金価格 見通し(3/10):イラン情勢なお不透明、米CPI警戒、5000~5200ドルの攻防
IG証券のアナリストによる金価格の見通し。トランプ発言で中東懸念がひとまず後退。しかしイラン情勢はなお不透明。目先の金価格は5000ドル~5200ドルの攻防が焦点に。
要点
- トランプ米大統領が「イラン戦争ほぼ完了」との考えを示す。中東リスクのバロメーターである原油価格は急騰から一転急反落。中東懸念の後退を意識した動き。しかしイラン情勢はなお不透明。有事のドル買いを警戒
- 今週は、11日に米国の2月CPI、13日に1月PCE価格指数が発表される。インフレの粘着性が確認されれば「米ドル高→金価格の下落」を警戒したい
- 金価格が5000ドルを割り込めば、4900ドルを視野に下落加速を警戒。一方、イラン情勢や米物価指数が米ドル安の要因となる場合は、5200ドルのブレイクアウトが焦点に。これを達成すれば、今週は5300ドルまでの反発を想定
トランプ氏「イラン戦争ほぼ完了」、中東懸念後退で原油価格乱高下
9日の取引でWTI原油先物価格が節目の100ドルを突破し、2022年6月以来となる119.48ドルへ急騰する場面があった。しかし、トランプ米大統領がCBSテレビとの電話インタビューで「戦争はほぼ完了した(very complete, pretty much)」との認識を示すと、WTI原油先物相場は一転して売り優勢となり、81ドル台まで急落した。
トランプ氏はイランの軍事能力について「海軍も空軍も通信もない。ミサイルは散発状態」と述べ、当初想定の4〜5週間を大幅に前倒しで進行中と主張した。
WTI原油先物価格 15分足チャート:3月6日・9日の動向
TradingView提供のチャート
IG日本株レポートで述べた通り、恐怖指数として知られるVIXは9日、35ポイントから24ポイント台まで低下した。一方、主要な米株価指数は取引後半の買いにより上昇して終えた。米株式市場の約80%をカバーするS&P500は6600ポイントを維持した。ナスダック総合指数は約1.4%高、100指数は1.3%高と主要指数で上昇率トップだった。
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米株価指数の変化率:3月9日
ブルームバーグのデータを基に作成
イラン情勢はなお不透明、有事のドル買いを警戒
昨日の市場動向は、トランプ米大統領の発言で市場心理が改善していることを示唆している。しかし、イラン戦争が完全に終結するには停戦交渉の行方を注視する必要がある。米国防総省は9日、公式アカウントで「戦いはまだ始まったばかりだ」と投稿しており、トランプ発言との間に温度差が見られる。
イラン国営メディアは9日、故アリ・ハメネイ最高指導者の後継者として、息子のモジタバ・ハメネイ師を第3代最高指導者に選出したと報じた。反米強硬派として知られているモジタバ師の最高指導者就任を受け、イラン体制は強硬派で固められる形となり、停戦交渉の行方はなお不透明だ。
イラン戦争が勃発して以降、外為市場ではカナダドルを除き「有事の米ドル買い」の状況にある。トランプ発言で中東懸念がひとまず後退しているが、「中東リスクのバロメーター」である原油価格が再び上昇すれば、イラン情勢で新たなリスクイベントが発生したサインと捉えたい。外為市場で「有事のドル買い」が続く場合は、金価格の重石となろう。
米ドルとドル指数の動向:3月2日~9日の動向
ブルームバーグの為替データを基に作成
米ドルの動きは、金価格のトレンドを考える上で重要だ。イラン戦争が勃発して以降のトレンドを1時間足チャートで確認すると、3日に有事のドル買いで急落。その後反発するもその力は弱く、半値戻しの水準5200ドルレベルがレジスタンスラインとして意識されている。
金価格 1時間足チャート:3月以降
TradingView提供のチャート
市場参加者が有事のドル買いを警戒していることは、金ETFの資金フローからもうかがえる。ブルームバーグ・インテリジェンスがまとめた週間資金フローのデータによれば、3月第1週は流出超。iShares Gold Trustは2週連続の流出超となった。
本来であればイラン戦争は、安全資産としての金の投資妙味を高める要因だ。しかし、金ETFから資金が流出している状況は、有事のドル買い=世界でもっとも流動性が高い米ドルの需要が高まっていることを示唆している。イラン情勢の不透明感が意識され有事のドル買いが続けば、金価格は以下で詳述するサポートラインの攻防を意識したい。
金ETF 週間資金フロー:2025年9月から2026年3月第1週までの動向
ブルームバーグ・インテリジェンスのデータを基に作成
金価格のテクニカル分析、5000~5200ドルの攻防に注目
5000ドル割れなら下落加速を警戒
今週、イラン情勢以外で米ドルの変動要因として注目したいのが、米物価指数だ。11日に米国の2月消費者物価指数(CPI)、13日に1月PCE価格指数が発表される。今週は2つの重要な物価指数が重なる異例の週となる。インフレの粘着性を示唆する内容が続けば、「利下げ期待の後退→米ドル高→金価格の下落拡大」を警戒したい。イラン戦争の不透明感が意識される場合は、有事のドル買いも重なり、金価格は現在サポートラインとして意識されている5000ドルの下方ブレイクを警戒したい。25日線とローソク足の実体ベースで相場をサポートしている5040ドルの下方ブレイクは、5000ドルをトライするサインと捉えたい。
5000ドルをブレイク後、この水準がレジスタンスラインに転換すれば、下落拡大のサインとなろう。このケースでは、日足チャートの半値戻し4910ドルを視野に下落拡大を警戒したい。直下の水準は4900ドルで、4880ドル台には50日線が上昇している。2つのテクニカルラインに挟まれ、節目の水準でもある4900ドルを今週13日までの下限と想定したい。
注目のチャート水準:サポート
・5074ドル:25日線
・5040ドル:サポートライン
・5000ドル:イラン戦争後のサポートライン
・4900ドル:下限予想、半値戻し(4910ドル)
・4883ドル:50日線
※移動平均線の水準:レポート掲載時点
5200ドルの突破が焦点に
一方、金価格の上昇局面では、5200ドルの攻防に注目したい。前述のとおりこの水準はイラン戦争以降、強固なレジスタンスラインとして意識されている。テクニカル面では半値戻しにあたり、今日以降も相場の反発を止める可能性がある。
金価格が5200ドルを突破する場合は、上昇拡大が予想される。この水準がサポート転換となれば、その可能性はより高まろう。5200ドル突破のケースでは、フィボナッチ・リトレースメント61.8%(5257ドル)、76.4%水準(5319ドル)の攻防に注目したい。76.4%戻しのトライは5300ドルの攻防となる。
中東懸念のさらなる後退、そして米物価指数でインフレの鈍化が示され米ドル安が進行する場合は、「5200ドル突破→61.8%戻しのトライ」を想定したい。後者のテクニカルラインを上方ブレイクすれば、5300ドルのトライが視野に入ろう。このラインを今週13日までの上限と想定したい。
注目のチャート水準:レジスタンス
・5300ドル:上限予想、76.4%戻し(5319ドル)
・5257ドル:61.8%戻し
・5200ドル:イラン戦争後のレジスタンスライン、半値戻し(5207ドル)
金価格の日足チャート:2026年以降
TradingView提供のチャート
金価格4時間足チャート:3月以降
TradingView提供のチャート
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