金価格、今週は調整売りを警戒 米中協議の進展でリスク選好
米中協議の進展を受け、週明けの各市場はリスク選好のムードにある。金価格は下落スタートとなった。今週のゴールドは調整売りを警戒したい。

概要
米中両政府は先週末、貿易問題の解決に向けた初の閣僚協議を開いた。ベッセント米財務長官は「大きな進展があった」と述べた。米中の緊張が緩和に向かうとの期待が高まり、週明けからリスク選好のムードが高まっている。この動きは金価格の重石となろう。米利下げ観測の後退もゴールドの売り要因となろう。今週の金価格は、調整の下落相場を警戒したい。注目のサポートラインについて。
米中協議「大きな進展」、12日に詳細発表、週明けの市場はリスク選好で反応
米中の両政府は10~11日にスイスで開かれた貿易協議を終えた。ロイター通信によると、ベセント米財務長官は緊張の緩和に向けて「大きな進展」があったと述べた。12日に詳細を説明するとした。グリア米通商代表部(USTR)代表も中国との隔たりが思ったほど大きくないと述べた。NHKによれば、中国の何立峰副首相も記者会見で「実質的な進展があり重要な共通認識に達した」と述べた。
週明けの外為市場は円安優勢でスタートした。日本225(日経平均CFD)は一時3万7900円台へ上昇する局面が見られた。米国の株価指数CFDは前週末比1%前後上昇している(レポート掲載時点)。
リスク選好を受け、金価格は下落でスタートした。スポット価格は3300ドルをあっさりと下方ブレイクし、下値トライのムードが高まっている。
スポット金価格のチャート:5分足 12日7時~10時の動き

出所:IGチャート
米中の緊張緩和、米利下げ観測の後退、金価格は調整売りを警戒
米中が緊張緩和に向けて動き出したことは、リスク選好の要因であり金価格にとっては重石となろう。今週の金価格は、調整売りに直面する展開を想定したい。
米利下げ観測の後退も金価格の下落要因になり得る。関税リスクが意識された先月8日、短期金融市場では今年12月の予想水準が3.2%台まで低下する局面が見られた。しかし、現在の予想水準は3.6%台まで上昇している。米連邦準備制度理事会(FRB)のインフレ抑制重視の姿勢と米中の緊張緩和を反映した動きと考えることができる。
6月利下げの可能性が著しく後退し、先週までは7月の利下げが意識されていた。しかし、週明けの7月利下げ確率が40%台へ低下し、9月に後ずれする可能性が出ている。今週の米インフレ指標次第では、米利下げ観測がさらに後退する可能性がある。米中対立が緩和に向かうなかでの利下げ観測の後退は、米ドル高の要因となろう。米ドルの買い戻しが進行する場合は、金価格の下落要因となろう。
7月の米利下げ確率の推移

ブルームバーグのデータで筆者が作成 / OISに基づく予想 / 5月12日時点
※マイナス表記:利下げ
金価格 今週の見通しと注目のテクニカルライン
3200ドルと短期サポートラインの維持
週明けからリスク選好のムードが高まり、スポット金価格は日足の一目転換線と基準線を完全に下抜ける状況にある。MACDはデッドクロスへ転じ低下のムードにある。4時間足チャートを見ると、先週の調整売りを止めた3280-90ドルのゾーンを下方ブレイクしている(黒矢印を参照)。テクニカルの面でも、今週の金価格は調整売りを意識する状況にある。
焦点は、4月下旬から5月初めの調整売りを止めた3200ドルの維持となろう。この水準で反発が確認される場合は押し目買いを考えたい。
一方、金価格が3200ドルを一気に下方ブレイクする場合は、さらなる下落のサインと捉えたい。このケースでは、2月の安値と4月22日に付けた最高値3500ドルの半値戻しの水準3166ドルのトライを意識したい。この水準は、4月2日と3日に相場の上昇を止めた経緯がある。サポートラインへ転換するかどうか?を見極めたい(日足チャート、下向きの黒矢印を参照)。
調整売りが進行し金価格が3160ドル台をも下方ブレイクする場合は、現在の上昇トレンド象徴する短期サポートラインの維持が焦点に浮上しよう。このラインは今週の後半に3100ドルへ上昇する(日足チャートを参照)。今週は日足の一目雲も3100ドル付近で推移する。テクニカルの面で3100ドルは、3200ドル以上に重要なサポート水準となろう。
サポートライン
・3200:サポートライン(日足)
・3166:半値戻し(日足)
・3100:短期サポートライン、一目の雲(日足)
3360ドルの攻防
今週、金価格が反発しても、その幅は限られる可能性が高いだろう。まずは3300ドル台への再上昇を確認したい。このラインすら突破できないようであれば、3200ドルのトライと下方ブレイクを意識する状況が続こう。
金価格が3300ドル台へ上昇しても、IGコモディティレポートで注目している3360ドルで反発が止められる展開を想定したい。4時間足チャートを見ると、この水準はレジスタンスとサポートの両面で意識されやすい水準である。今はレジスタンスラインとして意識される可能性がある。
金価格が3360ドルを突破すれば、3400ドルが視野に入ろう。しかし、上述した米中協議の進展と米利下げ観測の後退による米ドル高の可能性を考えるならば、今週金価格が3400ドルまで反発する可能性は低いとみる。
レジスタンスライン
・3400:レジスタンスライン(4時間足)
・3360:レジスタンスライン(4時間足)
・3300:レジスタンスライン(日足)
金価格のチャート
日足:今年の2月以降

出所:TradingView
4時間足:4月以降

出所:TradingView
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