【アメリカ株】 来週から関税交渉とハイテク決算の両にらみ、アルファベット決算の焦点 ナスダック100の週間見通し
トランプ関税による貿易戦争を意識した混乱相場はひとまず一服している。しかし米国株の上値は重い。来週から大手ハイテク企業の決算が始まる。ナスダック100は関税交渉に関する新たな報道と決算の両にらみとなろう。

混乱相場は一服するも上値は重い、来週も関税報道を注視
VIXが低下基調にある状況は、トランプ関税リスクを意識した投資家の不安心理がひとまず後退していることを示唆している。米国株の混乱相場はひとまず一服しているが、上値は重い。トランプ米大統領は4月2日(日本時間3日早朝)、相互関税の詳細を発表した。それ以降の日次の変動率を確認すると、一部の国と地域に対する上乗せ関税の一時停止と90日間の交渉期間が発表された9日以外は下落、または限定的な反発にとどまっている。
日本を含め、各国と米国との関税交渉が始まっている。来週もこの件に関する新たな報道が米国株の変動要因となろう。米国市場が混乱してもトランプ米政権は強気の姿勢を維持している。関税を巡り米国と各国との対立がさらに先鋭化すれば、米株安の要因として警戒したい。
米株価指数の日次変動率:4月3日~17日

ブルームバーグのデータで筆者が作成
来週からハイテク決算にらみ、アルファベット決算の焦点と株価の見通し
焦点は業績の見通し
来週からマグニフィセントセブンに名を連ねる大手ハイテク企業の決算が始まる。関税交渉の報道だけでなくハイテク決算の内容も米国株の変動要因となろう。
24日の引け後にグーグルの持ち株会社アルファベット(GOOGL)が2025年1-3月期(第1四半期、以下では1Q)の決算を発表する。ブルームバーグがまとめたアナリスト予想によれば、売上高は前年同期比10.66% 増の891億2,700万ドル、1株利益は同比6.20%増の2.01ドルと増収増益の見通しにある。
焦点は業績見通しとなろう。ブルームバーグがまとめた4-6月期(第2四半期/以下2Q)の見通しでは、売上高が前年同期比10.26% 増の934億3,800万ドル、1株利益が同比12.38%増の2.12ドルが予想されている。
アルファベットの売上高と1株利益の推移:2020年以降

ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 赤の棒グラフ:1Q予想、4月19日時点
厳しい広告収益、鍵はクラウド事業の成長性
ChatGPTなどLLMベースの検索プロバイダーとの競争が激化し、アルファベットの1Qのデジタル広告収益の伸びは前年同期比7.73%増の664億2,600万ドルと、一桁台の低い成長にとどまる見込みである。2Qの見通しも同比7.52%増の694億7,800万ドルと、低成長が続く見通しにある。
一方、成長の柱として期待されているのがクラウド事業である。1Qは前年同期比28.62%増の123億1,400万ドルが見込まれている。2Qも同比27.77%増の132億2,000万ドルと、1Qに続き伸び率が二桁の見通しにある。2023年以降黒字へ転換している営業利益も1Qは前年同期比115.60%増の19億4,000万ドル、2Qは同比85.38%増の21億7,300万ドルと堅調な伸びが期待されている。
アルファベットのSachin Gupta氏はCloud Next 25(今月9日~11日開催)で、関税によりハードウェアの輸入コストが上昇する可能性について言及した。一方で、データセンターインフラの拡張に約750億ドルを投資し、クラウドコンピューティング分野での 同社の地位強化に意欲を示した。クラウド事業の業績見通しが投資家の期待に応えることができるのかどうか?この点が、目先の株価トレンドを決定する大きな要因となろう。
クラウド収益の推移:2020年以降

ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 赤の棒グラフ:1Q予想、4月19日時点
クラウド営業利益の推移:2022年以降

ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 赤の棒グラフ:1Q予想、4月19日時点
アルファベット2Qの業績予想
・売上高:934億3,800万ドル(前年同期比10.26%増)
・1株利益:2.12ドル(前年同期比12.38%増)
・クラウド収益:132億2,000万ドル(前年同期比27.77%増)
・クラウド営業利益:21億7,300万ドル(前年同期比85.38%増)
※4月19日時点
アルファベットの株価動向
アルファベット(GOOGL)は、前回の決算(4Q決算)で投資家の期待に応えることができなかった。2023年以降の株高トレンドを象徴するサポートラインを下方ブレイクし下落トレンドが鮮明となっている今の状況は、決算の重要性を示唆している。ゆえに、来週の決算内容が投資家の失望を誘えば、さらなる下値のトライを警戒したい。
目先注目のサポートラインは、2月以降の下落をひとまず止めたフィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準140.70ドルである。来週の決算が株価の下落要因となれば、このテクニカルラインを下方ブレイクし、もう一つのフィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準131.54ドルのトライを想定したい。後者のテクニカルラインをも下方ブレイクする場合は、2023年10月の安値120.21ドルが視野に入ろう。
一方、決算内容が株高の要因となれば、13週線と52週線が推移している172ドルおよび173ドルまでの反発を想定したい。デッドクロスの状況にあるこれら移動平均線がレジスタンスラインへ転換すれば、弱気地合いの印象を市場参加者に与えるだろう。決算が株高の要因となっても現在の米国株の地合いの弱さ、そして中国の新興企業ディープシークの台頭により巨額のインフラ投資が逆にリスク要因として意識される可能性があることも考えるならば、株価の反発局面では反落の可能性を意識したい。
アルファベットの株価:週足 2022年11月以降

出所:TradingView
ナスダック100の週間見通しと注目のテクニカルライン
引き続き下値リスクを意識、週間の予想レンジ下限は17,000
IG証券の米国テク株100(ナスダック100が原資産のCFD、以下ナスダック100)の1時間足でトレンドを確認すると、4月9日の反発以降、ジリジリと上値の水準が切り下がる状況にある。ゼロラインを下回り続けるMACDのトレンドも考えるならば地合いは弱い。この点は日足のMACD、DMI、ADXのトレンドも示唆している。
新たな関税交渉の報道とアルファベット(GOOGL)の決算が米株安の要因となれば、来週のナスダック100は以下にまとめたサポートラインの攻防を意識したい。週間の予想レンジ下限は17,000ポイント。この水準は、4月第2週目の高安のフィボナッチ・リトレースメント76.4%戻し(17,013)にあたる。
日足の一目転換線が17,888レベルで推移している。1時間足の半値戻しの水準17,786ポイントとともにサポートゾーンとして相場を下支えする可能性がある。61.8%戻しの水準17,441ポイントの下方ブレイクは、17,000ポイントをトライするサインと考えたい。
サポートライン
・18,000:サポートライン(1時間足)
・17,888:一目転換線(日足)
・17,786:半値戻し(1時間足)
・17,441:61.8%戻し(1時間足)
・17,000:76.4%戻し、予想レンジの下限(1時間足)
反発局面での焦点は20日線の攻防、週間の予想レンジ上限は19,250
一方、ナスダック100(米国テク株100)が反発する場合は、4月9日の急反発の相場を止めた20日線の突破が焦点となろう(日足チャートを参照)。この移動平均線は短期レジスタンスラインと並んで推移している。ナスダック100が20日線をトライするサインとして、まずは日足の一目基準線の突破とサポートラインの転換を確認したい。
ナスダック100が20日線を完全に突破すれば、19,000ポイントのトライが視野に入ろう。テクニカルの面でこの水準は、フィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準(19,030ポイント)にあたる(米国テク株100、1時間足の赤ラインを参照)。
新たな関税交渉の報道とアルファベットの決算が株高の要因となれば、短期間で下落幅が拡大した反動でナスダック100は19,000ポイント台へしっかりと上昇する可能性がある。このケースでは、今月9日の急反発時の高値19,250レベルのトライを想定したい。日足チャートでは大陽線の高値水準である。19,250レベルを週間の予想レンジの上限と想定したい。
レジスタンスライン
・19,250:4月9日の高値、予想レンジの上限(1時間足)
・19,000:76.4%戻し(1時間足、日足)
・18,931:20日線(日足、17日時点)
・18,417:一目基準線(日足、17日時点)
米国テク株100のチャート
1時間足:4月以降

出所:IGチャート
ナスダック100のチャート
日足:2月以降

出所:TradingView
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