【NY金】今週は荒れ相場を警戒、米中の通商交渉と米経済指標にらみ 金価格の見通し
今週のスポット金価格は、米中交渉の報道とアメリカ経済指標で上下に振れる荒れ相場を警戒したい。

記事のサマリー
スポット金価格の上昇相場を支えてきた米中貿易摩擦の懸念がひとまず後退ムードにある。米国株の反発とゴールドETFへの資金流入が細っている状況も考えるならば、今週もゴールドの調整売りを意識したい。しかし、米中交渉は紆余曲折が予想される。予想変動率の高止まりも考えるならば、今週の金価格は米中交渉の新たな報道で上下に振れる荒れ相場を警戒したい。米国の経済指標も変動要因となろう。金価格の上昇局面では3,400ドルの攻防に注目したい。調整売りが進行する場合は、3,150ドルの維持が焦点となろう。
米中懸念後退でNY金は調整売りを意識する局面にあるが
米中の貿易摩擦が緩和に向かう観測が高まり、先週の米株式市場では主要指数が上昇して終えた。マグニフィセントセブンの買い戻しで、ナスダック指数は6%超の大幅反発で終えた。米債市場では「悪い金利の上昇」が一服し、10年債利回りは4.2%台へ低下している。ゴールド買いを支えてきた米中対立の懸念が後退している今の状況は、スポット金価格の調整売りを促す要因となろう。
ブルームバーグ・インテリジェンスのデータによれば、ゴールドETFのなかで資産規模が大きく、かつ流動性が高いSPDRゴールド・シェアへの資金流入は、トランプ関税による貿易摩擦のリスクが最も意識された4月の第2週目をピークに資金の流入が細り、先週は流出となった。米中対立の緩和を期待させる報道が続く場合、今週もゴールドの調整売りを想定したい。だが直近の報道を見る限り、米中の通商交渉は紆余曲折が予想される。
SPDRゴールド・シェア 週間の資金フロー:年初来

ブルームバーグ・インテリジェンスのデータで筆者が作成
不透明な米中交渉、高止まりの予想変動率、荒れ相場を警戒
スコット・ベッセント米財務長官は28日、米経済専門CNBCの番組で、中国の対米輸出は米国の対中輸出の5倍に上り125%や145%の関税は持続不可能である、緊張緩和は中国次第と述べた。
中国が一部の米国製品を関税対象から除外することを検討しているとの報道がある。しかし中国外務省は28日、トランプ米大統領が言及した首脳同士の電話会談はなく、米国と関税を巡る合意の締結を目指している事実もないと述べた。一連の動きは、米中交渉が難航する可能性を示唆している。交渉の不透明感を伝える報道が続けば、金価格は再び上昇しよう。
今後の米中交渉で金価格の変動幅が拡大する可能性を示唆しているのが、高止まりする予想変動率である。昨年3月から4月にかけての金価格の上昇局面では、1ヶ月の予想変動率が18%台まで上昇した。昨年8月のリスク回避の局面でも同じく18%台まで上昇した。そして3,500ドルに到達した今回の急騰局面では、一時23.7%まで予想変動率が上昇する局面が見られた。本レポート掲載時点で予想変動率は20%付近で高止まりしている。
これまでは金価格と予想変動率の上昇が連動してきた。ゆえに金価格は、3,500ドルを視野に急反発する可能性がある。しかし、今の金価格は調整売りに直面し上値が重い。この状況で予想変動率が高止まりしている。米中対立の緩和期待が高まる場合、今週の金価格は整売りが進行する展開も想定しておく必要があろう。
金価格の予想変動率:2024年以降

ブルームバーグのデータで筆者が作成
金価格の見通しと注目のテクニカルライン
米経済指標も変動要因に、調整局面での焦点は3,150ドルの維持
金価格の動向を日足チャートで確認すると、10日線がレジスタンスラインとして意識されている。MACDはデッドクロスへ転じ、DMIも強気地合いの勢いが衰え始めていることを示唆する動きにある。
また4時間足チャートでは、変則的ながらもヘッドアンドショルダーを形成しつつある。3,280ドルを完全に下方ブレイクする場合は、半値戻しの水準3,235ドルのトライを想定したい。このテクニカルラインの下方ブレイクは、日足の一目基準線と20日線のトライを想定したい。これらのテクニカルラインをも下方ブレイクすれば、3,200ドルの攻防が焦点となろう。
米中懸念の後退の他、今週はアメリカの経済指標も金価格の変動要因となろう。今日は4月の消費者信頼感指数が発表される。ブルームバーグがまとめた予想は88.0と、前月の92.9から低下の見通しにある。さえない予想であるがゆえに結果が予想外に上振れる場合は、一時的にせよ市場が警戒する景気不安の後退要因になり得る。この点は、5月1日の4月ISM製造業景気指数にも言える。ブルームバーグがまとめた予想は48.0。前月から1ポイント低下の見通しにある。
5月2日に市場参加者が注視する4月の雇用統計が発表される。米中交渉で緩和期待が高まり雇用統計で労働市場の底堅さが示される場合は、金価格の3,200ドル割れを想定したい。このケースでは、3,150~3,170ドルがサポーゾーンとして相場を下支えする展開を想定したい(4時間足の赤ゾーンを参照)。レンジの下限3,150ドルを週間の予想レンジ下限と想定したい。日足の半値戻しの水準3,166ドルの下方ブレイクは、3,150ドルをトライするサインとなろう。
米国の雇用統計 各項目の推移:直近1年間

ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 赤の棒グラフとドット:4月の予想
サポートライン
・3,245:38.2%戻し(日足)
・3,235:半値戻し(4時間足)
・3,228:一目基準線、20日線(日足)
・3,172:61.8%戻し(4時間足)
・3,166:半値戻し(日足)
・3,150:予想レンジの下限(4時間足)
上昇の局面では3,400ドルの突破が焦点に
米中交渉の不透明感を伝える報道があれば、金価格は以下にまとめたレジスタンスラインを視野に買い優勢の展開を想定したい。上で述べたアメリカの経済指標で景気不安が強まれば、24日のIGコモディティレポートで取り上げた3,400ドルのトライが焦点となろう。このラインを今週の上限と想定したい。
金価格が3,400ドルをトライするサインとして10日線(3,338ドル付近)、現在レジスタンスラインとして意識されているヘッドアンドショルダーの「ショルダー」にあたる3,360ドル、そして一目転換線(3,380ドル)の攻防に注目したい。転換線の突破は、3,400ドルをトライするサインと考えたい。
レジスタンスライン
・3,400:レジスタンスライン
・3,380:一目転換線(日足、4/29時点)
・3,360:レジスタンスライン(4時間足)
・3,338:10日線(日足、4/29時点)
金価格のチャート
日足:今年の2月以降

出所:TradingView
4時間足:4月以降

出所:TradingView
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