ドル円 今週の見通し(8/25週):予想レンジ145.00~148.70、米利下げ期待で利回り格差縮小、下落警戒
8月最終週のドル円展望。週間の予想レンジは145.00~148.70円。パウエルFRB議長の講演で再び高まる利下げ期待。日米金利差縮小でドル円は下落警戒。注目のチャート水準をIG証券のアナリストが分かりやすく解説。

要点
・パウエルFRB議長の講演で米利下げ期待が再び高まっている
・日米利回り格差が縮小傾向にある、今週のドル円は下落相場を警戒したい
・ドル円の週間予想レンジは145.00~148.70円を想定
パウエルFRB議長の講演で再び高まる利下げ期待
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は22日のジャクソンホール講演で、「リスクバランスの変化が政策スタンスの調整を正当化しうる」と述べた。パウエル議長は関税がインフレに与える影響について、「一時的な価格上昇の影響に留まる可能性がある一方、より持続的なインフレ圧力へ発展するリスクも排除できない」と述べ、引き続きインフレ動向を注視する姿勢を維持した。
労働市場については、労働力の供給と需要の両方が著しく減速した「奇妙な均衡(curious kind of balance)」にあると指摘した。この異常な状況は、雇用の下振れリスクの高まりを示唆していること、リスクが現実化すれば解雇の急増と失業率の上昇というかたちで急速に表面化する可能性があるとし、警戒感を示した。
インフレ抑制重視の姿勢を維持してきたパウエルFRB議長が労働市場の先行きに懸念を示したことで、市場参加者の利下げ期待が高まった。OIS(オーバーナイト・インデックス・スワップ)市場での9月利下げの予想確率は80%台へ上昇した。パウエル講演前は、市場予想を上回った8月購買担当者景気指数(PMI)とカンザスシティー地区連銀のシュミッド総裁の利下げに対する消極的な発言を受け、70%前半へ低下していた。12月の予想確率も同じく80%台へ上昇した。一方、10月の利下げ予想確率は50%前半台である。
パウエルFRB議長は今回の講演で、利下げのタイミングについての明確な表現を避けながら、利下げ再開の道筋を示すことに成功したと筆者は考えている。
米FOMC 利下げの予想確率の推移:今年6月以降

ブルームバーグのデータで作成 / OISに基づく予想確率、22日時点
※マイナス:利下げ
じわり上昇する国内金利、縮小傾向の日米金利差、今週のドル円は下落警戒
米FRBの利下げ期待が再び高まり、米債市場では金利に低下の圧力が強まりやすい状況にある。対照的に国内の金利はじわりと上昇している。その結果、日米の利回り格差は縮小の傾向にある。この動きは、ドル円(USD/JPY)の下落要因となろう。
日米利回り格差の動向:日次 年初来

ブルームバーグのデータで作成 / 8月22日まで
国内金利の上昇要因として挙げられるのが、財政懸念と市場参加者が抱く年内の利上げ観測にあると考えられる。前者は、今後の減税議論の情勢とそれを受けた市場の反応を逐一確認することになろう。
目先、注目すべきは後者の利上げ観測である。7月の下旬以降、OIS市場では10月の利上げ確率がじわりと上昇し、先月29日に一時47%近くまで利上げを織り込む局面があった。
日銀 10月利上げ予想確率の推移:日次 6月以降

ブルームバーグのデータで作成 / OISに基づく予想確率、8月22日時点
22日に発表された7月の国内消費者物価指数(CPI)は前年同月比で3.1%上昇した。
変動の大きい生鮮食品を除くコア指数も同じく3.1%上昇した。6月の3.3%から鈍化したが、2024年12月以降3%台を維持する状況にある。
今週29日に8月の東京都区部消費者物価指数(CPI)が発表される。ブルームバーグがまとめた市場予想(前年同月比)によれば、総合指数とコア指数はともに2.6%の伸びが見込まれている。3ヶ月連続で鈍化の見通しにあるなか、予想外に上振れる場合は、年内利上げ期待の押し上げ要因になり得る。
28日に日本銀行の中川順子審議委員が山口県金融経済懇談会で講演し、その後記者会見に臨む。こちらも発言次第で利上げ期待を押し上げる可能性がある。米利下げ期待が高まるなかで、「日銀の利上げ期待の高まり→国内金利の上昇」となれば、ドル円は以下で取り上げるサポートラインの攻防に注目したい。
東京都区部消費者物価指数(CPI):過去1年間の推移

ブルームバーグのデータで作成
ドル円の週間見通しとテクニカル分析
週間予想レンジの下限:145.00
ドル円(USD/JPY)のトレンドを日足チャートで確認すると、RSIは50を下回ってきた(日足チャート、黒矢印を参照)。MACDはゼロラインを視野に低下トレンドにある。先週22日の市場では、一目基準線がレジスタンスラインとなり大陰線での急反落となった。いずれの動きもドル円の上値の重さを示唆している。
今週、ドル円が下値をトライする局面では、以下にまとめたサポートラインの攻防に注目したい。4月22日の安値139.89レベルが基点の短期サポートラインが今週の後半に145.00と交差する。この水準を今週の予想レンジの下限と想定したい。
ドル円が145.00を目指すサインとして、まずは先週22日の急落を止めた50日線の攻防が焦点となろう。この移動平均線は現在、146.70台で推移している。ドル円が50日線を完全に下方ブレイクすれば、重要サポートライン146.00の攻防を意識したい。
米ドル安と円高が重なる局面が多く見られる場合は、146円の下方ブレイクを意識したい。この場合は、現在145.60台で推移している89日線、および4月22日の安値と8月1日高値の半値戻し145.40レベルの攻防が視野に入ろう(日足チャートを参照)。後者のテクニカルラインの下方ブレイクは、145.00をトライするサインと捉えたい。
サポートライン:日足チャート
・146.76:50日線
・146.00:サポートライン
・145.62:89日線
・145.40:半値戻しの水準
・145.00:予想レンジの下限、短期サポートライン
週間予想レンジの上限:148.70
今週は、米国の新規失業保険申請件数と7月の個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)が米ドルの変動要因になり得る。これら経済指標が米ドルの買い戻し要因となれば、ドル円(USD/JPY)は以下にまとめたレジスタンスラインの攻防に注目したい。
パウエルFRB議長の講演を受けた利下げ期待の高まりは、米金利の低下要因となろう。5月12日以降の動きと先週22日の急反落を考えるならば、148.70レベルまでの反発が限界と予想する。この水準を今週の予想レンジの上限と想定したい。
ドル円が148.70レベルをトライするサインとして注目したいのが、今月12日以降、何度か相場の上昇を止めている日足の一目基準線である。現在148.40手前 (148.38レベル)で推移しているこのテクニカルラインを突破すれば、148.70の攻防を意識したい。
ドル円が基準線を目指すサインとして15分足チャートの147.00、147.60そして148.00の各ラインの攻防に注目したい。前者2つのラインは上値抵抗線へ転換する可能性がある。
レジスタンスライン
・148.70:週間予想レンジの上限(日足)
・148.38:日足の一目基準線(日足)
・148.00:レジスタンスライン(15分足)
・147.60:レジスタンス転換の可能性を意識(15分足)
・147.00:レジスタンス転換の可能性を意識(15分足)
ドル円のチャート:日足 4月以降

出典:TradingView
ドル円のチャート:15分足 8月21日以降

出典:TradingView
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