半導体ビジネスは急速に成長している分野です。この記事では2025年6月の段階で注目されている半導体株のおすすめ5選 (日本含む) を紹介します。5つの銘柄は時価総額に基づいて選出されています。
半導体株(半導体銘柄)とは、半導体を製造・開発している企業の株式のことを指します。半導体は私たちの身の回りにあるスマートフォンやパソコン、自動車など、多くの製品に使われており、現代社会に欠かせない技術です。そのため、半導体を扱う企業の業績は、経済全体やテクノロジーの進化に大きく左右されやすいという特徴があります。
有名な半導体株には、アメリカのNvidia、台湾のTSMC、韓国のサムスン電子、日本では東京エレクトロン、信越化学工業、アドバンテストなどが挙げられます。これらはスマートフォンやAI、自動運転車などの分野で重要な役割を果たしている企業です。
このように、半導体市場は最先端のテクノロジーとともに成長していく可能性の高い分野であり、投資対象としても非常に注目されています。
この項目では、半導体株を取引するメリットとデメリットについて解説していきます。
半導体株を取引するメリットとしては、まず成長性の高さが挙げられます。半導体はスマートフォンやパソコンだけでなく、今後さらに成長が期待されるAI分野や自動運転車、IoT(モノのインターネット)などに欠かせない重要な部品です。技術革新とともに、新しい需要が次々と生まれやすい分野だと言えます。
また、世界的なニーズの高さも特徴です。半導体は世界中の多くの産業で必要とされているため、グローバルに展開している企業が多く、海外市場の成長を取り込める機会があります。
さらに、半導体産業は注目度が高い市場であることから、ニュースや情報が豊富で、学びやすいという点も初心者投資家にとってはメリットになるでしょう。
一方で、半導体株には注意すべきデメリットもあります。最も大きなデメリットは、ボラティリティが高い(値動きが大きい)ことです。世界的な景気や技術トレンド、政府の方針、国際関係などさまざまな影響を受けやすいため、株価が急騰・急落しやすい傾向があります。
また、技術の変化が非常に速いため、今まで主力だった製品や企業が短期間で苦境に立たされるケースも少なくありません。さらには、半導体そのものが一時的に余って価格が下がる「シリコンサイクル(約3~4年周期で好況と不況を繰り返す現象)」と呼ばれる現象もあり、企業の業績が上下しやすいのも特徴です。
加えて、専門用語や業界知識が必要になる場面があるため、最初は取引が少し難しく感じられるかもしれません。
半導体銘柄は、個別株として取引することも、上場投資信託(ETF)を通じて取引することもできます。例えば、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は米国の半導体株に連動する指数として広く知られています。
他の業界と同様、半導体関連企業も決められた決算時期に決算を発表します。決算発表が迫るにつれて、取引量は急増し、市場のボラティリティが高まる傾向があるので、決算をまたいで取引する際には注意が必要です。
さらに、企業による重大発表や新製品の発表、連邦準備制度理事会(FRB)による金融政策に関する情報の発表時などにも、ハイテク関連銘柄のボラティリティが高まります。その結果、半導体関連銘柄の取引にも影響が波及する可能性があります。
ここでは、2025年第3四半期に注目すべき半導体関連株を5つ紹介します。(株価とその推移は7月16日時点のものを引用しています。また、過去の値動きは将来の株価動向を示すものではありません)
東京エレクトロンは半導体製造装置で世界3位の企業であり、特に、エッチング装置や成膜装置などの前工程装置で世界でもトップクラスのシェアを誇っています。東京エレクトロンの主要成長ドライバーとなっているのは、生成AI向けの先端半導体製造装置需要です。5Gや自動運転の拡大という追い風もあり、AIチップや高速通信向けチップに強みがある東京エレクトロンは需要の中心にあるといえるでしょう。
グローバル展開も特徴で、中国や台湾、韓国、北米など幅広い顧客基盤を構築しています。幅広い顧客基盤は、売上の安定・増加に寄与しています。
2025年3月期の通期決算では、売上高が約2兆4,316億円(前期比+32.8%)、営業利益は約6,973億円(同+52.8%)と、過去最高を更新しました。株主還元にも積極的で、配当利回りは約2.2%となっています。
現在の株価は27,890円、予想PERは約23倍とやや割高感があります。とはいえ、これは東京エレクトロンに対する市場の高い期待を反映しているとも考えられます。自己資本比率も約70%と高く、財務的にも健全です。
東京エレクトロンは世界的な半導体投資の拡大、特に生成AIによる需要急増の追い風を受け、売上と利益が大きく伸びています。今後も半導体市場の成長に伴う需要拡大が期待されるうえ、高水準の配当もあり、中長期的な投資先として大きな魅力のある銘柄です。
信越化学工業は日本を代表する総合化学メーカーであり、特に半導体材料の「シリコンウエハ」のシェアは世界トップです。PVC(塩化ビニル樹脂)やシリコーン(ケイ素樹脂)分野でも強力な製品群を持ち、グローバル規模で安定的な供給と高い収益性を誇っています。
2025年3月期決算では、売上高が約2兆5,612億円(前期比+6.1%)、営業利益は7,421億円(同+5.9%)と増収増益を達成しました。海外売上高比率は80%となっており、米国・アジアを中心とした事業拡大が進行中です。自己資本比率も82.6%と非常に高く、財務基盤は強固です。
2025年4月に発表された大規模な自社株買いでは、発行済株式数の約10.2%、最大5,000億円規模の市場買付を決議しました。過去の実績を踏まえると、今後も自社株買いによる株式需給の改善が見込まれ、株価へのポジティブな影響が期待されます。
一方で、2026年3月期の通期業績予想は「現時点で合理的な算定が困難である」として未開示となっています。これは米国の関税政策や半導体市況といった、外部環境の不透明さを反映した慎重な判断の現れでしょう。
現在の株価は4,657円、予想PERは2026年3月期の通期業績予想が未開示であるため算出不能です。信越化学工業は半導体材料と塩ビを中心に世界トップクラスの技術と供給力を持つ「素材のキングメーカー」と呼べる存在であり、半導体市場の伸びを背景に、中長期的な業績拡大が見込まれます。
SCREENホールディングスは半導体製造装置を中心に事業を展開する日本の代表的企業です。特に、半導体ウエハ(半導体集積回路の基盤となる薄い円板)洗浄装置では世界一のシェアを誇ります。
現在、生成AIの普及やチップレット技術(複数の小型チップに分割し、それらを組み合わせて機能させる技術)の拡大により、微細化プロセス向けの装置需要が世界的に高まっています。ウエハ洗浄装置で高いシェアを持つSCREENホールディングスは、こうした最先端投資に不可欠な装置を提供している点が大きな魅力です。
2025年3月期の決算では、売上高が約6,253億円(前期比+23.8%)、営業利益は約1,357億円(+44.1%)と、いずれも過去最高を更新しました。特に、主力の半導体製造装置事業はAI関連の先端ロジック半導体やメモリ向けの投資を背景に売上が堅調に伸び、台湾や中国向けの販売が好調でした。
現在の株価は12,060円、PERは約13倍と、業績の力強さに比して割安感があります。自己資本比率は約63%と、財務面も健全です。
SCREENホールディングスは成熟した企業でありながら、AIや先端半導体の波に乗るポジションを築いていることから、初心者にも注目しやすい半導体関連銘柄の一つです。
Nvidia(エヌビディア)は世界的な半導体メーカーであり、GPU(グラフィックス処理装置)を中心とするAIインフラの設計・提供をグローバルに展開しています。特に、生成AIの分野での使用を目的として設計されたGPU「Blackwell」は、高性能AIに広く採用され、注目を集めています。
2025年4月には中国市場向けに開発された高性能チップ「H20」の中国輸出が禁止されたことで、大きな損失の発生が予想されました。しかし、7月には米政権が規制を緩和し、H20の輸出が再開され、株価も急騰を見せました。
今後の主な成長ドライバーとしては、中国市場への再展開や、データセンター・自動運転・ロボティクス分野への製品展開などが挙げられます。ただし、米中関係の悪化には、一定の注意が必要になるでしょう。
2025年4月期決算の売上高は約441億ドル(前年同期比+69%)、当期利益は約188億ドル(前年同期比+26%)となり、8四半期ぶりに過去最高益を更新できませんでした。現在の株価は171.37ドル、予想PERは約40倍と割高感があります。とはいえ、中国市場への再展開やAIインフラ需要の拡大により、今後の成長余地は大きいと考えられます。
Nvidiaの株価はすでに高値圏にありますが、成長シナリオが崩れない限り、技術革新と需給の強さが中長期的な投資魅力を維持するものと考えられます。
Qualcomm(クアルコム)はスマートフォン向けSoC(CPUやGPU、通信機能などを1つのチップに統合したもの)で広く知られる一方、近年は自動車やIoT、AI分野への事業拡大を急速に進めています。例えば、自動運転支援システム向けSoCや低消費電力AIエッジチップなどを展開し、スマホ以外の分野での収益源を拡大しています。特に、自動車用プラットフォーム「Snapdragon Digital Chassis(スナップドラゴン・デジタル・シャシー)」は、世界の大手自動車メーカーに採用され始めており、今後の事業拡大の中核を担うと見込まれています。
2025年3月期の売上は約110億ドル(前年同期比+17%)、純利益は約28億ドル(同+21%)と、堅調な成長を示しました。特に半導体部門(QCT)の営業利益は前年同期比+25%、自動車とIoTを合計した売上は+38%と、スマホ依存からの脱却が着実に進んでいます。
現在の株価は154.07ドル、PERは約17倍と米国の半導体株としては比較的割安な水準です。手厚い株主還元も魅力で、2025年9月期の予想配当利回りは約2.3%となっています。
スマホ市況が落ち着く中でも、Qualcommは次の成長分野を掴みにいく戦略が明確で、初心者でも馴染みやすい大手企業でありながら、今後の成長も期待できる銘柄として位置づけられます。
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