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【2024年 外為市場の展望】米ドル安を意識する1年に

インフレの進行と米連邦準備制度理事会(FRB)の金融引き締め政策を受け、直近2年間の外為市場では、米ドル高のトレンドが続いた。しかし2023年11月以降、そのトレンドに転換のムードが出始めている。2024年、FRBは利下げ政策へ転換することが予想される。この政策転換は、米ドル相場がこれまでの上昇トレンドから下落トレンドへ転じる要因となろう。ゆえに2024年は、米ドル安トレンドを意識する1年になることが予想される。

出所:ブルームバーグ 出所:ブルームバーグ

サマリー

・2024年の外為市場は、米ドル安トレンドを意識する1年になると予想する
・その理由はインフレの鈍化と景気リスク、そしてFRBの政策転換にある
・政治面では、トランプ前大統領の再選が米ドル安の要因になり得る
・米ドル安シナリオを崩す要因として、2つのことに注目したい


米ドル安の要因 その1:FRBの政策転換

2024年の外為市場が米ドル安トレンドを意識する1年になると考える理由は、主に3つある。以下、順を追って解説していく。

第一に考えるべきは、直近2年間の米ドル高トレンドを支えてきた主因が何か?である。

それは、米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げ政策だった。インフレ抑制のためFRBは2022年3月に利上げを開始。2023年7月の連邦公開市場委員会(FOMC)までに政策金利(FFレート)は、5.25-5.5%へと急速に引き上げられた。

2021年以降に始まった米ドル高のトレンドについて、米ドル相場の大まかなトレンドを表すドルインデックス(DXY)で確認すると、90ポイント台から、22年9月に一時114.70ポイント台まで急騰する局面が見られた。2021年から22年にかけての上昇率は15%となった(20年末の終値比)。

しかし、ドルインデックスは2023年10月を境にトレンドの転換ムードが高まり、11月の中旬以降、米ドル安トレンドが進行する状況にある。

ドルインデックスのチャート:日足 23年7月以降

ドルインデックスのチャート:日足 23年7月以降 TradingViewが提供するチャートで作成


昨年の11月以降、米ドル高の圧力が後退したきっかけは、インフレの鈍化にあった。昨年11月14日に発表された10月消費者物価指数(CPI)でインフレが鈍化の傾向にあることが確認された。

これをきっかけに、各市場では米国のインフレが鈍化の傾向を辿るとの観測が高まり、実際にその後のインフレ指標ではこの状況が確認された。

インフレ鈍化の期待を受け、米債市場では長期ゾーンの利回りが低下のトレンドへと転じている。

この動きに追随し、ドルインデックスの下落幅も拡大していることが分かる(上の日足チャートを参照)。

米金利のチャート:日足 23年10月以降

米金利のチャート:日足 23年10月以降 TradingViewが提供するチャートで作成


2023年12月14日、米連邦連邦公開市場委員会(FOMC)の参加者が予想する最新の経済予想が公表された。

そのなかで、2024年末にコアPCEインフレ率は、2.4%まで低下する見通しが示された。今後、景気が予想外に底堅さを維持する場合は、FOMC参加者の期待通りにインフレが鈍化しないリスクが残る。

しかし、インフレの鈍化を阻む要因として注目されたサービス価格は低下の基調にある。この動きに連動し、コアインフレ率も低下のトレンドを辿っている。

今後、利上げ政策の影響が景気にジワリと浸透していく可能性があることも考えるならば、インフレは緩やかな鈍化の傾向を維持することが予想される。

米国 コアインフレ率の推移:月次 2021年以降

米国 コアインフレ率の動向:月次 2021年以降 ブルームバーグのデータで作成

米ドル安の要因 その2:景気の先行き懸念

2024年もインフレが鈍化の傾向を維持すると考えられる理由のひとつが、米国経済の動向である。

米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は2023年12月FOMC後の定例会見で、利下げのタイミングについて議論したと述べた。

パウエルFRBが利下げ政策への転換を模索する理由は、2つあると考えられる。

ひとつは、上で述べたインフレが鈍化の傾向にあることだ。

そしてもうひとつの理由が、景気の先行き懸念である。

FRBの金融政策と景気の動向で注目すべきは、景気後退(リセッション)との関係である。

この点について、ニクソン・ショック(ニクソン米大統領が米ドルと金の兌換一時停止を発表)があった1971年以降のデータで確認すると、1990年以前は利下げと景気後退(リセッション)のタイミングが重なっていることが分かる(下のチャート、赤ゾーンを参照)。

そして1990年代以降は、利下げが開始された後に米国の経済が景気後退(リセッション)に陥っていることが分かる(下のチャート、紫ゾーンを参照)。

上で述べた利下げと景気後退(リセッション)入りの関係を考えるならば、2024年は利下げ開始後に景気の減速が進行し、そして景気後退(リセッション)入りする可能性がある。

米国 政策金利の動向と景気後退の関係:1971年以降

米国の政策金利と景気の関係:月次 1971年以降 ブルームバーグのデータで作成 / FFレート:上限と下限のミドルレート / 紫・赤ゾーン:景気後退の局面


米国経済の減速要因として今年注目したいのが、個人消費の減少である。

これまで米国の個人消費を支えてきたのは、コロナ・パンデミックの対策として実施された計3回の現金給付だった。

しかし2021年以降、家計の貯蓄率は低下の一途を辿っている。その一方、NY連銀のデータによればクレジットカードの延滞率は上昇の傾向にある。そして2023年10月には、約3年半にわたり猶予されてきた学生ローンの返済が再開された。

家計の金銭的な余裕がなくなる2024年は、個人消費が減少することが予想される。米国経済のけん引役である個人消費の減少は、景気の減速そして後退(リセッション)の要因になり得る。

米国 貯蓄率の動向:月次 2019年以降

米国 貯蓄率の動向:月次 2019年以降 ブルームバーグのデータで作成


短期金融市場では現在、2024年3月にもパウエルFRBが利下げ政策へ転じる可能性を織り込んでいる。

しかもその幅は、2023年12月のドット・チャートで示された4.6%をはるかに下回り、2025年末予想の3.6%を視野に入れる状況にある。つまり市場参加者は今年、FRBによる6回の利下げを織り込む状況にある。

短期金融市場の予想する通りの利下げペースとなるのかどうか?この点を見極めるうえで重要となってくるのが、米国経済が後退局面(リセッション)に直面するのかどうか?もし直面する場合、その “深度” はどの程度となるのか?これらの点となろう。

多くの市場参加者は、2024年の米国経済が減速することを予想している。しかし、景気後退(リセッション)については見解が分かれている。仮に米国経済が景気後退(リセッション)入りし、それが深く長く続くとの観測が高まれば、短期金融市場で意識されている利下げペースが外為市場で強く意識されることが予想される。このケースでは急速に米ドル安のトレンドが進行することが予想される。

一方、米国経済が景気後退(リセッション)に陥っても、それが浅く短期間で終わる場合は、現時点で短期金融市場が想定するペースよりも緩やかな利下げが予想される。このケースでも米ドル安を想定する必要はある。しかし、深い景気後退(リセッション)に直面ケースとするケースと比べれば、米ドル安の進行は限定的となることが予想される。

米国 政策金利の予想推移

米国 政策金利の予想推移 ブルームバーグのデータで作成 / 1月4日 7時時点の予想

米ドル安の要因 その3:トランプ前大統領の返り咲き

米国経済の先行き懸念とFRBによる政策転換により、2024年の外為市場では米ドル安のトレンドが進行すると筆者は予想している。

では、政治の面で米ドル安の要因となりうる材料は何か?

この点について筆者が考えるその要因は、ドナルド・トランプ前大統領の再選である。

2024年11月5日に米国の大統領選挙が行われる。前政権下でトランプ氏は米ドル安を志向した経緯がある。トランプ氏が大統領として在任した間の米ドル相場は上昇が限られたが、下落一辺倒のトレンドを形成することはなかった(下のチャートを参照)。

しかし、今年の大統領選挙で同氏がホワイトハウスへ返り咲き、再び米ドル安政策を推し進める場合、外為市場では米ドル安が進行する可能性がある。

そう考える理由は、上で述べた米ドル安の要因1と2である。

今年はインフレが鈍化の傾向を辿り、かつ景気が減速することが予想される。FRBの利下げ開始後に景気後退(リセッション)に陥る可能性もある。

いずれにせよ景気の先行きリスクが高まれば、パウエルFRBは利下げ政策で対応するだろう。

利下げ政策への転換が予想されているタイミングで、米ドル安を志向する可能性のあるトランプ前大統領がホワイトハウスに返り咲けば、政治の面でも外為市場の参加者は、米ドル安を意識せざるを得ない状況に直面することが予想される。

ドルインデックスのチャート:月足 2016年10月~2020年12月

ドルインデックスのチャート:月足 2016年10月~2020年12月 TradingViewが提供するチャートで作成

米ドル安シナリオを崩す要因

要因その1:インフレが鈍化しないリスク
上で述べきたとおり、2024年の外為市場について筆者は米ドル安シナリオを想定している。

このシナリオを崩す要因として注視すべきが、パウエルFRBの予想どおりに「インフレが鈍化しないリスク」である。

今年、インフレの鈍化を阻む要因として注目したいのが、米国経済の「しぶとさ」である。

今年の米国経済について筆者は、年の半ばから後半にかけて景気リスクが意識される状況に陥ると予想している。ゆえに、米ドル安のシナリオを崩す要因としては、今年1年を通して景気が底堅さを維持することが挙げられる。

実際に米国の景気が底堅さを維持する場合、インフレの鈍化を阻む要因になりうる。そして外為市場ではFRBによる利下げ観測が後退しよう。

今年、インフレの鈍化を阻む可能性のあるもうひとつの要因が、米政府による対中半導体の規制強化である。

レモンド米商務長官2023年12月21日、米CNBCに出演し、中国から輸入する半導体の関税引き上げが選択肢の一つと述べた。

米商務省は2024年1月から「レガシー半導体」と呼ばれている、最先端ではないが企業の生産活動にとって重要な半導体の中国依存度について調査を開始するという。

安価な中国製半導体への関税が引き上げられる場合、それらを使うあらゆるモノの価格に上昇の圧力が高まる可能性がある。

対中貿易についての政策は、今年の米大統領選挙の主要な争点の一つに浮上している。米国内の政治事情も考えるならば、米政府による対中規制の動きはさらに強まることが予想される。

米中対立を受けてインフレがFRBの期待通りに鈍化しない場合は、やはり米利下げ観測を後退させる要因となろう。

利下げ観測の後退は、米ドルの買戻し要因となることが予想される。

要因その2:米国と欧州の景況感格差
米ドル安シナリオを崩すもうひとつの要因が、米国と他国との景況感格差である。このケースは要因1とも関係し、特に米欧の景況感格差に焦点があたる可能性がある。

景気動向を考える上で重要な経済指標のひとつである購買担当者景気指数(PMI)の推移を確認すると、ユーロ圏では製造業とサービス業が、景気判断の分かれ目とされる「50」を下回る状況にある。ゆえに総合指数も50を下回っている。

一方、米国は製造業の不振をサービス業が補い総合指数は50を上回る状況にある。

今後、景気の先行きを予想するうえで重要となる経済指標で、ユーロ圏の景気懸念と米国の景気の底堅さが確認される場合は、対ユーロで米ドル相場は底堅さを維持する展開が予想される。

ユーロ圏経済の不振が続く場合、その影響は英国経済にも波及しよう。ゆえに、景況感格差の勝負となれば、対英ポンドでも米ドルは底堅さを維持するシナリオを想定しておく必要がある。

米国とユーロ圏 購買担当者景気指数(PMI)の動向:月次 2022年

米国とユーロ圏 購買担当者景気指数(PMI):月次 2022年 ブルームバーグのデータで作成

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