トヨタ、株価下落圧力増す 円高や高関税不安 収益悪化見通し拭えず
トヨタの株価は5日に2.72%安の下落。円高やトランプ関税が重荷だ。一方、トヨタは米国での値上げには慎重で収益悪化懸念にも直面している。

トヨタ自動車の株価が下落圧力にさらされている。5日の終値は前日比2.72%安。6月に入ってからは4.28%安という冴えない値動きで、株価上昇への期待は高まっていない。トヨタ自動車の業績をめぐっては、ドル円相場が1年前よりも大幅な円高で推移していることが重荷。また、アメリカのドナルド・トランプ大統領による高関税政策の悪影響が、これから拡大していく可能性があることも投資家心理を暗くしている。一方、トヨタは高関税に直面しながらも、米国内での値上げは慎重に検討する考えで、これまで積み重ねてきた収益力の改善を生かして逆境に立ち向かう戦略を描く。ただ、円高やトランプ関税といったトヨタをめぐる経営環境に好転の兆しはなく、値上げを見送る戦略が収益性の悪化につながったと受け止められれば、株価に対する下落圧力が増すことも考えられる。
トヨタの株価は5日に2.72%急落 1か月前の決算発表から冴えない値動き
トヨタ自動車の株価(7203)の5日の終値は2650.5円。約1か月前の決算発表前日にあたる5月7日の終値(2706円)との比較では2.05%安で、冴えない値動きが続いている。トヨタの2025年1-3月期決算は総収入が前年同期比11.7%増の12兆3631億円、営業利益が1兆1160億円だった。ブルームバーグがまとめた直前の市場予想は、総収入が12兆1362億円、営業利益が1兆1644億円。発表された結果は、総収入が市場予想を超える一方、営業利益は予想を下回る結果だった。

ムーディーズがトヨタの格付け見通し変更 豊田自動織機の非公開化で流動性懸念
トヨタの株価は6月に入ってからも悪材料にさらされ、5日終値は5月末比で4.28%安だ。5日の下落は前日に格付け会社のムーディーズ・ジャパンがトヨタの格付け見通しを「ポジティブ」から「安定的」に変更したことが影響。ムーディーズは見通し変更について、トヨタが3日に発表したグループ内でフォークリフト事業などを手がける豊田自動織機(6201)の非公開化で、トヨタの自動車事業における足元の現金や現金同等物が減少することを理由に挙げている。また、トヨタの株価は2日の取引でも前週末比2.82%安と急落していた。トランプ氏が5月30日に鉄鋼やアルミニウムの輸入に対する関税を50%とし、現行の25%から引き上げると表明したことが、自動車各社にとってのコストアップになるとの懸念を強めた。

トヨタの2026年3月期見通しは期待外れ 円高とトランプ関税が重荷に
トヨタの業績に対する不安は、トヨタ自身が示した2026年3月期の見通しにも表れていた。トヨタは5月8日の決算会見で、2026年3月期の業績について、総収入が前年同期比1.0%増の48兆5000億円、営業利益が20.8%減の3兆8000億円との見通しを提示。ブルームバーグがまとめた事前予想では、総収入が48兆9400億円程度、営業利益が4兆6800億円程度が見込まれていたことを踏まえれば、トヨタが示した見通しは期待外れの内容だったといえる。
トヨタが2026年3月期について慎重な見通しを示した最大の理由は為替相場の動向だ。トヨタは2026年3月期のドル円相場(USD/JPY)の水準を1ドル=145円と想定。2025年3月期の実績である153円程度から大きく円高が進むとみている。決算会見では、円高の結果として営業利益は7450億円下押しされると説明した。また、トランプ氏が4月に自動車輸入に対する25%関税を発動させたことも当然、利益の下押し要因だ。トヨタは自動車関税の税率がどの水準で落ち着くかは見通せないとの理由から、業績見通しでは4月と5月の2か月で利益が1800億円下押しされることだけを見込んでいるが、今後、悪影響が拡大する恐れは拭えない。
トヨタは米国内での値上げには慎重 4月の販売は中国や日本でも好調
一方、トヨタは業績への逆風の強まりが懸念される中でも、米国内での値上げには慎重だ。宮崎洋一副社長は決算説明会で、「関税があるから値上げをするとか、そういう場当たり的な対応はトヨタとしてはとらない」と述べている。宮崎氏は新型コロナウイルス禍以降に収益構造改善を進めた結果、トヨタが自動車1台を販売することで生み出す利益は、2021年3月期と2025年3月期との比較では1.6倍になったと説明。2025年3月末段階で手元資金が14兆4000億円あることも踏まえ、「じたばたしなければならない状態にはない」とした。
またトヨタの4月のグループ総販売台数は前年同月比12.2%増の93万6718台。高関税を警戒した駆け込み需要があった米国が10.0%増となっただけでなく、中国も20.8%増、日本も11.8%増と好調だった。中国は政府の補助金政策と連動した販売促進策が成果を挙げ、日本では認証問題やリコールの影響がなくなったことが前年比での成長につながったという。

外部経営環境に改善の兆しなし 進展次第では業績見通しの下方修正も
とはいえ、トヨタをとりまく外部的な経営環境に改善の兆しはない。ドル円相場は足元では、トヨタが想定する1ドル=145円を超える円高水準で推移。日米間の関税協議では、すべての関税の撤廃を求める日本側と、鉄鋼やアルミニウムへの関税を倍増させたトランプ政権との間の溝は深いとみられ、赤沢亮正経済再生担当相が5-8日に訪米して行われる5回目の閣僚交渉も決着の見通しは立っていない。また好調な自動車販売も、米国市場では4月までの駆け込み需要の反動がどこかのタイミングで出ることは避けられなさそうだ。さらに中国がレアアースの輸出を制限していることも、ハイブリッド車のモーターなどのサプライチェーンに悪影響を及ぼす可能性がある。
このため、今後の経営環境の進展次第で、トヨタが2026年3月期の業績見通しの下方修正を迫られることも考えられる。トヨタの株価の今後の見通しは、急激な円安といった追い風が吹かない限りは、下落圧力にさらされ続ける展開が想定されそうだ。
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