ドル円週間見通し:146-151.60予想 参院選、自公過半数割れで予想される3つのシナリオ
20日の参院選で自公過半数割れとなれば、今週の外為市場では円安の進行を警戒したい。しかし円安が急速に進行すれば、突発的な円買い戻しを誘発する要因になり得る。今週のドル円は変動幅の拡大を警戒したい。週間見通しと注目のテクニカルラインについてIG証券のアナリストが分かりやすく解説。

要点
・20日の参院選では自公過半数割れの情勢にある
・自公大敗なら今週の外為市場は円安の進行を警戒したい
・米利下げ期待の後退もドル円の下支え要因となろう
・ドル円の週間予想レンジは146.00-151.60レベル
ドル円 今週の予想レンジ146.00-151.60
7月第4週のドル円(USD/JPY)は、146.00-151.60レンジを予想する。146.00レベルはサポートラインへ転換する兆しがある。一方、151.60レベルは、7月18日時点での今年高値と安値のフィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準に当たる(151.62レベル、いずれもチャートの黒矢印を参照)。
ドル円のチャート:日足 昨年12月以降

出所:TradingView
参院選、自公過半数割れで予想される3つのシナリオ
7月20日に第27回参議院議員通常選挙がある。各報道機関の情勢調査によれば、7月第3週に「自公合わせて改選議席50割れ」、「自公が参議院でも過半数割れ」と伝える報道が一気に増えた。従って、7月第4 週のドル円(USD/JPY))の予想シナリオも自公の獲得議席数が50を下回り、衆議院だけでなく参議院でも過半数割れに陥ることを前提とする。
シナリオ①:自公過半数割れかつ大敗、悪い金利の上昇で円安が加速
20日の参院選で自民党と公明党合わせて改選議席数が50を下回る場合は、国内の政局不安が高まるだろう。その不安の強さは、獲得議席数に左右されるだろう。
7月に入り円安がさらに進行している。対米ドルでは3%下落している。この動きは、過半数割れの可能性についてすでに市場が織り込んでいることを示唆している。しかし、自公合わせて改選議席が40議席前半、または40議席を下回るシナリオを織り込んでいる可能性は低い。シナリオ①が実現すれば、石破内閣の総辞職は避けられないだろう。そうなれば日本の政局は一気に混迷の度合いを深めるだろう。
円相場の動向:7月以降

ブルームバーグのデータで作成 / 7月18日まで
自民党は18日、石破茂総裁(首相)が21日午後2時から党本部で記者会見を開く予定と明らかにした。参院選の結果次第では首相辞任を表明する可能性がある。来週以降、自民党が次期総裁選に動き出せば、減税や社会保険料の引き下げを主張する野党と協調する必要性から、財政拡張路線を志向する高市早苗氏などの候補者が新総裁に選出される可能性を市場は意識しよう。昨年9月に行われた自民党総裁選では、高市早苗氏が有利と見た円安の場面が見られた。しかし、決選投票で高市氏が敗れると一気に円高へ振れた経緯がある。
また、財政規律を重視する候補者が新総裁に就いても、石破内閣の不人気を考慮すると、次回の衆院選と参院選で国民の支持を取り戻すために自民党は財政拡張路線へ舵を切る可能性もある。いずれにせよシナリオ①では、財政悪化の懸念を国債市場の参加者に意識させることになろう。国内金利の上昇幅が急速に拡大すれば、外為市場では「悪い金利の上昇」と受け止められるだろう。金利の上昇スピード次第では、円安が急速に進行するだろう。このケースでは、予想レンジの上限151.60レベルを一気にトライする可能性もある。
シナリオ②:急速な円安の進行と突発的な円の買い戻し
シナリオ①で指摘した急速な円安の進行は、円の買い戻しを誘発する可能性がある。しかし、自公大敗による政局不安と日銀の利上げ期待の後退を考えるならば、調整の円買いは「突発的」な動きで終わる可能性がある。
以下で詳述する9月の米利下げ期待も後退している状況を考えるならば、今週のドル円(USD/JPY)は変動幅の拡大を警戒したい。
シナリオ③:調整の円買い、再び円安へ
参院選での自公過半数割れは円安の要因として警戒したい。しかし、これについて市場がすでに織り込んでいることを考えるならば、週明けの外為市場では一度円の買い戻しで反応する可能性がある。
その条件として注目したいのが、やはり獲得議席数である。自公合わせて40議席後半ならば市場が想定する過半数割れの範囲内となろう。政局不安を意識して国内の金利は7月に入り上昇してきた。外為市場では円安がさらに進行している。これら選挙前の市場動向を考えるならば、重要イベント後によく見られる反対の動き-調整の円買いシナリオも想定しておきたい。
しかし、シナリオ②で述べたとおり円高へ振れてもその動きは一過性で終わるだろう。ドル円(USD/JPY)の反落局面では押し目買いを考えたい。
後退する9月の米利下げ期待、ドル高進行なら151円台が視野に
ドル円(USD/JPY)については、参院選の結果だけでなく米利下げの動向も重要な材料である。
7月29日 ~30日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催される。今回は政策金利の据え置きが予想される。従って焦点は、パウエルFRB議長の会見となろう。トランプ米大統領による利下げ圧力の要求が増すなか、パウエル氏はデータ重視の慎重姿勢を維持している。
現状、短期金融市場では7月ではなく、9月の利下げを意識する状況にある。しかし、その思惑は大きく揺れている。6月下旬に、およそ2ヶ月ぶりに90%の確率で9月の利下げを織り込む状況が見られた。しかし現在はその確率が、50%台まで低下している。米FRBは金融政策に関する発言を自粛するブラックアウト期間に入っている。従って今週は、米経済指標で利下げ期待の思惑が揺れ動くことが予想される。経済の底堅さを示す内容が続くならば、「9月利下げ期待のさらなる後退→米ドル高」を想定したい。参院選が円安の要因となれば、今週のドル円は以下で述べるレジスタンスラインの攻防に注目したい。
9月FOMCの利下げ確率の推移:4月以降

ブルームバーグのデータで作成 / OISに基づく確率、7月16日午前9時時点
※マイナス表記:利下げ
ドル円の週間見通しとテクニカル分析
週間の予想レンジの上限:151.60レベル
今週のドル円(USD/JPY)について筆者はシナリオ①および②の可能性を意識している。この点は通貨オプション市場も示唆している。リスクリバーサルの動向を見ると、1週間のそれがドルコールの状況にある。1ヶ月のドルコールを視野に上昇基調にある。シナリオ①を意識する動きと考えられる。
一方、1週間の予想変動率が12%付近までじわりと上昇している。トランプ米大統領が相互関税を発表した時のような急変動は見られない。しかし自公大敗となれば、週明けから外為市場では急速に円安へ振れる可能性がある。予想変動率も急速に上昇する場合、ドル円は上下に大きく振れることが予想される。シナリオ②の突発的な円買いを警戒したい。
ドル円のリスクリバーサルと予想変動率:日足 年初来

今週、ドル円が上値を目指す局面では、以下にまとめたレジスタンスラインの攻防に注目したい。
最初の焦点は、先週ドル円の上昇を止めた1月の高値と4月安値の半値戻しの水準149.38レベルの突破となろう。だが、参院選で自公大敗(シナリオ①)となれば、このテクニカルラインと心理的節目のライン150.00レベルを突破し、一気に151.00のラインを目指す可能性がある。
ドル円が151円台へ上昇すれば、予想レンジの上限151.60レベルのトライを意識したい。この水準は、フィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準にあたる。筆者の想定を超える円安により予想レンジの上限を突破する場合は152円、153円と1円レンジで上値の水準を見極めることになろう。テクニカルの面では、フィボナッチ・リトレースメント76.4%戻しの水準154.40レベルを視野に上昇幅の拡大を想定したい。
しかし、急速な円安は突発的な円の買い戻し要因になり得る(シナリオ②)。この場合は、以下で詳述するサポートラインの攻防を意識したい。
レジスタンスライン
・154.40:76.4%戻し
・151.60:予想レンジの上限、61.8%戻し
・151.00:レジスタンスライン
・150.00:心理的節目のライン
・149.38:半値戻し
週間の予想レンジの下限:146.00レベル
今週、ドル円(USD/JPY)の下落局面では、以下にまとめたサポートラインの攻防に注目したい。最初の焦点は、サポートラインへ転換する兆しがある147.00レベルの維持となろう。147.40レベルに10日線が上昇している(18日時点)。
日足のRSIは買われ過ぎの水準付近にある(日足チャート②を参照)。上述した「急速な円安→突発的な円の買い戻し」となれば、146.00レベルを一気にトライする展開を想定したい。147.00レベルと同じくこの水準もサポートラインへ転換する兆しが見られる。
筆者の想定を超える円の買い戻しとなれば、145.00レベルへ急落する可能性がある。50日線が145.16レベルまで上昇している(18日時点)。予想レンジの下限146.00レベルを下方ブレイクする場合は、50日線(145.00レベル)のトライを意識したい。
サポートライン
・147.40:10日線
・147.00:サポート転換の可能性あり
・146.00:予想レンジの下限
・145.00:50日線
ドル円のチャート① 日足:昨年12月以降

出所:TradingView
ドル円のチャート② 日足:昨年12月以降

出所:TradingView
本レポートはお客様への情報提供を目的としてのみ作成されたもので、当社の提供する金融商品・サービスその他の取引の勧誘を目的とした ものではありません。本レポートに掲載された内容は当社の見解や予測を示すものでは無く、当社はその正確性、安全性を保証するものではありません。また、掲載された価格、 数値、予測等の内容は予告なしに変更されることがあります。投資商品の選択、その他投資判断の最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたしま す。本レポートの記載内容を原因とするお客様の直接あるいは間接的損失および損害については、当社は一切の責任を負うものではありません。 無断で複製、配布等の著作権法上の禁止行為に当たるご使用はご遠慮ください。

IG証券のFXトレード
- 英国No.1 FXプロバイダー*
- 約100種類の通貨ペアをご用意
* 英国内でのCFDまたはレバレッジ・デリバティブ取引(英国でのみ提供)での取引実績において、FX各社をメイン口座、セカンダリー口座として使用している顧客の割合でIGがトップ(Investment Trends UKレバレッジ取引レポート 2022年6月)
リアルタイムレート
- FX
- 株式CFD
- 株価指数CFD
※上記レートは参考レートであり、取引が保証されるものではありません。株式のレートは少なくとも15分遅れとなっております。