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ドル円 週間見通し(3/23週):海外中銀のタカ派転換、円安再燃で160円突破も

IG証券のアナリストによるドル円の週間見通し。”タカ派”に傾く海外の主要中銀。円安再燃なら160円突破も。ドル円の週間想定レンジは157.50-161.00。

Source:Bloomberg Source:Bloomberg

要点

  • 米国とイスラエルによるイラン攻撃で外為市場では「有事のドル買い」が進行。日本円は対米ドルで2%下落。資源国通貨でも円安が進行する中、対欧州通貨でも円安へ転じるムードにある
  • 「中東不安→原油高→インフレリスクの高まり」を受け、FRBの利下げ期待が急速に後退。他の海外中銀の利上げ観測も急浮上している。日銀が予想通り利上げを進めても、マイナス圏にある実質金利を考えるならば、円安が進行しやすい状況にある
  • 来週のドル円は157.50~161.00レンジを想定。ドル高・円安の同時進行が続けば160.00の突破と161.00のトライを想定したい。一方、米ドル安の進行で下値をトライする場合は、21日線が重なる157.50レベルの維持が焦点となろう


円安再燃を警戒

来週の外為市場では、円安の再燃を警戒したい。米国とイスラエルがイランへの軍事攻撃に踏み切って以降、日本円は対G10通貨で強弱まちまちの状況にある(20日時点)。

対米ドルで2%下落している状況は、「有事のドル買い」圧力の強さを示唆している。一方、豪ドル、カナダドルそしてノルウェー・クローネで円安が進行している状況は、中東不安が資源国通貨買いの要因であることを示唆している。

注目は対欧州通貨の動向だ。ユーロやスイスフランでは円高優勢で推移している。しかし、次第に円安方向へ傾き始めている。この要因の一つが、海外主要中銀の"タカ派"転換にあると考えられる。

日本円の動向:3月以降、20日まで

日本円の動向:3月以降、20日まで

ブルームバーグの為替データを基に作成


“タカ派”に傾く海外中銀、FRB利下げ観測後退、利上げ観測も急浮上

米連邦準備制度理事会(FRB)は、18日の連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利であるFF(フェデラルファンド)レートの誘導目標レンジを3.50-3.75%に据え置くことを決定した。

声明文では中東情勢が米経済に与える不確実性に言及。四半期経済予測(SEP)では、2026年のPCEコアインフレ率予想が2.7%と、昨年12月の2.5%から上方修正された。

ドットチャートでは、2026年のFFレート予想中央値は3.4%だった。昨年12月の予想と同じく、1回利下げの見通しが維持された。しかし、翌日物金利スワップ(OIS)市場では「年内利下げなし」の見通しが急速に強まっている。今年12月の政策金利(上限)の予想水準は3.7%台へ上昇。イラン攻撃の前日(2/27)は3.0%付近だった。

イラン攻撃による中東情勢の長期化懸念は、インフレ見通しのリスクを一段と高めている。FRBがタカ派姿勢への転換を迫られる可能性を、市場参加者は早くも織り込み始めている。

FOMC 政策金利の予想推移

FOMC 政策金利の予想推移

ブルームバーグのデータを基に作成 / 3月20日時点

一方、欧州中央銀行(ECB)とイングランド銀行(英中銀、BOE)が、利上げに転じる可能性が意識される状況にある。

ラガルドECB総裁は19日の会見で、中東情勢により「見通しの不確実性が大幅に高まった」と指摘。物価の上振れリスクにも言及した。

OIS市場では、4月までにECBが利上げに踏み切る可能性を80%の確率で織り込んでいる(20日時点)。また、今年12月の政策金利(預金ファシリティ金利)のターミナルレート(予想)が2.7%台へ上昇。イラン攻撃前日は現在の金利水準である2.0%を下回る1.8%で推移していた。中東の地政学リスクを受け、ECBが今年3回の利上げに踏み切らざるを得ない状況へ追い込まれる可能性を、市場は早くも意識し始めている。

ECB政策金利の予想推移

ECB 政策金利の予想推移

ブルームバーグのデータを基に作成 / 3月20日時点

BOEの利上げ観測も急浮上している。現状、OIS市場では4月利上げの可能性が80%近くに跳ね上がっている。

BOEは19日開いた金融政策委員会(MPC)で3.75%の据え置いた。決定は全会一致(9対0)だった。声明では、中東紛争によるエネルギー高が長期化すれば賃金・価格設定を通じた二次的効果のリスクが増大すると警戒。「より大規模または長期化するショックには、より引き締め的な政策スタンスが必要になる」とした。マン委員は、中東紛争が持続的なインフレショックをもたらす場合、いずれかの時点での利上げも排除しない方向にバランスがシフトしたとの認識を示した。

19日の金融政策委員会(MPC)後、OIS市場では今年12月のターミナルレート(予想)が、イラン攻撃前日の3.2%から4.57%へ上方にシフトした。現状では、少なくとも年内3回の利上げを織り込む状況にある。

BOE政策金利の予想推移

BOE 政策金利の予想推移

ブルームバーグのデータを基に作成 / 3月20日時点

FRB・ECB・BOE以外でも、利上げ観測が広がっている。 カナダ銀行(BOC)は今年6月までに利上げに踏み切り、12月までに政策金利を3%に引き上げることが織り込まれ始めている。

ニュージーランド準備銀行(RBNZ)は、今年7月までに利上げに踏み切る可能性が高い。 12月の政策金利の予想水準は3.4%台に上方シフトし、4~5回の利上げを織り込む状況にある。


日銀の利上げは円高要因にならず

日銀は19日開いた金融政策決定会合で、政策金利である無担保コール翌日物金利の誘導目標を0.75%で据え置くことを決めた。

植田和男総裁は会見でイラン情勢の影響について、原油価格の高騰が続けば交易条件の悪化を通じて景気を下押し、基調的な物価上昇率の押し上げ要因となる可能性があると指摘。景気とインフレどちらを重視するかについては一概に答えることは難しいとし、最終的には2%物価目標の持続的・安定的実現の観点から最も適切に対応していくと述べた。一方、中東情勢が為替に与える影響についてはコメントを差し控えるとし、為替の変動が基調物価に与える影響については、注意して見ていくと発言するにとどめた。

OIS市場では4月利上げ見通し、そして年内2回利上げの見通しに変化は見られない。

日銀 政策金利の予想推移

日銀 政策金利の予想推移

ブルームバーグのデータを基に作成 / 3月20日時点

しかし、日銀の利上げ見通しが円高要因となる可能性は低いだろう。 海外の主要中銀が利下げ、または緩和的な政策姿勢を維持する状況ならば、日銀の利上げは短期的にせよ円高要因となる可能性があった。

しかし、イラン情勢で状況は一変した。海外中銀が総じて"タカ派"に転じる可能性が強く意識されている現在の局面を踏まえるならば、金融政策の正常化で周回遅れの日銀が予想通り2回の利上げに踏み切っても、海外との金利差は縮まりにくい。

実質金利の観点でも、日本円には売り圧力がかかりやすい構図が続いている。名目金利に政策金利、期待インフレ率にCPI(コア・コアコア)を用いて算出した実質金利は、依然としてマイナス圏にある。

一方、米国の実質金利※はプラス圏にある。イラン情勢の不透明感で「有事のドル買い」が続く可能性を考えるならば、来週もドル円(USD/JPY)は、160円の攻防を意識する状況が続こう。
※10年実質金利:名目金利に10年国債利回り、期待インフレ率に10年BEIを採用

日米実質金利の動向:2020年以降

日米実質金利の動向:2022年以降

ブルームバーグのデータを基に作成


ドル円のチャート分析、160円ブレイクを意識する状況に

160円ブレイクなら161円が視野に
ドル円(USD/JPY)のトレンドを日足チャートで確認すると、MACDとRSIはドル円の強気トレンドを示唆している。一目均衡表では、遅行線が日足ローソクを上回る水準にある。また、2月下旬以降、サポートラインとして意識されてきた転換線をすぐに回復した。いずれも、ドル円の強気地合いを示唆する動きだ。

一方、4時間足チャートのRSIも50を上回る状況にある。DMIは+DI > -DIに転じている。ADXが25以上へ上昇すれば強気地合いの加速を意識したい。この場合、最大の焦点となるのが、心理的節目であり重要ラインでもある160.00の攻防だ。

4時間足チャートのフィボナッチ・リトレースメント76.4%水準159.33レベルは、20日の反発を止めた水準だ。このテクニカルラインの突破は、18日高値159.90レベルをトライするサインとなろう。159.90レベルを上方ブレイクすれば、160.00のトライを想定したい。

米ドル高と円安が同時に進行する状況が続けば、160.00をブレイクするだろう。また、この水準が、レジスタンスラインからサポートラインに転換することが予想される。この状況が確認される場合は、次の節目水準161.00レベルを視野に上昇拡大を想定したい。テクニカル面でこのラインは、フィボナッチ・エクステンション100%水準にあたる。この水準を来週の上限と予想する。
注目のチャート水準:レジスタンス
・161.00:上限予想、フィボナッチ・エクステンション100%(161.04)
・160.00:心理的節目、重要ライン
・159.90:3月18日高値
・159.33:76.4%戻し

157.50が新たなサポートラインに
ドル円(USD/JPY)の下落要因として警戒したいのが、米ドル安だ。この点を示唆したのが19日の外為市場だった。この日は、ECBとBOEの利上げ観測が急浮上したことで、欧米時間に米ドル安が進行した。ドル円は前日の終値159.86レベルから1.5%安の場面が見られた。この時、ドル円の下落を止めたのが157.50レベルだった。現在このラインの上には、21日線が推移している。テクニカル面でもサポートラインとして意識されやすい157.50を来週の下限と予想する。

ドル円が157.50レベルをトライするサインとして159.00、158.00の各節目水準の攻防を注視したい。また、158.50レベルの攻防も重要だ。この水準には、2月下旬以降サポートラインとして意識されている日足の一目転換線が推移している。4時間足チャートでも、レジスタンスとしてもサポートとしても意識される局面が見られた(青矢印を参照)。158.50レベルの攻防にも注目したい。
目のチャート水準:サポート
・159.00:節目の水準
・158.50:サポート転換の可能性あり、一目転換線(158.60)
・158.00:節目の水準
・157.50:下限予想、3月19日安値レベル
※移動平均線と一目転換線の水準:3月20日時点


ドル円 日足チャート:2026年以降

ドル円 日足チャート:2026年以降

TradingView提供のチャート

ドル円 4時間足チャート:3月以降

ドル円 4時間足チャート:3月以降

TradingView提供のチャート


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