米国株、急落の恐れ S&P500反落 米国がイラン攻撃ならリスク拡大
S&P500は17日に0.84%安の反落。米国のイラン攻撃も取りざたされる中、投資家心理が悪化している。18日までのFOMCが下落圧力を強める可能性がある。

アメリカの株式市場に急落の恐れが出ている。S&P500種株価指数の17日の終値は前日比0.84%安の反落。半導体大手NVIDIA(エヌビディア)などS&P500への影響が大きい大手ハイテク株もそろって下落した。イスラエルによるイランへの攻撃が続く中、米国のドナルド・トランプ大統領はイランに対して無条件降伏を要求。米国がイランを直接攻撃するとの見方も出ており、金融市場のリスク回避姿勢を強めている。一方、原油価格は17日終値で1バレル=74ドル台まで上昇しており、世界経済を下押しする可能性も拭えない。また17日に発表された米国の5月の小売売上高は市場予想を下回る結果で、トランプ氏の高関税政策の悪影響も改めて意識された。S&P500の今後の見通しには悪材料が山積しており、米連邦準備制度理事会(FRB)が18日に示す経済見通しなどが下落を加速させる可能性もありそうだ。
アメリカのS&P500は0.84%安で再び6000割れ
S&P500(SPX)の17日の終値は5982.72。2日ぶりの反落で6000の大台を割り込んだ。2月19日につけた最高値(6144.15)は引き続き視野に入っているものの、4月8日につけた直近の安値(4982.77)を起点とした値上がりの勢いは失われている。

エヌビディアは0.39%安 マグニフィセント・セブンがそろって下落
17日の取引ではS&P500への影響度が大きい大手ハイテク株がそろって下落した。エヌビディアの株価(NVDA)が前日比0.39%安となったほか、電気自動車(EV)大手のテスラ(TSLA)が3.88%安、アップル(AAPL)が1.40%安などとなっている。マグニフィセント・セブンと呼ばれる大手7社の株価がそろって下落するのは、トランプ氏が欧州連合(EU)からの輸入品に50%関税をかけることを示唆した5月23日以来だ。

トランプ氏はイランに無条件降伏を要求 イラン攻撃参加ならリスク拡大
S&P500を下落させたのは中東情勢の悪化だ。13日にイランの核施設を攻撃したイスラエルはその後も攻撃の手を緩めておらず、米メディアによると、18日もテヘラン南西部の住民に避難を呼びかけ、軍事施設を対象とした攻撃を行っているという。トランプ氏は米国東部時間17日、自身のSNSトゥルースソーシャルへの投稿でイランの最高指導者アヤトラ・アリ・ハメネイ師の居場所を正確に把握しているとし、「少なくとも現段階では、彼を排除(殺害!)することはない」とした。その後、「無条件降伏!」とも投稿しており、イランに対する圧力を強めている。ハメネイ師をめぐってはイスラエルのベンジャミン・ネタニヤフ首相も攻撃の可能性を否定していない。
中東をめぐる混乱はさらに拡大するリスクがある。米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)は17日、米政府高官の話として、トランプ氏は「米国によるイラン攻撃の可能性を含めた様々な選択肢を検討している」と報じた。イランが地下に建設した核開発関連施設の破壊には米軍が保有する地下貫通弾(バンカーバスター)が必要だとされる。ハメネイ師を攻撃の標的とすることや、米国のイラン攻撃への参加はイラン政権の崩壊につながる可能性があり、中東情勢をめぐる不確実性のいっそうの高まりが金融市場のリスク回避姿勢を強めることになりそうだ。
VIX指数は13%上昇 原油価格は終値で5か月ぶりの高さに
実際、中東情勢の深刻な悪化は投資家の不安心理を高めている。シカゴ・オプション取引所によると、ウォール街の「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数(VIX)は17日の終値で前日よりも13.03%高い21.60まで上昇し、5月23日(22.29)以来の高水準となった。VIXはS&P500のオプション取引の動向から算出され、値が大きいほど、今後の値動きが荒くなることへの警戒が強いことを示す。

一方、中東情勢をめぐる不安の拡大は原油価格の上昇につながっている。ブルームバーグによると、原油先物市場の指標価格であるWTI(翌月渡し、WTI原油)は17日の終値で前日比4.28%高の1バレル=74.84ドルまで上昇。終値としてはトランプ氏の就任直後にあたる1月22日(75.44ドル)以来の高さとなった。イランに対する攻撃が激しさを増せば、イランの原油生産や輸出をめぐる混乱が原油価格をさらに上昇させる可能性があり、世界経済のリスク要因としてとらえることができる。

米国の5月小売売上高は予想を下回る悪さ FRBの経済見通しでS&P500の下落加速も
また、17日には米国の実体経済をめぐる悪い経済指標も発表された。米商務省がまとめた5月の小売売上高の伸び率は前月比0.9%減で、ブルームバーグがまとめた市場予想の0.6%減を超えるマイナスとなった。自動車と部品を除いたベースでも0.3%減となり、市場予想(0.2%増)よりも悪い結果となっている。トランプ氏の高関税政策が引き起こした経済の先行き不透明感が消費者心理を悪くしている可能性があり、米国経済の成長減速を予感させるS&P500にとっての悪材料だ。

こうした中、FRBが18日までの日程で開いている連邦公開市場委員会(FOMC)は政策金利の維持が確実視される情勢。投資家の注目はFOMC後に発表される経済見通しや、ジェローム・パウエル議長の記者会見に集まる。米国経済をめぐっては、物価上昇率の落ち着きがみられており、FRBは利下げに動きやすい状況だが、トランプ氏の高関税と中東情勢の急変という大きな不確実性に直面する中、FRBが金融政策の変更に慎重になる可能性がある。FRBは3月に示した前回の経済見通しでは、2025年の利下げ回数は2回になるとの方向性を示していたが、18日のFRBの情報発信が株式市場が待ち望む利下げを遠のかせる内容だと受け止められれば、S&P500が急落することも想定される。
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