金価格見通し(9/2):予想レンジ3400~3550ドル、米経済指標下振れならゴールド買い加速か
揺らぐ米FRBの独立性、高まる利下げ期待、騰勢を強める金価格。米経済指標下振れならさらなる上昇も。週間展望と注目のチャート水準についてIG証券のアナリストが分かりやすく解説。

要点
・8月下旬から金価格の騰勢が強まっている
・ゴールド買いの発生源は米FRBの独立性問題と利下げ期待の高まりにある
・スポット金価格の予想レンジは3400~3550ドル
騰勢強める金価格、8月相場は4月以来の大幅高、レンジ脱却のムード
NY金相場が騰勢を強めている。8月の先物価格は5.9%高、スポット価格は4.8%高となった。4月以来の大幅上昇である。先物価格(12月物)は3500ドル台の攻防にある。
スポット価格(以下、金価格)も1日の市場で高値3489.92ドル(IGレート)まで上昇し、4月22日以来となる節目の3500ドルが視野に入る。金価格は、4月以降続いたレンジ相場から脱却するムードが高まっている。
NY金相場 月間の変動率:2025年1月~8月

ブルームバーグのデータで作成
ゴールド買いの発生源は「米FRB」
金価格のトレンドを日足チャートで確認すると、8月下旬を境に騰勢を強めていることが分かる。つまり、ゴールド買いを促す材料があったと見るべきだろう。
スポット金価格のチャート:日足 年初来

出典:IG/ TradingView、9月1日まで
その材料として筆者が注目しているのが、米連邦準備制度理事会(FRB)の独立性に対する懸念と市場参加者が抱く利下げ観測である。
8月20日、アメリカのトランプ大統領は住宅ローン契約を巡る不正疑惑が指摘されたクックFRB理事の解任を要求した。クック氏は不当な解任と主張し裁判所に提訴した。首都ワシントンの連邦地方裁判所は先月29日、審理を開始した。この問題について市場は、米FRBの独立性の信頼性に関わる問題と捉えている。
8月22日のジャクソンホール会議の講演でパウエルFRB議長は、「リスクバランスの変化が政策スタンスの調整を正当化する可能性がある」と述べ、9月利下げの道筋をつけた。雇用の下振れについても言及した。ジャクソンホール講演の後、OIS(オーバーナイト・インデックス・スワップ)市場では9月16日~17日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、米FRBが0.25%の利下げに踏み切ることを織り込んでいる。連続利下げの可能性も意識されている。現状、OIS市場での10月利下げ確率は50%前後で推移している。12月の利下げ確率は80%台にある。
ETFのフローにも大きな動きが見られた。ブルームバーグ・インテリジェンスがまとめたデータによれば、先週(8月25~29日の週)の主要なゴールドETF(主にSPDR Gold SharesとiShares Gold Trust)の資金流入が28億ドル超と、今年2月21日の週以来となる額となった。
ゴールドETFの資金フロー:2025年1月~8月

今週の米経済指標で金価格はさらに上昇も、雇用指標に注目
米FRBの独立性の問題と利下げ観測はどちらも重要な材料である。しかし、米利下げが意識されかつFOMCが控えていることも考えるならば、金価格のトレンドを左右するのは米利下げ観測の方とみる。
前述した連続利下げの観測は、今後の経済指標で大きく揺れ動くだろう。今週は、その観測に大きな影響を与える重要指標が順次発表される。
今日は8月のISM製造業景気指数がある。パウエルFRB議長が雇用リスクに言及してきた以上、総合だけでなく雇用にも注目したい。この点は4日のISM非製造業景気指数も同じである。製造業の雇用は今年の2月以降、景気判断の分かれ目である50を下回る状況にある。非製造業(サービス業)は2か月連続で50を下回り、いずれも雇用は低迷している。
ISM製造業・非製造業景気指数の動向:過去1年間

ブルームバーグのデータで作成 / 赤ドット:8月予想、レポート掲載時点
今週、市場参加者が最も注目するのが5日の8月雇用統計となろう。ブルームバーグがまとめた市場予想を見ると、非農業部門雇用者数変化は前月比7.5万人と、7月の7.3万人からほぼ横ばいの見通しにある。失業率は4.3%へ上昇することが見込まれている。
労働市場の軟化を示す内容は、連続利下げの期待を高める要因となろう。前回のように、これまでの結果の下方修正も重なる場合は、その期待をさらに高めるだろう。利下げ期待の高まりは、「米金利の低下→米ドル安→ゴールド買い」を促すだろう。
雇用統計 各項目の動向:過去1年間

ブルームバーグのデータで作成 / 赤ドット:8月予想、レポート掲載時点
金価格の見通しとテクニカル分析
予想レンジの上限:3550
金価格の焦点は、高値の水準を見極めることにある。目先は、3500ドルの攻防が重要な分岐点となろう。金価格が3500ドルを突破した後、このラインが下値支持線へ転換する場合は、以下で取り上げているレジスタンスラインの攻防に注目したい。
最初の焦点は、4時間足チャートのフィボナッチ・エクステンション100%水準3538レベルである。このテクニカルラインを上方ブレイクする場合は、3550ドルの攻防を想定したい。先週の終値3448ドル(IGレート)から約100ドル上の水準にあたるこのラインを、今週の予想レンジの上限と想定したい。
上で述べた米経済指標の内容次第では「米金利の低下→米ドル安」がさらに進行する可能性がある。筆者の想定を超えるゴールド買いが見られる場合は、次の節目のライン3600ドルを視野に上昇幅の拡大を予想する。
レジスタンスライン
・3600:心理的節目のライン
・3550:予想レンジの上限
・3538:フィボナッチ・エクステンション100%
・3500:最高値、節目のライン
予想レンジの下限:3400
4時間足チャートのRSIとストキャスティクスはともに金価格が「買われ過ぎ」にあることを示唆している。日足のRSIも同じ状況を示唆している。8月下旬以降、上昇幅が拡大している状況も考えるならば、今週の米経済指標で景気不安、特に労働市場の下振れ懸念が後退する場合は、「米金利の反発→米ドルの買い戻し→金価格の調整売り」を予想する。
5日までの予想レンジの下限を3400ドルと想定したい。この節目のラインが下値支持線に転換すれば、地合いの強さを市場参加者に印象付けるだろう。現在、10日線が3400ドルのラインへ上昇している。テクニカルの面でも3400ドルの攻防に注目したい。5日線の下方ブレイクは、3400ドルをトライするサインとなろう。この移動平均線は現在、3437ドル付近で推移している。
米経済指標の内容次第では、筆者の想定を超える調整売りに直面する可能性がある。金価格が3400ドルを下方ブレイクする場合は、下値支持線に転換する可能性がある3375のトライを想定しておきたい(4時間足チャート)。
サポートライン
・3437:5日線
・3400:節目のライン、10日線
・3375:下値支持線へ転換する可能性あり
金価格のチャート:4時間足 7月下旬以降

出典:IG / TradingView
金価格のチャート:日足 4月以降

出典:IG / TradingView
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