ポンド円相場は米国のイラン攻撃を機にポンド高が進行。原油高がBOEの利下げ見通しを縮小させた。ただ、利上げのハードルは高い。
ポンド円相場でポンド高が進行している。ポンド円相場は日本時間11日の取引で1ポンド=212円台で推移。約3週間前から5円を超えるポンド高水準となっている。イラン情勢の劇的な悪化が引き起こした原油価格上昇が、イングランド銀行(BOE)の利下げ見通しを縮小させたことが要因だ。これに対して、日本銀行の金融政策をめぐっては、急激な原油高にも関わらず利上げへの期待に大きな変化はなく、ポンド円相場でのポンド高の背景になっている。ただ、イギリスの長期金利は先進国内で最高水準にあり、物価抑制のための利上げに踏み切れば、経済活動を冷やしすぎるリスクが大きくなりかねない。このため今後のポンド円相場の見通しは、BOEが物価上昇に関して示す危機感の強さで左右されそうだ。
ポンド円相場(GBP/JPY)は日本時間11日午後2時51分段階で1ポンド=212.70円で取引されている。ブルームバーグによると、午後1時台につけた212.89ドルは、17日につけた直近の安値(207.24円)からは5.65円のポンド高水準だ。ポンド円相場は2月4日につけた1ポンド=215.01円で、2008年7月24日(215.85円)以来、17年6か月ぶりのポンド高水準をつけた後、2月8日の衆議院選挙での自民党の地滑り的勝利を受けた円高でポンド安に反転していたが、改めて流れが一変した。
ポンド円相場でポンド高が進んだきっかけはアメリカとイスラエルによるイラン攻撃が招いた原油価格の上昇だ。原油先物市場の指標価格であるWTI(翌月渡し、WTI原油)は日本時間9日の取引で1バレル=119.48ドルをつけ、原油高が物価高につながるとの見方がBOEの利下げ見通しを後退させた。ブルームバーグによると、10日の金融市場では、19日に結果が発表されるBOEの金融政策委員会後の政策金利の水準は3.696%と見込まれており、イラン攻撃前日にあたる2月27日段階の見通しから0.185%ポイント上昇した。利下げ確率は13%程度で、27日段階の86%程度から急減している。
BOEは2月5日に2会合ぶりの政策金利維持を発表したが、9人の金融政策委員のうち4人は利下げを主張するという僅差での決定。このため金融市場ではBOEが今後も利下げを続けるとの見方が優勢だった。それだけにイラン攻撃後にBEOの利下げ見通しが大きく後退したことの金融市場への影響が大きくなったといえそうだ。
これに対して日銀の金融政策をめぐっては、見通しに大きな変化は出ていない。ブルームバーグによると、金融市場で見込まれている4月の金融政策決定会合後の政策金利の水準は11日午後2時51分段階で0.880%。2月27日の0.900%からほぼ横ばいといえる水準だ。利上げ確率は61%程度で、27日段階での69%程度からやや低下している。日銀はイラン攻撃前から利上げが見込まれていたため、原油高に対する金融市場の反応は小さかったもようだ。
こうした中、イラン攻撃後のFX市場で有事のドル買いが進む中でも、ポンドには底堅さも感じられる。ポンドの対ドル相場(GBP/USD)の10日のニューヨーク市場での終値は、2月27日との比較では0.47%のポンド安。ユーロの対ドル相場(EUR/USD)が1.70%のユーロ安、円の対ドル相場が1.27%の円安となっていることと比べ、下落率は小さい。一方、オーストラリア中銀は物価上昇加速を受けて2月に利上げを決定済みで、豪ドルの対ドル相場(AUD/USD)は同じ期間で0.03%の豪ドル高となっている。
ただ、BOEが今後、利上げに踏み切ることができるかどうかには不透明感もありそうだ。ブルームバーグによると、英国の長期金利(10年物国債利回り)は10日段階で4.554%高となっており、先進国としてはオーストラリアの4.847%と並ぶ高さ。米国の4.156%に加え、ドイツの2.834%や日本の2.170%を上回っている。BOEが実際に利上げに踏み切れば、経済活動を冷やしすぎるリスクが膨らむ懸念もありそうだ。
このためBOEの今後の情報発信で利上げへの慎重姿勢が感じられれば、ポンド高進行にブレーキがかかる可能もある。逆にBOEが物価上昇への警戒感を強めた場合には、ポンド高進行が勢いづく展開もありえそうだ。