銀価格予想(9/3):14年ぶり高値、米指標で42ドルも、反落は押し目買いの好機
銀価格は40ドルを突破し14年ぶり高値へ上昇。今週は米指標次第で42ドルが視野に。予想レンジは39.50~42.00ドル。銀価格の上昇要因は?注目のチャート水準は?IG証券のアナリストが分かりやすく解説。

要点
・騰勢を強める銀価格、14年ぶりの高値水準へ上昇
・米FRBの独立性の問題と利下げ期待が銀価格の押し上げ要因に
・安全資産かつインフレヘッジとしての銀需要も意識される状況にある
・銀価格の予想レンジは39.50~42.00ドル(5日まで)
騰勢を強める銀価格、14年ぶりの40ドル台乗せ
銀価格が騰勢を強めている。1日の取引でスポット銀価格は2011年以来となる1オンス=40ドル台に乗せた。2日の市場でも続伸し41ドルが視野に入る。
今年に入り銀価格が下落した月は2月と4月のみ。8月は先物価格が前月比9.5%高、スポット価格(以下、銀価格)が前月比8.2%高の大幅上昇で終えた。ブルームバーグのデータによれば、年初来では41.4%上昇している(9月2日時点)。
銀価格の月次変動率:2025年1月~8月

ブルームバーグのデータで作成
上昇要因はゴールドと同じく「米FRB」
2日のIGコモディティレポートでは金価格について取り上げた。8月相場の上昇、特に8月下旬に上昇幅が拡大した要因として、クック米連邦準備制度理事会(FRB)理事の解任問題が中銀の独立性の問題として意識されていること、8月22日のジャクソンホール会議でのパウエル講演で利下げ期待が高まっていることを挙げた。
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・金価格見通し(9/2):予想レンジ3400~3550ドル、米経済指標下振れならゴールド買い加速か
銀価格のトレンドを日足チャートで確認すると、トランプ米大統領がクックFRB理事の解任を要求した8月20日以降、金価格と同じく銀価格も上昇幅が拡大していることが分かる。
銀価格の日足チャート:4月以降

出典:IG / TradingView / 9月2日までの動向
※チャートの銀価格はセント表記:例 4000=40ドル
需給ひっ迫の思惑と米関税リスクも銀価格を下支え
「米FRB」の材料以外に、銀価格を支える構造的な要因にも注目したい。一つは、需給のひっ迫である。The Silver Instituteの調査によれば、銀の工業用需要は2024年に、太陽光発電向け需要の拡大により過去最高の680.5Moz(前年比4%増)を記録した。2025年の銀需要は1,148.3 Mozと、前年比で1%減が予想されている。しかし117.7Mozの供給不足になると予想され、2021年から5年連続で需要が供給を上回る見通しである。
銀の需要と供給の見通し:2016年~2024年、2025年は予想

出典:The Silver Institute「World Silver Survey 2025」
※Moz:million oz(100万オンス)
トランプ米政権の関税リスクも、銀価格の押し上げ要因として注視したい。米連邦控訴裁判所は8月29日、トランプ政権が発動した相互関税などの措置について、大統領の権限を逸脱し違法であると判断した。この決定に対して米政権は上訴する方針を示している。決着は最高裁までもつれ込むと思われるが、関税を巡る先行き不透明感は財政の懸念(関税による歳入減少の懸念)を高める要因である。事実、昨日の米債市場では20年債や30年債の超長期ゾーン利回りが上昇した。
また、トランプ関税はインフレ再燃の要因でもある。物価など景気の動向を反映して動く10年債利回りは2日の米債市場で、4.3%へ反発する局面が見られた。米関税のリスクは、安全資産とインフレヘッジとしての銀需要を高める要因にもなり得る。
銀価格の見通しとテクニカル分析
予想レンジの上限:42ドル
銀価格の長期トレンドを月足チャートで確認すると、2011年以来の高値水準へ上昇していることが分かる。前述した銀価格の押し上げ要因を考慮すると、2011年8月の高値水準44.23ドルをトライする可能性が出てきた。
銀価格が44ドル台を目指すサインとして、目先は4時間足チャートのレジスタンスラインの攻防に注目したい。最初のラインは、現在上値抵抗線(レジスタンスライン)として意識されている41ドルの攻防である。
銀価格が41ドル台へ上昇する場合は、フィボナッチ・エクステンション161.8%の水準41.48ドルの攻防が焦点となろう。このテクニカルラインも上方ブレイクすれば、42ドルが視野に入ろう。筆者はこのラインを5日までの上限と想定している。
レジスタンスライン:4時間足チャート
・42.00:予想レンジの上限
・41.48:フィボナッチ・エクステンション161.8%
・41.00:レジスタンスライン
予想レンジの下限:39.50ドル
4時間足チャートのRSIとストキャスティクスはいずれも「買われ過ぎ」の水準にある。日足のRSIも同じ状況にある。短期的な上昇の過熱感は否めない。
しかし、2日の米債市場で長期金利が上昇し、外為市場で米ドル買い優勢の展開となっても銀価格は続伸した。この地合いの強さを考えるならば、銀価格の反落局面では押し目買いを考えたい。
銀の押し目買いを仕掛ける水準として注目したいのが、40ドルのラインである。この水準には現在、5日線が上昇している。節目のラインが下値支持線へ転換すれば、地合いの強さを市場参加者に印象付けるだろう。
相場の過熱感が意識されやすい状況で、今日以降の米経済指標が「米金利の上昇→米ドル高」を促す場合、銀価格は40ドルを下方ブレイクする可能性がある。この場合は、7月23日の高値水準39.50レベル(39.52ドル)のトライを想定したい。4時間足チャートを見ると、39.60ドルが下値支持線(サポートライン)へ転換する可能性がある(赤矢印を参照)。また、すぐ下の水準39.50台には10日線が上昇している。39.50レベルを5日までの予想レンジの下限と想定したい。
サポートライン
・40.00:節目のライン、5日線
・39.60:サポートラインへ転換する可能性あり
・39.50:予想レンジの下限、7/23高値、10日線
銀価格の月足チャート:2008年以降

出典:IG / TradingView
※チャートの銀価格はセント表記
銀価格の4時間足チャート:8月19日以降

出典:IG / TradingView
※チャートの銀価格はセント表記
銀価格の日足チャート:今年7月以降

出典:IG / TradingView
※チャートの銀価格はセント表記
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