上昇傾向。取引時間終了後に2026年1-3月期決算を発表した大手ハイテク4社のうち3社の株価は時間外取引で急落を回避した。ただ、29日の米国の金融市場では不安要素も拡大している。原油価格の29日の終値は約3週間ぶりの高値となり、物価上昇圧力のさらなる強まりが意識される状況。米連邦準備制度理事会(FRB)の29日の情報発信からは、次の政策金利変更が利上げになる展開が現実味を増している様子もうかがえた。米国株式市場は神子知能(AI)ブームへの期待と、イラン戦争がもたらす混乱への懸念が混在している状況で、S&P500の今後の見通しをめぐっては下落圧力の再燃も考えられる。
アメリカのS&P500は続落 時間外取引では0.5%上昇
S&P500(SPX)の29日の終値は前日比0.04%安の7135.95。前日の0.49%安に続く下落となった。一方、ブルームバーグによると、S&P500に関連した先物商品のEミニS&P500先物(6月限)の価格は米国東部時間29日午後8時55分に7201.50をつけ、午後4時段階から0.5%ほど高くなっている。
アルファベットの株価が決算発表後の時間外で上昇 アマゾンやマイクロソフトも
S&P500の先物価格が上昇したのは大手ハイテク企業の決算に対する評価の表れといえそうだ。29日の取引時間終了後に1-3月期決算を発表した、アルファベット(GOOGL)、アマゾン・コム(AMZN)、マイクロソフト(MSFT)、メタ・プラットフォームズ(META)はいずれも総収入と1株当たり利益(EPS)で市場予想を超える実績を発表。総収入の成長率でみても、全社が前四半期よりも高くなる好決算だった。各社はAIサービス強化のための巨額の設備投資が中長期的に利益を圧迫するという懸念を持たれているが、高い成長がこうした不安を一定程度、和らげた。
4社の株価は29日の時間外取引で、メタを除けば、堅調に推移している。ブルームバーグによると、このうちアルファベットの株価は一時、375.20ドルをつけ、直前の終値から7.22%高となった。BITA社が7社の株価に基づいて算出する「マグニフィセント・セブン指数」(MAGSEVEN)は27日の終値で半年ぶりの最高値を記録しており、今後も好調さが維持され、S&P500を下支えする可能性がある。メタの株価は2026年の設備投資見通しの上方修正が嫌気され、時間外取引で6%超値下がりしている。
原油価格が3週間ぶりの高値に上昇 3月のPCE物価指数の上昇は加速見通し
ただ、AIブームへの期待とは裏腹に、29日の金融市場ではS&P500への不安要素も拡大した。原油先物市場の指標価格であるWTI(6月渡し、WTI原油)は29日のニューヨーク市場の終値で前日比6.95%高の1バレル=106.88ドルまで上昇。4月7日(112.95ドル)以来、3週間ぶりの高値となった。WTIは日本時間30日朝の取引では一時、109.64ドルまで上昇している。米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)が28日夜、ドナルド・トランプ大統領が周辺に対して、イランに対する海上封鎖の継続に備えるよう指示したと報じたことが材料視された。
原油価格の高止まりは物価上昇圧力として働き、米国の消費を下押しする可能性があるS&P500にとっての下落要因だ。米商務省が30日午前8時30分(日本時間30日午後9時30分)に発表する3月の個人消費支出(PCE)物価指数をめぐっては、ブルームバーグがまとめた市場予想で、総合指数の伸び率が前年同月比3.5%となり、前月(2月)の2.8%から物価上昇が加速する見通しとなっている。食品とエネルギーを除いたコア指数でみても、伸び率は3.2%となり、やはり前月(3.0%)よりも高くなるとみられている。
FRBの現状維持の声明文に異論 年内利下げ見通しは0%に
こうした中、29日に連邦公開市場委員会(FOMC)を終えたFRBの情報発信からは、物価上昇への警戒が感じられた。FRBは今回のFOMCで市場予想通りに政策金利を3.50-3.75%(中間値3.625%)で据え置いたが、声明文の中では、投票権を持つ12人の委員のうち3人が、次の金融政策変更が利下げ方向であることを示唆する文言を盛り込むことに反対したことが明かされた。3人の委員は原油高がもたらす物価上昇の過熱などを警戒している。ブルームバーグによると、29日の金融市場で見込まれている12月のFOMC後の政策金利の水準は3.670%となり、前日から0.089%ポイント上昇。年内の利下げ確率は0%となった。S&P500は声明文の内容に値下がりで反応した。
FRBの声明文には、政策金利を「追加的に調整する」ことを検討する際には慎重を期すとする文言が盛り込まれており、FRBが2024年と2025年に利下げを進めた経緯を踏まえれば、追加利下げの可能性を示唆する内容だと受け止めることができる。ジェローム・パウエル議長は29日の記者会見で文言を修正しなかった理由について、イラン情勢をめぐる不確実性が高い中、投票メンバーの多数派は「現段階でシグナルを送る必要があるように思われない」と判断したと説明した。
パウエル氏が理事残留の意向 ホルムズ海峡の不透明感などでS&P500に下落圧力も
またパウエル氏はFRB議長としての任期が5月15日に切れた後も、理事としてFRBに残ることを明らかにした。パウエル氏は理事に残留する理由について、24日にパウエル氏への刑事捜査を終了すると明かした首都ワシントン地区のジャニーン・ピロ連邦検事が捜査を再開する可能性に含みを持たせていることを理由に挙げている。パウエル氏の後任の議長として指名されているケビン・ウォーシュ元理事は議会承認が得られる見通しになっているが、FRB内に議長と前議長が同時に在籍する異例の事態となる可能性が出てきた。
米国の株式市場はAIブームへの期待とイラン戦争がもたらす経済への悪影響への懸念が入り混じっている状態。29日に決算を発表した大手ハイテク企業の4社の株価も30日の取引では、29日の時間外取引とは異なる値動きを見せる可能性もある。ホルムズ海峡封鎖が長期化すればするほど、投資家心理の悪化が進むことは避けられず、S&P500の今後の見通しをめぐっては下落圧力の根強さが材料視される展開も考えられそうだ。
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