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ドル円週間見通し(3/2週):円安再燃ムード、米雇用統計で上昇拡大も

IG証券のアナリストによるドル円の週間見通し。日銀の利上げ不透明感で円安再燃のムード。強い米経済指標が重なれば上昇拡大も。週間想定レンジは154.00~157.50。

Source:Bloomberg Source:Bloomberg

要点

  • 日銀の利上げ見通しに不透明感が強まっている。外為市場では円安再燃のムードが高まっている
  • 来週は米経済指標がドル円の変動要因となろう。ISM指数と雇用統計に注目
  • ドル円の週間想定レンジは154.00~157.50。157.50レベルを突破すれば、政府・日銀の為替介入に対する警戒感が高まろう。上昇拡大の局面では急反落を警戒したい


円相場と国内市場の動きが示唆すること

2月8日に衆院選の投開票が行われ、自民党が単独で3分の2を超える316議席を獲得した。9日以降(第2週以降)の円相場のトレンドを確認すると、主要通貨(G10)で円高へ振れた。しかし、基準日を1週間後にずらすと、円安の圧力が再び強まっていることが分かる。

円相場の動向

円相場の動向

ブルームバーグの為替データを基に作成

注目すべきは、日本株と国内金利の動向だ。日本株にはIG証券が提供している日本225(日経平均株価のCFD)を採用し、10年債利回り(長期金利)のトレンドと比較すると、衆院選後から「ワニの口」状態にある。

金利の低下は国債買いを意味する。すなわち下のチャートは、衆院選後に株高・債券高が同時進行していることを示している。高市首相の政権基盤が盤石となり、財政政策を"責任ある"かたちで運用していくことへの期待が、このトレンド(ワニの口)が発生している主因と考えられる。

一方、円相場は2月の第2週こそ円高優勢となった。しかし第3週に円高圧力が後退し、今週は円安が進行した。株高・債券高と対照的なこの動きは、円相場を動かすテーマがすでに別のところへシフトしていることを示唆している。そのテーマとは何か。次のセクションで詳しく見ていく。

日本225と10年債利回り 4時間足チャート:年初来

日本225と10年債利回り 4時間足チャート:年初来

TradingView提供のチャート
※日本225:IG証券が提供する日経平均株価のCFD指数


テーマは日銀の金融政策にシフト

日銀の金融政策に対する不透明感が、現在の円相場のテーマと考えられる。衆院選での自民党圧勝と財政規律への期待は円高要因だ。前述の通り、2月第2週の外為市場は円高優勢となった。しかし、現在のトレンドは円安だ。財政懸念の後退がテーマであれば、今週のように円安が進行することはなかったと思われる。

2月24日以降の2つの出来事が、円安圧力を高めた。一つは、24日16時に毎日新聞電子版が配信したスクープ記事だ。「高市早苗首相が日銀の植田和男総裁と2月16日に会談した際、追加利上げに難色を示していた」と報じた。複数の関係者が明かしたとのことだが、具体的な発言内容は不明。ただ「(2025年11月の)前回の会談の時より厳しい態度だった」という。高市首相は自民党総裁就任時(2025年10月)の会見で、「やはり財政政策にしても金融政策にしても責任を持たなきゃいけないのは政府だ」と持論を述べた。経済財政諮問会議のメンバーにも金融緩和・財政拡張を志向する有識者を起用している。

翌25日、政府は任期を迎える2人の日銀審議委員の後任に、高市首相の政策姿勢に近い中央大学名誉教授・浅田統一郎氏(71)と青山学院大学法学部教授・佐藤綾野氏(57)を充てる人事案を国会に提示した。

毎日新聞の報道と政府の日銀人事案—この2つが重なった今週、円は対G10通貨で全面安の展開となった。財政懸念の後退ではなく、利上げ見通しの不透明感を意識した動きと筆者は捉えている。

円相場の動向:2月23日~27日

円相場の動向

ブルームバーグの為替データを基に作成

翌日物金利スワップ(OIS)市場は、4月の利上げを意識する状況にある。しかし、物価データはその見方を裏付けていない。1月の国内消費者物価(CPI)コア指数は2.0%へ鈍化した。また、日銀が基調的な物価変動をより的確に把握するために算出している刈込平均値、最頻値、加重中央値の3指数は2.0%を下回る状況にある。少なくとも物価の観点では、利上げを急ぐ状況にはない。

高市首相が追加利上げで難色を示していることが事実なら、4月の利上げ見通しが後退する可能性がある。3月18~19日の金融政策決定会合と植田総裁の会見までは、利上げの不透明感が円安要因として作用する展開を想定したい。

日本のインフレ動向 前年比:月次 2021年以降

日本のインフレ動向 前年比:月次 2021年以降

ブルームバーグ、日銀のデータを基に作成 / 2026年1月までの動向


米ISM指数と雇用統計に注目、ドル円は上昇拡大も

来週は米経済指標もドル円(USD/JPY)の変動要因となろう。注目は以下の経済指標だ。

注目の米経済指標

  • 2日:2月ISM製造業景気指数
  • 4日:2月ISM非製造業景気指数
  • 6日:2月雇用統計

ISM指数では、総合だけでなく雇用にも注目したい。1月の米生産者物価指数(PPI)はコア指数が前月比(+0.8%)、前年比(+3.6%)といずれも昨年12月から上昇し、インフレの粘着性を示唆した。6月の利下げ期待はじりじりと後退している。ISM指数で堅調な雇用が総合を押し上げる場合は、利下げ期待がさらに後退する要因になり得る。

ISM製造業・非製造業指数の動向:2025年1月以降

ISM製造業・非製造業指数の動向:2025年1月以降

ブルームバーグのデータを基に作成

米FOMC 利下げ確率の推移:3月・4月・6月

米FOMC 利下げ確率の推移:3月・4月・6月

ブルームバーグのデータを基に作成

来週、最大の注目イベントは6日発表の2月雇用統計だ。18日に公表された米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(1月27~28日開催分)では、インフレ再燃への警戒から米連邦準備制度理事会(FRB)内でも利下げの見通しに温度差があることが明らかになった。雇用統計で労働市場の底堅さが示される場合は、「利下げ期待の後退→米ドル買い戻し」の材料となろう。

円安が再燃しつつある中で米ドル高が重なれば、来週のドル円(USD/JPY)は、以下で詳述するチャート水準の攻防に注目したい。

米雇用統計 各項目の動向:2025年1月以降

米雇用統計 各項目の動向:2025年1月以降

ブルームバーグのデータを基に作成 / 赤棒グラフ・ドット:2月の市場予想


ドル円のテクニカル分析、154.00~157.50レンジの攻防

想定レンジの上限157.50
ドル円(USD/JPY)のトレンドを日足チャートで確認すると、MACDはゼロラインを上回りつつある。一目基準線がサポートラインとして意識され、右肩上がりのトレンドチャネル内で推移している状況は、ドル円が強気地合いにあることを示唆している。RSIは50を上回りながらも買われ過ぎ水準までは余裕があり、上値余地が残されている。

来週もドル円が強気地合いを維持する場合は、今週の上昇を止めたフィボナッチ・リトレースメント61.8%水準156.50の攻防が最初の試金石となる。このテクニカルラインをブレイクすれば上昇の勢いが加速しよう。157.00の攻防、そして76.4%戻し157.50が射程圏に入ろう。後者の157.50を来週の上限と予想する。

ドル円は変動拡大の傾向にある。想定を超える上昇で157.50レベルを突破する場合は、158.00のトライを想定したい。ただし短期間での上昇拡大は、政府・日銀による為替介入の警戒感を高める要因となろう。158.00を視野に上昇する局面では、急反落を警戒したい。
注目のチャート水準:レジスタンス
・158.00:節目の水準(日足)
・157.50:上限予想、76.4%戻し(157.54、日足)
・157.00:節目の水準(日足)
・156.50:61.8%戻し(日足)


想定レンジの下限154.00
3月2日に氷見野副総裁が和歌山県金融経済懇談会に出席し、午後2時から記者会見を行う予定だ。毎日新聞の報道や政府の日銀人事案を受けても、OIS市場では60%前後の確率で4月利上げを意識する状況にある。氷見野氏の発言次第では、早期利上げの観測が一時的な円の買い戻し要因となる可能性がある。

ISM指数や雇用統計が予想を下回る内容となれば米ドル安を想定したい。来週、円高と米ドル安が重なる局面が多く見られる場合は、154.00レベルまでの下落を警戒したい。この水準は、2月安値152.27と今週の高値156.82を起点とするフィボナッチ・リトレースメント61.8%にあたる(4時間足チャート)。

ドル円(USD/JPY)が154.00をトライするサインとして、一目基準線、サポート転換の可能性がある155.60レベル(4時間足チャート)、そして21日線の攻防に注目したい。21日線を下方ブレイクすれば、フィボナッチ・リトレースメント38.2%の水準(4時間足チャート)にあたる155.00割れの展開を想定したい。半値戻し154.55も下抜ける場合は、154.00を視野に下落拡大を警戒したい。

時間足のRSIで相場の水準、ADXでトレンドの強さを確認しながら、今回取り上げたレジスタンス・サポート水準の攻防で反落・反発のタイミングを見極めたい。
注目のチャート水準:サポート
・156.00:基準線(日足)
・155.60:サポート転換の可能性あり(4時間足)
・155.00:21日線(155.06、日足)、38.2%戻し(155.08、4時間足)
・154.55:半値戻し(4時間足)
・154.00:下限予想、61.8%戻し(4時間足)

ドル円の日足チャート:今年1月以降

ドル円の日足チャート:今年1月以降

TradingView提供のチャート

ドル円の4時間足チャート:1月下旬以降

ドル円の4時間足チャート:1月下旬以降

TradingView提供のチャート


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