米国株、波乱リスク継続 S&P500続落 トランプ氏がイランに圧力
S&P500は3日続落。トランプ氏のイランに対する強硬姿勢は原油価格の上昇を加速させた。投資家の悲観は強まっており、波乱リスクが続いている。
アメリカの株式市場が緊張感に包まれている。S&P500種株価指数の30日の終値は3営業日続落の前週末比0.39%安。最高値からは9%超の値下がりとなり、調整局面入りが視野に入ってきた。ドナルド・トランプ大統領は30日、イランでの戦争について強硬姿勢を改めて示し、原油価格は大きく上昇。S&P500の牽引役であるはずの大手ハイテク株への期待も低下が進み、株価の見通しに対する投資家の悲観が強まっている。一方、米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長は30日、物価上昇への過度な警戒から距離を取る姿勢を示唆。金融市場ではFRBが利上げを迫られるとの見方が後退しており、株価にとっては一定の安心材料といえそうだ。ただ、トランプ氏がイランの発電所などへの攻撃に踏み切れば、戦争長期化への懸念が投資家心理を大きく揺さぶる可能性がある。中東からの原油供給途絶は米国を含む世界経済にとって大打撃となるだけに、S&P500の見通しには波乱が起きるリスクが続いているといえそうだ。
アメリカのS&P500は3営業日続落 最高値から9.10%安
S&P500(SPX)の30日の終値は6343.72。3営業日続落の間に3.76%安となり、2025年8月7日(6340.00)以来の安値となった。1月27日につけた最高値(6978.60)からは9.10%安で、上昇基調が崩れたことを意味する「調整局面」の基準とされる10%安の水準が近づいてきた形だ。
トランプ氏がイランに圧力 WTIは一時106.86ドルまで上昇
S&P500を下押ししてきたイラン戦争をめぐる不安は30日も高まった。トランプ氏は30日朝(日本時間30日夜)、自身のSNSトゥルースソーシャルへの投稿で、イランの「新しい、より合理的な判断ができる体制」と戦争終結に関する真剣な協議を行っていると言及。合意に楽観的な見方を示しつつも、石油の重要通商ルートであるホルムズ海峡の即時開放などに至らなければ、イランのすべての発電所、油井、原油の輸出拠点であるカーグ島を吹き飛ばし、「完全に破壊する」とした。
トランプ氏がイランへの圧力を強める中、原油価格の上昇は加速している。ブルームバーグによると、原油先物市場の指標価格であるWTI(5月渡し、WTI原油)の30日のニューヨーク市場での終値は前日比3.25%高の1バレル=102.88ドル。イラン戦争開始後の終値として初めて100ドルを超え、2022年7月19日(104.22ドル)以来、3年8か月ぶりの高値を更新した。日本時間31日午前8時台には106.86ドルをつける場面も出ている。
マグニフィセント・セブン指数は最高値から17.69%安 好業績見通しでも株価急落
こうした中、30日の株式市場ではS&P500への影響度が大きい「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる大手ハイテク7社の不振が深まった。電気自動車(EV)大手のテスラ(TSLA)は前週末比1.81%安で、3営業日続落の間に7.97%安。半導体大手のNVIDIA(エヌビディア、NVDA)も3営業日続落の1.40%安で、合計7.56%安となっている。BITA社が7社の株価に基づいて算出するマグニフィセント・セブン指数(MAGSEVEN)も同様に30日までの3営業日続落で5.46%安となっており、10月29日の最高値からの下落率は17.69%安まで広がっている。
大手ハイテク株の下落がS&P500の足を引っ張っている背景には、株価の見通しに対する投資家の悲観がある。ブルームバーグが算出した株価と今後12か月の予想1株当たり利益(EPS)の比率を示す株価収益率(PER)を、30日段階とマグニフィセント・セブン指数が最高値をつけた10月29日段階で比較すると、7社すべてが低下。エヌビディアの場合、予想1株当たり利益が44%増えているにも関わらず、株価は20%下落しており、予想PERは10月29日の36.1倍から3月30日の20.0倍まで下がっている。このほか、アルファベット(GOOGL)、マイクロソフト(MSFT)、アップル(AAPL)、アマゾン・コム(AMZN)も予想1株当たり利益の増加と株価下落が同時に起きており、悲観的な投資家が好業績企業の株を売り続けている様子がみてとれる。
パウエル氏が物価上昇加速への過度な警戒から距離 年内利上げ見通しが後退
一方、30日にはFRBの利上げ見通しの後退というS&P500にとっての好材料も出た。FRBのパウエル議長が30日のハーバード大学でのイベントで、利上げから距離をとったためだ。ブルームバーグによると、パウエル氏は金融市場や消費者らの間で見込まれている予想インフレ率について「安定している」と言及。イラン戦争がもたらしている原油高が物価上昇を加速させる展開への対応が求められる可能性を認めながらも、現段階ではそうした事態には至っていないとした。パウエル氏の発言を受けた30日、金融市場で見込まれている12月の連邦公開市場委員会(FOMC)後の政策金利の水準は3.614%まで下がった。26日段階での3.789%からは0.175%ポイント低い水準で、現状の政策金利(3.50-3.75%、中間値3.625%)を下回っている。
VIX指数は2営業日連続での30超え イラン戦争の展開次第で見通しに波乱も
ただ、トランプ氏がイランの発電所への攻撃を手控える期限としている「米国東部時間4月6日午後8時」に向けた緊張が金融市場で続いていることは確かだ。シカゴ・オプション取引所によると、ウォール街の「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数(VIX)の30日の終値は30.61で、2営業日連続で30を超えた。VIXはS&P500のオプション取引の動向から算出され、値が大きいほど、今後の値動きが荒くなることへの警戒が強いことを示す。
トランプ氏がイランへの大規模な攻撃に踏み切ったとしてもイランがホルムズ海峡封鎖を解除するとは限らない。原油の供給途絶が長期化すれば、輸入国の経済への大打撃になるほか、原油価格の上昇はガソリン価格の上昇を通じて米国の経済活動も下押しする恐れがある。このためイラン戦争の今後の展開次第では、世界経済の見通しをめぐる懸念の急激な強まりがS&P500にさらなる波乱をもたらすリスクがありそうだ。
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