高齢化や健康志向を追い風に伸びるヘルスケア株。医療・介護・製薬など幅広い分野から、注目すべき関連銘柄5選を紹介します。いずれも、成長性や安定性などを総合的に考慮して選定しています。
ヘルスケア株とは、医療や健康に関連するビジネスを展開している企業の株式のことです。近年、高齢化社会の進行や健康意識の高まりにより、ヘルスケア業界は大きな注目を集めています。
ヘルスケア株には様々な種類があります。例えば、武田薬品工業などの製薬会社、テルモなどの医療機器メーカー、日本調剤などの調剤薬局チェーン、ツクイなどの介護サービス企業などが代表的です。また、海外ではJohnson & JohnsonやEli Lilly and Company(イーライ・リリー)といった世界的な製薬会社や、UnitedHealth Group Inc(ユナイテッドヘルス・グループ)などの医療保険会社も有名なヘルスケア株としてよく知られています。
ヘルスケア株は人々の健康を支える重要な産業に投資できるという魅力があります。景気変動にも比較的強く、長期的な成長が期待できる分野とされていますが、薬の開発失敗リスクや法規制の変更など、これらの特有なリスクには注意が必要です。
健康への関心が高まっている社会において、ヘルスケア株は押さえておきたい投資先です。
ヘルスケア市場は今後大きな成長が見込まれる有望な分野です。ヘルスケア市場が成長を続ける主な理由には、以下のようなものがあります。
例えば、日本国内では富士フイルムホールディングスが再生医療分野への投資を強化しており、新型コロナウイルスのワクチン開発で注目を集めたモデルナやビオンテック(バイオエヌテック)などのバイオテック企業の急成長も、ヘルスケア市場の可能性を示す好例と言えるでしょう。
人類の健康と長寿に貢献するヘルスケア産業は、長期的な視点で見ると今後も発展が期待できる市場です。投資先の一つとして、ヘルスケア市場を知っておくと選択肢が広がります。
ここでは、初心者向けの注目銘柄を5つ紹介します(価格と株価推移は2025年9月3日時点の引用です。過去の値動きは、将来の株価動向を示すものではありません)。
武田薬品工業は日本を代表するグローバルな製薬企業であり、様々な分野で革新的な医薬品の開発・提供を進めています。複数の疾患領域に強みを持ち、堅固な研究開発パイプラインを通じて、世界中の患者の生活の質向上に貢献することを目指しています。
2025年7月には、ナルコレプシー治療薬候補「oveporexton」が、2つの第3相臨床試験で主要評価項目および副次評価項目をすべて達成し、統計的にも有意な改善を確認したと発表されました。その他にも、複数のパイプラインが前進しています。
2026年3月期第1四半期決算(2025年4月1日~2025年6月30日)では、円高の影響を受けて売上収益が1兆1,066億円(前年同期比-8.4%)となりましたが、営業利益は1,845億円(同+11.0%)、親会社の所有者に帰属する当期利益は1,242億円(同+30.4%)と増益を達成しました。主要ビジネスエリアの多くで為替影響を除くと微増収となり、成長製品や新製品の売上も堅調に推移しています。
2026年3月期通期では、売上収益が4兆5,300億円(前期比-1.1%)、営業利益は4,750億円(同+38.7%)、親会社の所有者に帰属する当期利益は2,280億円(同+111.3%)と予想されています。現在の株価は4,499円、予想PERは31倍、PBRは約1.0倍と、利益面から見るとかなり割高感があります。とはいえ、営業利益や当期利益の大幅増が見込まれていることや、約4.5%という高い配当利回り、市場の成長性を考えると、これには一定の妥当性があると言えるでしょう。
武田薬品工業は為替の影響による売上減という逆風の中でも、コスト削減と利益率の改善に成功し、研究開発面では複数の前向きなパイプラインの進捗を達成しています。製薬大手としての知名度や情報の豊富さもあり、初心者でも投資先の一つとして検討しやすい銘柄です。
大塚ホールディングスは医薬品や健康食品、機能性飲料などを展開するトータルヘルスケア企業です。「ポカリスエット」といえばイメージがわく方も多いでしょう。
最近では、女性の基礎サプリメント「エクエル(EQUELLE)」や、大塚製薬が販売する米国生まれのサプリメント「ネイチャーメイド」などの売り上げが好調です。
2025年12月期第2四半期決算(2025年1月1日~2025年6月30日)では、売上収益が1.18兆円(前年同期比+6.5%)、営業利益は2,421億円(同+91.7%)、親会社の所有者に帰属する当期利益は1735億円(同+61.0%)と、大幅な増益を達成しました。医療関連事業で抗精神病薬「レキサルティ」や持続性注射剤「エビリファイ アシムトファイ」、女性の健康カテゴリー及びヘルシアーライフカテゴリーなどが成長しました。前年同期に計上した大規模な減損損失がなかったことも、増益となった要因の一つです。
2025年12月期通期では、売上収益が2.38兆円(前期比+2.2%)、営業利益は4,500億円(同+39.1%)、親会社の所有者に帰属する当期利益は3,300億円(同-3.8%)と予想されています。金融費用の増加や為替の影響、自己株式の取得などが当期利益減少の主な要因です。
現在の株価は8,016円、予想PERは約13倍、PBRは約1.6倍と、利益面から見るとやや割安感があります。大塚ホールディングスは主力製品の堅調な売上に加えて、利益率の飛躍的な改善を果たしました。利益が一時的に減少する要因はあるものの、医療関連事業の強さと健康食品部門の堅実な伸び、さらには中長期的には安定成長が見込まれる企業として、投資対象としての注目度が高まっています。
テルモは医療機器を中核に、カテーテル治療や心臓外科手術、薬剤投与、糖尿病管理など多岐にわたるヘルスケアソリューションを提供する日本の大手医療機器メーカーです。2025年8月には臓器保存デバイス開発のイノベーター「OrganOx」の買収を発表しました。これにより臓器移植関連分野に参入し、新たな成長領域を開拓するとしています。
2026年3月期第1四半期決算(2025年4月1日~2025年6月30日)では、売上収益が2,599億円(前年同期比+0.7%)、営業利益は558億円(同+25.2%)、親会社の所有者に帰属する当期利益は418億円(同+23.5%)と増収・増益を達成しました。心臓血管カンパニーと血液・細胞テクノロジーカンパニーが好調で、特に北米での血漿イノベーションビジネスが成長を牽引しています。
2026年3月期通期では、売上収益が1兆500億円(前期比+1.3%)、調整後営業利益(営業利益から買収に伴い取得した無形資産の償却費及び一時的な損益を調整)は2,140億円(同+5.2%)、営業利益は1,940億円(同+23.0%)、親会社の所有者に帰属する当期利益は1,430億円(同+22.2%)と予想されています。目標に向けて、高付加価値製品の拡販や原価改善に注力する方針です。
現在の株価は2,632円、予想PERは約27倍、PBRは約2.9倍と、利益面と資産面共に割高感があります。しかし、営業利益や当期利益の高い成長を考慮すれば、これは一定の合理性を有していると考えられます。
テルモは売上高こそ控えめな伸びに留まるものの、利益面での飛躍が顕著です。さらにOrganOxの買収など、新分野への戦略展開も進行中です。これらの要素を背景に、投資家からの評価も向上しており、安定的な成長と構造改革の両輪で、引き続き注目される存在です。
アステラス製薬は日本を代表するグローバル製薬企業のひとつで、医薬品では国内2位のシェアを誇ります。抗がん剤や網膜治療薬、更年期ホットフラッシュ治療薬など、多様な医薬品を開発・提供しています。
2025年7月には、標的タンパク質分解誘導プログラムについて、膵臓がんに続き非小細胞肺がんでも概念実証を達成したことが発表されました。また、タンパク質の一種である「Claudin 18.2」を標的とする抗体薬に関し、革新的なバイオ医薬品企業である中国の「Evopoint」との独占ライセンス契約の締結も発表されています。
2026年3月期第1四半期決算(2025年4月1日~2025年6月30日)では、売上収益が5,057億円(前年同期比+6.9%)、営業利益は946億円(同+86.8%)を達成し、親会社の所有者に帰属する当期利益は684億円(同+82.0%)と大幅な増益を達成しました。特に、がん治療剤などの新薬の売上が好調でした。
2026年3月期通期(コアベース:無形資産償却費や無形資産譲渡益、持分法による投資損益、減損損失などを調整)では、売上収益が1兆9,300億円(前期比+0.9%)、コア営業利益は4,100億円(同+4.5%)、コア当期利益は3,040億円(同+2.8%)を見込んでいます。現在の株価は1,664円、予想PERは約23倍、PBRは約2倍と、利益面と資産面共に割高感があります。とはいえ、成長性と約4.7%という高い配当利回りを考慮すると、一定の根拠があると評価できます。
総じて、アステラス製薬は強力な戦略ブランドの売上加速や利益率の大きな改善、新パイプラインの順調な進展などにより、堅実な成長を継続しています。配当利回りも高いことから、特に中長期保有の候補に挙げられるヘルスケア関連銘柄です。
Eli Lilly and Company(イーライ・リリー)は米国を代表する大手製薬企業で、医薬品の開発、製造、販売を行っています。特に、糖尿病・肥満治療薬分野での急成長が注目されています。
主力製品「Mounjaro(糖尿病治療薬)」は2025年第2四半期に 52億ドル、「Zepbound(肥満治療薬)」は 33億ドル と、両製品とも圧倒的な売上を見せました。ただし、経口GLP-1薬「orforglipron」に関しては、第3相試験で平均体重減少率が12.4%と市場の期待を下回り、株価は約14%下落しました。
2025年第2四半期決算(2025年4月1日~2025年6月30日)では、売上高が155億ドル(前年同期比37.6増)、営業利益は68億ドル(同+84.9%)、純利益は56億ドル(同+90.8%)と、大幅な増収・増益を達成しました。製品の多様化と新薬の開発が進んでおり、収益基盤の強化に寄与しています。さらに、製造施設の拡充や新たな買収により、製造能力と研究開発力も向上しました。
現在の株価は737.83ドル、実績PERは約63倍、PBRは約49倍と、利益面と資産面共にかなり割高感があります。しかし、今後市場が大きく伸びることが想定される糖尿病治療薬や肥満治療薬で大きなシェアを占めており、製品の多様化と新薬の開発が進んでいることを考慮すれば、これは一定の妥当性があると考えられます。
Eli Lilly and Companyは、糖尿病・肥満治療薬において短期的には調整もありましたが、圧倒的な業績を挙げ、成長期待も高まっています。Orforglipronの臨床結果は市場期待に届かず逆風となったものの、主力製品群の勢いと新パイプラインへの投資意欲は、引き続き注視しておきたい点です。
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