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ポンドドル (GBPUSD):目先の見通しとチャートポイント

英国政府と英中銀(BOE)は、根強いインフレ圧力の問題に直面している。この状況が意識され、短期金融市場では英中銀の追加利上げを織り込む状況にある。外為市場ではポンド買いの圧力が高まっており、ポンドドルは反発の基調にある。目先、注目しておきたいチャートポイントは?詳細はIG為替レポートをご覧ください。

出所:ブルームバーグ 出所:ブルームバーグ

サマリー

・英国政府と英中銀は物価高と賃金インフレの問題に直面し続けている
・短期金融市場では年内を通して、英中銀が利上げ姿勢を維持することを意識している
・英米中銀が置かれている状況の差が意識され、ポンドドルは反発の基調にある
・目先、注目しておきたいポンドドルのチャートポイントについて


根強いインフレの圧力

英国立統計局(ONS)が今月16日に発表した7月の消費者物価指数(CPI)は前年比で6.8%と、6月の7.9%から減速した。しかし、インフレの基調を示すコア指数は同比で6.9%と、6月から横ばい推移となった。

インフレの低下を阻んでいる要因のひとつが、サービス価格である。そのサービス価格は7月に前年比で7.4%と、前月の7.2%から上昇しインフレ圧力の根強さを示唆した。

英国の消費者物価指数(CPI)の推移

英国の消費者物価指数(CPI)の推移 英国立統計局(ONS)のデータをもとに作成 / 月次:22年7月以降(過去1年間)


賃金インフレも進行中

英国内では高止まりするインフレとそれによる英国民の生活苦を受け、労働争議で賃上げの要求が強まっている。そして英国政府は、23年4月より最低賃金を時給9.50ポンドから10.42ポンドに改定した。

これらの動きを受け、英国立統計局(ONS)が8月15日に公表した4-6月期の賃金動向(週平均賃金3ヶ月)は、ボーナスを除いたベースで前年比7.8%上昇し、2001年に集計を開始して以来の最高を記録した。

上で述べたコアインフレ率とサービス価格が高止まりしている状況も考えるならば、英国政府とイングランド銀行(英中銀、BOE)は、賃金インフレを伴うスパイラルに直面する状況にある。

英国の賃金動向

英国の賃金動向 英国立統計局(ONS)のデータをもとに作成 / 22年7月以降(過去1年間)


年内のすべての会合で利上げが意識される状況に

上で述べたとおり今の英国は、物価高と賃金の上昇が同時に発生するスパイラルに陥っている。

この状況を受け短期金融市場では、英中銀(BOE)が連続利上げでインフレを抑制せざる得ない状況に追い込まれていることを織り込む動きが見られる。

この点について、予想されるターミナルレートの水準を確認すると、レポートの掲載時点で6.0%前後となっている。現在の政策金利の水準は5.25%である。今後、0.25%の利上げを想定する場合(0.5%利上げの可能性もあり得るが)、9月、11月そして12月に開催される残り全ての金融政策委員会(MPC)で英中銀が利上げを決定すること(行わざるを得ないこと)を短期金融市場の参加者が意識する状況にある。

短期金融市場が織り込む英政策金利の予想推移

短期金融市場が織り込む英国政策金利の予想推移 ブルームバーグのデータをもとに作成 /8月 22日12時時点


短期サポートラインを維持し反発ムードが漂うポンドドル

直近のポンドドル(GBP/USD)のトレンドを日足チャートで確認すると、5月25日の安値1.2308レベルを起点とした短期サポートラインを維持しながら、ジワリと反発するムードにある。

そして今日の東京時間に、レジスタンスラインとして意識されてきた20日MA(今日現在1.2755レベル)をローソク足の実体ベースで突破している。

MACDのトレンドを確認すると、シグナルラインを上回るムードにある。ゴールデンクロスの状況が鮮明となる場合は、ポンドドルの地合いの強さを市場参加者に印象付けよう。


英米の中銀が置かれているそれぞれの状況

米国の連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、インフレリスクに対して高い警戒レベルを保ち、金融引き締め姿勢を維持している。

しかし短期金融市場では、7月連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げが最後の利上げになることを織り込む状況にある。追加の利上げが行われるならば、現時点では11月会合の可能性がある。しかし、パウエルFRBの利上げサイクルは最終局面にある。

一方、英中銀(BOE)は、上で述べたとおり高インフレに対抗するために利上げ政策を維持せざるを得ない状況にある。つまり、英米の中銀が置かれている状況には差が生じている。この差が、現在のポンドドルの底堅さの一因になっていると考えられる。

これ(英米中銀が置かれている状況の差)が意識され、ポンドドルが50日MA(今日現在1.2793レベル)をも突破する場合は、テクニカルの面でさらに上値を目指す可能性が高まろう。

ポンドドルが50日MAを完全に突破する場合は、フィボナッチ・リトレースメント38.2%の水準1.2818レベルを視野に上昇幅の拡大を想定しておきたい。このテクニカルポイントは、8月14日に相場の反発を止めたレジスタンスの水準でもある。この時の日足ローソク足は、長い上ヒゲが示現しての陰線引けとなった。ゆえに、1.2818レベルを重要なレジタンスポイントとして意識しておきたい。

ポンドドルのチャート:日足 23年5月以降

ポンドドルのチャート:日足 23年5月以降 TradingView提供のチャートで作成


反落局面での焦点とチャートポイントは?

一方、ポンドドル(GBP/USD)がレポート掲載時点の高値水準(1.2774レベル)で反落する場合は、上で述べた短期サポートラインの維持が焦点となろう。このラインは今日現在、1.2700レベルで推移している(上の日足チャートを参照)。

ポンドドルがこのラインを視野に下値をトライする場合は、サポートへ転換する兆しが見られる1.2765レベル、今週に入り相場をサポートした経緯の見られる1.2750レベルと1.2722レベル、そして昨日の安値1.2710レベルでの攻防に注目したい。最後のサポートポイント(1.2710レベル)の下方ブレイクは、短期サポートラインをトライするシグナルと想定しておきたい。

15分足のストキャスティクスが、直近のトレンドをある程度追っている。他のオシレーター系指標のトレンドを確認しながら、上で述べたサポートポイントで相場が反転するタイミングにあるかどうかを確認したい。

ポンドドルのチャート:15分足 8月18日 欧州タイム以降

ポンドドルのチャート:15分足 8月18日 欧州タイム以降 TradingView提供のチャートで作成

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