資本効率が改善したことで、日本のバリュー株(割安株)の魅力は高まっています。この記事では、注目のバリュー株5銘柄を紹介します。銘柄は株価収益率(PER)に基づいて選出されていれます。
バリュー投資とは、潜在的に割安な企業、いわゆる「バリュー株(割安株)」を見極める投資戦略です。割安株とはなんでしょうか。割安株に該当するかどうかを示す重要な指標が、株価収益率(PER)です。PERが低いということは、その企業が割安であること、あるいは過去の傾向と比較して非常に好調であることを示唆しています。
今日において最も有名なバリュー投資家は、ウォーレン・バフェット氏といえるでしょう。バリュー投資家は、市場が良い・悪いニュースに過剰に反応した結果、企業の長期的なファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)と一致しない株価の動きが生じると考えています。
企業の株価が割安になる理由はいくつかあります。例えば、市場全体の暴落や信用失墜によって投資家が株を売る場合が考えられます。また、各種ニュースが短期的に特定の企業の株価を左右することもあるでしょう。経済サイクルの自然な浮き沈みによる可能性もあります。
他にも、単に変化や魅力の少ない企業や株式とみなされている場合もあります。定期的にニュースで取り上げられるような企業でないからといって、投資すべき堅実なビジネスや取引に適した株式でないというわけではありません。
この項目では、バリュー株を取引するメリットとデメリットについて解説していきます。
バリュー株を取引する最大のメリットは、大きな値上がり益を狙えることです。なぜなら、市場で過小評価されていた企業の株が、本来の価値に見直されると、株価が大きく回復する可能性が高くなるからです。
例えば、業績は堅実なのに一時的な悪材料で大きく株価が下がった企業の株を購入し、その後問題が解決して株価が元に戻ることで、大きな利益を得られることがあります。このように、バリュー株にはリターンの大きさという魅力があるため、資産形成の一つの有効な手段だといえます。
一方で、バリュー株の取引には大きなリスクも潜んでいます。というのも、株価が割安なままで推移する、いわゆる「バリュートラップ」におちいる可能性があるためです。安い理由が企業の根本的な問題や、市場の長期低迷による場合も少なくありません。
例えば、業績不振が続く企業や、時代遅れのビジネスモデルを持つ企業は、いくら割安に見えても株価が上昇しないだけでなく、むしろさらに下落してしまうことすらあります。したがって、バリュー株は十分な企業分析ができないとリスクが高く、慎重に取引する必要があるのです。
日本株市場では、2021年以降、バリュー株(割安株)が優位な展開が続いています。インフレや金利上昇が進む中、財務基盤が安定し、収益性の高いバリュー株が選好される傾向が強まっています。2025年もこの流れが続く可能性があり、特に金融株や資源関連株が恩恵を受けやすいと考えられます。
また、日本市場にはPBR(株価純資産倍率)1倍割れの企業が多く、東京証券取引所(東証)による資本効率向上の要請を受け、企業が自社株買いや配当増加を進めています。2024年の自社株買いは約17兆円に達し、今後も株主還元の強化が期待されます。
2024年には、商社株や銀行株などのバリュー株が好調でしたが、出遅れたバリュー株の中には2025年に注目されるものもあります。収益力や配当の安定性を重視した銘柄選定がカギとなりそうです。
2025年もバリュー株優位の展開が続く可能性が高いです。インフレと金利上昇、東証のPBR改革、企業の株主還元強化など、バリュー株市場を支える要因は多くあります。今後の市場環境次第では変動もありますが、引き続き注目の投資対象となりそうです。
ここでは、注目のバリュー株5銘柄をご紹介します(株価やその他の数値は、2025年7月8日時点のものです。過去の値動きは、将来の株価動向を示すものではありません)。
さらに、国内にとどまらずアジア、米国などの有力金融機関への出資・提携を通じて、グローバルに収益源を広げているのが大きな強みとなっています。
2025年3月期の決算では、純利益で約1兆1,780億円(前期比+22.3%)を達成し、過去最高益を更新しました。背景には、国内の金利正常化に伴う金利上昇による利ざやの改善があります。
現在の株価は3,587円。予想PERは約11倍、PBRは約1.0倍です。日本のメガバンクは全体的に予想PERが10〜11倍と、国際的に見ても低く評価されがちです。しかし、足元で業績が大幅に改善し、株主還元も強化されている三井住友FGは、今後の評価修正余地が大きいと言えます。
東証が資本効率の向上を強く求める流れの中で、自社株買いや積極的な増配などの株主還元策が行われる可能性も考えられます。約3.8%という高い配当利回りがさらに高まっていけば、長期保有も非常に魅力的な選択肢となるでしょう。
ただし、米国の関税政策の影響によって国内金利の上昇期待が後退し、利ざやの悪化が意識されると、株価が下落しやすくなりそうです。三井住友フィナンシャルグループは「割安・成長・高配当」の三拍子がそろったバリュー株として、ぜひ注目してほしい銘柄です。
2025年3月期の決算は、売上高が約6兆8,104億円(前期比▲1.6%)、営業利益は約2,345億円(同▲15.9%)、純利益は約1,613億円(同▲39.8%)と、燃料価格の低下等によって燃料費等調整額が減少したこと、特別損失に原子力損害賠償費、災害特別損失を計上したことなどが要因となり、大幅な減益となりました。原発再稼働の遅れも影響し、短期的には収益の大きな改善は厳しい状況です。
現在の株価は550円と低迷しており、予想PERは算出不能(柏崎刈羽原子力発電所の再稼働時期が見通せないことから、現時点で予想純利益が未定のため)、PBRは約0.3倍という極端な割安水準にあります。
発電所や送配電網、土地建物などインフラ資産が膨大にもかかわらず、PBRが約0.3倍という水準であることは魅力的です。さらに、原発が柏崎刈羽再稼働すれば、業績が大きく改善する可能性があります。株価も300円台後半を底として大幅に上昇しており、市場の期待の高まりが見て取れます。
もちろん、原発再稼働の不透明さや規制強化リスク、燃料価格の変動、地元自治体・住民との調整など懸念材料は少なくありません。特に再稼働スケジュールが遅れれば、業績改善のタイミングが後ろ倒しになることが考えられます。
原発再稼働の進捗状況や再生可能エネルギー部門の収益拡大、中期経営計画などをしっかりと確認しつつ、中長期的な再評価を狙ってエントリーを検討するのが有効でしょう。
2025年3月期の決算では、営業収益が約48兆367億円(前年比+6.5%)となり、過去最高を更新しました。これは円安効果や販売台数の増加に加え、原価低減の成果も寄与したとされています。
一方で、営業利益は約4兆7,956億円(同▲10.4%)、当期利益は約4兆7,651億円(同▲3.6%)と減益となりました。営業利益の減益は、諸経費の増加(9,900億円)が主な要因です。ただし、人や成長領域への投資は必要なものであり、必ずしも諸経費の増加が悪材料だとはいえません。
現在の株価は2,465円、予想PERは約10倍と、依然として大きな割安感が残る水準です。PBRも約0.9倍で、東証のPBR改革の観点からも見直しが期待されやすい銘柄の一つです。配当利回りも3.85%と高水準になっています。
金利上昇による自動車ローンのコスト増や、トランプ米大統領の関税政策などが懸念材料としてあるものの、トヨタのブランド力と財務基盤を考えれば、安定感のある投資先といえそうです。電動化や次世代モビリティへの投資も継続しており、バリュー株でありながら成長性も備えた、初心者でも検討しやすい銘柄です。
これは前期の4266億円の黒字から一転したもので、中国・日本での販売不振に加え、グローバル規模で実施された工場資産の再評価による5,000億円超の減損損失、600億円以上のリストラクチャリング費用などが主な要因です。営業面でも営業利益が69.8億円(前期比▲87.7%)と大幅に落ち込み、競争激化を背景とした販売奨励金の増加や原材料価格の高騰が経営を圧迫しています。
現在の株価は315.5円、予想PERは計測不能(米国の関税政策による環境の不確実性を踏まえ、現時点で合理的に算定することが困難であるため未定)、PBRは約0.2倍と自己資本を大きく下回る水準です。
しかし、同社は2027年度までに世界で2万人規模の人員削減と、国内外の生産拠点を17から10へ集約する方針を打ち出し、2024年度の実績比で固定費と変動費を計5,000億円削減するという、大規模なコスト改革に着手しています。
今後の焦点は、コストカットが実際に利益率改善につながるかどうか、そして新CEOイバン・エスピノーサ氏の体制下で打ち出されたEV戦略や米国・中国市場向けの新型モデルの販売がどれほど成果を上げるかになります。
これらの改革が奏功すれば、赤字決算を脱却して業績が安定化する可能性があり、その際には株価の急反発も期待できるでしょう。現時点での業績は厳しく、リスクが大きい反面、非常に割安な水準に株価があるため、損失を許容した上で企業再建シナリオを信じる投資家にとっては、値ごろ感があると言えそうです。
同社は国内製鉄事業の再構築や、グローバル戦略の推進、デジタルトランスフォーメーション戦略の推進などを進めています。例えば、海外事業では高い付加価値の確保を図っており、これが収益回復のカギの一つになりそうです。
業績に目を向けると、かつては好調だった世界的な鋼材需要がここ数年は一服しており、2025年3月期の連結決算では売上高が約8兆6,955億円(前期比▲1.9%)、営業利益は約5,480億円(同▲29.6%)、純利益は約3,830億円(同▲34.9%)と、いずれも前年を大きく下回る厳しい減益となりました。主な背景には、中国経済の減速による鋼材重要の低迷や、原燃料価格の高騰があります。
現在の株価は2,761円、予想PERは約15倍、PBRは約0.5倍です。PERはあまり割安感がないものの、PBR(資本面)を見ると自己資本に対して株価が半値以下に抑えられていることが分かります。配当利回りも約4.3%と高く、高水準の株主還元姿勢もうかがえることから、長期保有をする銘柄の選択肢としても魅力的です。
もちろん、米国の関税政策や世界的な環境規制の強化、燃料コストの変動といったマクロ要因は依然として業績を左右しやすく、短期的には株価の不安定さが続く可能性があります。しかし、現状のPBRはリスクを織り込んだうえでの「安全域」と捉えることもでき、国内外のインフラ・自動車需要回復や高付加価値製品の販売拡大が進めば、株価は企業価値に近づく展開が期待されます。
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