NY金見通し(6/17):3320-3450予想 急変の中東情勢、FOMCに注目
イランが緊張緩和を模索。急変の中東情勢。16日の金価格は急反落で3,400ドル割れ。今週は米FOMCも焦点に。金価格の見通しと注目のテクニカルラインについてIG証券のアナリストが解説。

要点
・イランが緊張緩和を模索、原油先物価格が急反落、米国株は上昇
・中東懸念によるゴールド買いは短期で終息する可能性がある
・FOMCにも注目、焦点はパウエルFRB議長の政策姿勢
・金価格の予想レンジ(20日まで):3,320-3,450ドル
NY金が急反落、イランが緊張緩和の意向を示唆
先週13日にイスラエルがイランの核施設を爆撃した。イランも弾道ミサイルで応戦。中東の地政学リスクは安全資産としての金(ゴールド)買いの需要を強め、先週(6月9-13日)のNY金相場は2週連続で上昇した。
スポット金価格(以下では金価格)は、3.7%高と5月19-23日週の4.8%高以来の大幅上昇となった。
スポット金価格の週間変動率:今年4月以降

ブルームバーグのデータで筆者が作成
しかし、週明け16日の市場では事態が一変した。イランがイスラエルとの緊張緩和と核協議の再開を目指す意向を示唆している米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が報道した。また、トランプ米大統領もイランが対話の意向を示していると述べた。
イランの軟化姿勢が意識され中東懸念が急速に後退。安全資産としての投資妙味が薄れたゴールドには調整売りが入った。スポットの金価格は3,400ドルを下方ブレイクした。16日の東京市場では再び3,400ドルへ反発する局面が見られるが、上値は重い。
スポット金価格:5分足 16日の動向(17日午前9時まで)

出所:TradingView
NY原油先物急反落も油断禁物、イスラエルの動向を注視
週明け16日のNY原油先物価格は買いでスタートした。13日に続き77ドル台へ急伸する局面が見られた。しかしこの日の日足ローソク足は大陰線となった。一方、13日の日足ローソク足では長い上ヒゲが現れた。直近のローソク足の動向は、中東懸念に対する投資家の過剰反応を示唆している。
NY原油先物価格のチャート:日足 年初来

出所:TradingView
原油先物価格の急反落だけでなく、この日はアメリカの主要株価指数が上昇した。主力ハイテク株の買いでナスダック指数が最も上昇した。投資家のリスク選好姿勢が続いていることを示唆する動きである。
上で述べた各市場の動きを考えるならば、中東懸念によるゴールド買いは一過性で終わる可能性がある。
アメリカ株価指数の変動率:6月16日

ブルームバーグのデータで筆者が作成
しかし油断は禁物である。イスラエルはイランの核開発阻止を目的に戦線を拡大している。その戦線はホルムズ海峡に及ぶ可能性がある。
ロイターは共同海事情報センター(JMIC)の発表を引用し、ホルムズ海峡とペルシャ湾周辺で商用船舶の航行システムへの電子妨害が急増していると報道した。15日のIG米国レポートで述べたとおり、過去にイランがホルムズ海峡を完全に封鎖したことはない。しかしこの海域での戦闘が発生すれば、石油の供給懸念による原油先物価格の上昇を招くだろう。中東リスクの指標である原油価格の上昇は、安全資産であるゴールド買いの需要を高めるだろう。
関連記事:15日の米国株レポート
・米国株 今週の見通し(6/16-20):S&P500予想5850-6100、中東情勢とFOMC注視
米FOMC、焦点はパウエルFRB議長の会見、“タカ派”なら金価格の下落を警戒
17-18日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が開かれる。今回の会合では政策金利の据え置きが予想されている。したがって焦点は、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長の定例会見となる。インフレと雇用の見通し、そして利下げ姿勢が米金利とドルの変動要因となろう。
利下げ判断の後押し要因
・5月雇用指標:労働市場の軟化を示唆
・5月インフレ指標:消費者物価指数・生産者物価指数が総じて予想以下
・6月期待インフレ率(速報値):5月の6.6%から5.1%へ急低下 ※ミシガン大学調査
利下げ判断の慎重要因
・トランプ関税の影響見極め
・中東懸念による原油高→インフレ再燃の懸念
5月の経済指標では、労働市場の軟化傾向とインフレの抑制傾向が示された。6月のミシガン大学調査の期待インフレ率も5月の6.6%から5.1%へ急低下した。単月の指標が米FRBの政策判断に与える影響は大きくないが、利下げを後押しする要因ではある。パウエルFRB議長が会見で利下げに前向きな姿勢を示す場合は、金価格のサポート要因となろう。一方、パウエルFRB議長が利下げの慎重要因の方を重視する場合は、金価格の下落を想定したい。
短期金融市場では次回の利下げを9月と想定している。その確率は60%台にある。
米FRB 政策金利の予想推移

ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 17日7時時点
金価格の見通しとテクニカル分析
予想レンジの下限:3,320ドル
16日の金価格は急反落した。中東懸念の後退は確かにゴールド売りの要因である。だが、3,400ドルを下方ブレイクする大陰線は、市場参加者の高値警戒感も示唆している。
中東懸念の後退を伝える報道が続けば、高値警戒感を意識した金価格の下落を想定したい。18日のパウエルFRB議長の会見が“タカ派”と市場で受け止められる場合は、下落幅の拡大を警戒したい。
20日までの予想レンジ下限は3,320ドル。このレベルには、5月下旬以降サポートラインとして意識されている50日線が上昇している。
金価格が50日線をトライするサインとして、10日線と21日線の攻防に注目したい。特に21日線は6月に入り相場を下支えしている。この移動平均線の下方ブレイクは、50日線をトライするサインと捉えたい。
サポートライン
・3,367:10日線
・3,350:21日線
・3,320:50日線、予想レンジの下限(20日まで)
予想レンジの上限:3,450
イスラエルの動向次第では、中東の地政学リスクが再燃する可能性がある。また、パウエルFRB議長が利下げに前向きな姿勢を示す可能性もある。これらは金価格の押し上げ要因となろう。
だが、16日の急反落は市場参加者の高値警戒感を示唆している。3営業日続けて3,450ドルで上値が止められた状況も考えるならば、20日までの予想レンジの上限をこのラインと想定したい。テクニカルの面で3,450ドルは、フィボナッチ・エクステンション100%の水準に当たる。
3,450ドルをトライするサインとして、以下にまとめた4つのレジスタンスラインの攻防に注目したい(15分足チャート、黒矢印を参照)。いずれもレジスタンスラインへ転換する可能性がある。
レジスタンスライン
・3,450:予想レンジの上限(20日まで)
・3,435:フィボナッチ・リトレースメント76.4%戻し
・3,425:フィボナッチ・リトレースメント61.8%戻し
・3,420:レジスタンスラインへ転換する可能性あり
・3,408:フィボナッチ・リトレースメント38.2%戻し
金価格のチャート
日足:今年4月以降

出所:TradingView
15分足:16日以降

出所:TradingView
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