NY金続伸 米国売り再燃で3,300ドル回復 上値抵抗線の突破なるか
金価格が強気地合いを回復している。「米国売り」が再燃し、中東の地政学リスクが高まっている状況も考えるならば、上値を意識する状況が続こう。

記事の要点
21日の市場では「米国売り」が再燃した。特に米ドル安の進行が、金価格を下支えしている。米CNNは20日、イスラエルがイランの核施設を攻撃する可能性について報じた。中東の地政学リスクも高まっている。これらの状況を背景に、安全資産であるゴールド買いの需要が高まっている。スポットの金価格は、最高値3,500 を基点とした上値抵抗線(レジスタンスライン)が視野に入る。このラインの突破は、さらなる上値トライのサインとなろう。
米国売り再燃、米金利一時4.6%、米ドル安進行
21日の国際商品市況でNY金価格が続伸した。先物価格(6月物)は前日比28.9ドル(0.9%)高の1トロイオンス3,313.5ドルで終え、3日続伸した。スポットの金価格は5月9日以来となる3,325ドルまで上昇する局面が見られた。
2つの要因が、金価格の上昇を支えている。ひとつが、「米国売り」の再燃である。
21日の米債市場で10年債利回りは一時4.6%へ上昇した。2月中旬以来である。この日の20年債入札の結果が低調と受け止められ、米国債の需要に対する懸念が強まった。この懸念は市場参加者に米国の財政リスクを想起させる。財政問題を意識した悪い金利の上昇は米株安の要因となり、この日は主要3指数が下落した。
注目は米ドルの動きである。悪い金利の上昇は米国の信認が低下していることを意味する。ゆえに、外為市場では通貨の米ドル売りが続き、主要通貨に対して下落した。
国債、株式そして通貨が同時に下落した「米国売り」は、特に、20日のIGコモディティレポートで指摘した米ドル安の再燃は安全資産である金の買い需要を高めた。
米ドルの動向:対G10通貨、5月21日

ブルームバーグの為替データで筆者が作成
不穏な中東情勢、イスラエル次第で地政学リスク再燃も
金価格の上昇を支えているもう一つ要因が、中東の地政学リスクである。米CNNは20日、複数の米当局者の話としてイスラエルがイラン核関連施設への攻撃を計画していると伝えた。
イランの核開発をめぐる米国との協議は難航している。イランの最高指導者ハメネイ師は20日、同国の核開発をめぐる米国との協議について「成功するとは思えない」と語った。イスラエルがイラン核関連施設攻撃の最終決定を下したかどうかは不明だが、米国とイランの交渉が行き詰まると、イスラエルは強硬姿勢に傾く可能性がある。中東の地政学リスクが再燃する可能性が高まっている状況も金の買い需要を高める要因となろう。
金価格の見通しとテクニカル分析
上値抵抗線(レジスタンスライン)
日足のフィボナッチ・リトレースメント61.8%と50日線が5月の調整売りを止めた。これらテクニカルの攻防もまた、スポット金価格(以下では金価格)の強気地合いを示唆している。
今日以降も金価格が上昇相場を維持する場合、注目すべきは最高値3500ドルを基点とした上値抵抗線(レジスタンスライン)の攻防である。このレジスタンスラインはトライアングルの上限でもある。ゆえに、このテクニカルラインの突破は、金価格がさらに上値をトライするサインとなろう。
金価格が上値抵抗線を完全に突破する場合は、4時間足チャートのフィボナッチ・リトレースメントの攻防に注目したい。3,355ドル付近に2つのフィボナッチ・リトレースメントが重なっており、相場の上昇を止める可能性がある。一方、3,355ドルを完全に突破すれば、3400ドルを視野に上昇幅が拡大する展開を想定したい。
・3,410:76.4%戻し
・3,355:61.8%戻しと76.4%戻しが重なる水準、相場の上昇を止める可能性あり
・3,345:今日現在、上値抵抗線が推移している
・3,325:昨日の高値水準、突破すれば上値抵抗線の攻防を想定
下値支持線(サポートライン)
今週に入り金価格は3.6%上昇している(21日時点)。4月7~11日の週以来の上昇率である。今日は5月の米購買担当者景気指数(PMI)速報値が発表される。ブルームバーグがまとめた予想は総合が50.3、製造業が49.9、サービス業が51.0。予想外に上振れる場合は、米国株と米ドルを買い戻す要因になり得る。このケースでは、金価格の調整売りを想定したい。
だが、トランプ米政権の政策は米国の信認を低下させている。外為市場で米ドル安が進行している状況を考えるならば、単月の指標で金価格が下落しても一過性で終わるだろう。下落は押し目買いの好機と考えたい。目先は、以下にまとめたサポートラインの攻防に注目したい。
・3,300:サポートライン
・3,278:21日線
・3,250:10日線
・3,224:50日線、5月の調整売りを止めた
金価格のチャート
4時間足:4月以降

出所:TradingView
日足:今年の2月以降

出所:TradingView
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