NY金見通し(8/12~15):予想レンジ 3300~3380ドル、売り包囲網、下落警戒
現在のNY金相場は売り要因に囲まれている。今週の米CPIとPPIが総じて予想以上となれば、下落幅の拡大を警戒したい。今週の見通しと注目のテクニカルラインについてIG証券のアナリストが分かりやすく解説。

要点
・現在の金(ゴールド)は売り要因に囲まれている
・米インフレ指標に注目、予想以上ならば金の下落幅拡大を警戒
・金価格の予想レンジは3300~3380ドル(15日まで)
トランプ氏「ゴールドに関税かからず」、金価格が大幅下落
トランプ米大統領は11日、自身のSNSサイト「トゥルース・ソーシャル」に「金に関税はかからない」と投稿した。詳細はこれから判明するだろう。
先週は、スイスからの金地金の輸入に39%の米関税が適用される可能性が意識され、同国から米国への金輸出が急減するとの懸念が高まった。8日の市場で金先物価格(12月物)は一時3534.1ドルと最高値を付けた。
しかし、トランプ氏の投稿を受け、11日の市場でNY金先物価格(12月物)は前週末比86.6ドル(2.5%)安の1トロイオンス3404.7ドルと、大幅下落で終えた。スポット金価格(以下では金価格)は3350レベルで推移している50日線まで下落幅が拡大した。
売り要因に囲まれる金価格、今週は下落相場を警戒
金価格は現在、3つの下落要因に囲まれている。前述したトランプ関税の懸念後退はその一つである。
欧州の地政学リスクが後退する場合も金価格の重石となろう。15日に米国のアラスカ州でトランプ米大統領とプーチン露大統領の首脳会談が予定されている。領土問題を巡りウクライナ側は反発しており見通しは不透明である。しかし、大国の主脳同士が直に会談するということは、すでにロシア・ウクライナ戦争の終結に向けた何らかの合意がなされる下地が整っていると考えられる。欧州の地政学リスクが後退する場合は、金価格の重石となろう。
米国と中国の通商交渉にも注目したい。米CNBCは11日、トランプ米大統領が12日に発動される予定の対中関税の停止期限を90日間延長する大統領令に署名したと報じた。新たな期限は11月上旬になるという。金(ゴールド)関税に加えて、対中関税の懸念が後退している状況も金価格の重石となろう。今週の金価格は下落相場を警戒したい。
金価格が直面している3つの下落要因
1:金(ゴールド)に対するトランプ関税懸念の後退
2:15日の米ロ会談で欧州の地政学リスクが後退する可能性
3:米中貿易対立の懸念後退
米インフレ指標に注目、上振れ警戒
今週は、米国のインフレ指標も金価格の下落要因となる可能性がある。今晩に7月消費者物価指数(CPI)、14日に同月生産者物価指数(PPI)が発表される。週間のIG為替レポートと米国株レポートで述べたとおり、CPIとPPIはいずれもインフレの粘着性を示唆する可能性がある。
7月のインフレ指標が総じて予想以上となれば、市場の思惑が先行している米連邦準備制度理事会(FRB)の“連続”利下げ期待が後退することが予想される。米債市場では金利が上昇し、金利の上昇は米ドルの買い戻し要因となろう。これら市場の動きは、金価格の下落圧力を強めるだろう。
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金価格の見通しとテクニカル分析
予想レンジの下限:3300
金価格は11日、3350レベルで推移している50日線を下方ブレイクする局面が見られた。一目の遅行線は日足ローソク足を下抜けつつある。RSIも50を下回ってきた。テクニカルの面でも金価格は下落相場を意識する状況にある。
上述した売り要因で金価格が下値をトライする場合、以下にまとめたサポートラインの攻防に注目したい。15日までの予想レンジの下限は、直近高安のフィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準3300ドル。この水準をトライするサインとして90日線、日足と1時間足のフィボナッチ・リトレースメントの攻防に注目したい。
想定を超える下落で3300ドルを下方ブレイクする場合は、日足の半値戻しと一目雲の下限が重なる3286レベルまでの下落を警戒したい。
サポートライン
・3338:半値戻し(1時間足)
・3331:90日線(日足)
・3325:38.2%戻し(日足)
・3321:61.8%戻し(1時間足)
・3300:予想レンジの下限、76.4%戻し(1時間足)
・3286:半値戻し、一目雲の下限(日足)
予想レンジの上限:3380
今週の米インフレ指標が予想以下となれば、利下げ期待による米金利の低下とドル安が予想される。この場合、金価格は反発が予想される。しかし、上述した金(ゴールド)を取り巻く今の状況を考えるならば、上昇幅は限定的となることが予想される。
反発の局面では、3360ドルから10ドル幅の攻防に注目したい。いずれもレジスタンスラインへ転換する可能性がある。特に3380レベルでそのムードが強い。この水準を15日までの予想レンジの上限と想定したい。
想定を超える反発が見られる場合は、3400ドルをトライする可能性が高まる。しかし、今週3400ドルを維持する可能性は低い。反落が予想される。
レジスタンスライン
・3400:レジスタンスライン(日足)
・3380:予想レンジの上限(1時間足)
・3370:レジスタンスライン(1時間足)
・3360:レジスタンスライン(1時間足)
金価格の日足チャート:5月以降

出典:IG / TradingView
金価格の1時間足チャート:7月下旬以降

出典:IG / TradingView
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