世界最大の経済大国である米国は、投資環境や法整備の良さから、日本を含め世界中から多くの投資家を惹きつけています。この記事では、注目の米国株5銘柄を紹介します。いずれも、成長性などを総合的に考慮して選定しています。
米国株とは、その名の通り「米国の企業が発行している株式」のことです。世界の株式市場全体の時価総額のうち、実に4割以上を占めるほど巨大な米国市場の株式を、私たちは多くの日本の証券会社を通じて手軽に取引できます。そのため、これから資産形成を始める初心者にとって、米国株は日本の資産だけに偏らないようにするための分散投資の有力な選択肢となります。
半導体のNvidiaや検索エンジンのAlphabet(Google)、ネット通販のAmazonなど、米国には世界を代表する優良企業が多いうえ、米国株は1株から購入できる銘柄がほとんどであることから、少額からでも気軽に始めやすいのが特徴です。例えば、あなたが使っているスマートフォンがiPhoneなら、その製造元であるAppleの株を1株から買うことができます。
このように、米国株は「世界的な有名企業の株主になれる」、「少額から手軽に始められる」など、投資初心者にとって嬉しいポイントが詰まった投資先です。「海外への投資はなんだか難しそう」と感じていた方も、この機会に米国株投資の世界を少し覗いてみてはいかがでしょうか。
世界最大の経済大国です。名目GDPは28兆7800億ドル、一人当たりのGDPは85,370ドルです。米国は19世紀後半から世界最大の経済大国であり、第二次世界大戦後はその規模をさらに拡大させました。
加速するインフレや新型コロナウイルス感染症、世界経済危機や自然災害など、米国は過去数十年間で様々な課題に直面してきました。直近2年間も、同国の経済力は少し弱まりました。しかしながら、その経済規模はいまだ世界最大です。
2024年第3四半期の成長率は前期比年率2.8%と堅調に推移しています。市場予想(2.0%)を大きく上回り、アトランタ連銀が発表している予測(2.6%)とほぼ一致する結果となりました。
また、2008年の金融危機以来、米国の債務残高の対GDP比も大幅に上昇しており、現在では123%となっています。
米国の経済を牽引するセクターはサービス業です。ヘルスケア、テクノロジー、小売などがあたります。GDPのうちおよそ78%を占めるのがサービス業で、残りは工業と農業です。
2025年夏現在、米国株市場ではFRB(米連邦準備制度)の金融政策に対する注目が一段と高まっています。背景には、インフレ動向、関税政策、そして来年に控えるFRB議長の交代可能性といった複数の要因があります。
FRBは現在、政策金利を4.25~4.50%に据え置いています。市場の一部では「早ければ7月にも利下げがあるのでは」との期待もありましたが、実際に7月の利下げを支持したのはFOMC(連邦公開市場委員会)の参加者19人中わずか2人でした。多くの委員が、トランプ政権による関税政策の影響が不透明であることから、慎重な姿勢を維持しているようです。
一方で、年内に1~2回の利下げを見込む声も根強く、FRBのドットプロット(政策金利見通し)でも多数の委員が年内の緩和を支持していることが示されています。また、FRBのウォラー理事は、バランスシートの縮小は続けつつも、あまり過剰に進める必要はないとの見解を示しており、流動性への過度な懸念はやや後退しつつあります。
さらに注目されるのは、2026年に任期満了を迎えるパウエル議長の後任問題です。トランプ大統領は「利下げに前向きな人物を指名する」と明言しており、ウォラー理事やマルパス前世界銀行総裁らが候補として取り沙汰されています。ただし、金利の決定にはFOMC内での合意が必要であり、新議長が就任してもすぐに大幅な利下げが実施されるとは限りません。
このように、FRBの政策スタンスは全体として慎重ですが、市場では年内の利下げ期待が織り込まれつつあります。また、AI関連株の好調や、センチメントの改善(VIX指数の低下など)も相まって、米国株には引き続き前向きなムードが漂っています。短期的には経済指標や要人発言に左右されやすい展開が続きそうですが、中長期的には金融政策の柔軟性と企業の成長期待が支えとなり、株式市場にとって追い風になる可能性もありそうです。
米国株は日本の個人投資家の間で高い人気を誇ります。しかし、実際に始める前に知っておくべき点がいくつかあります。
メリットとデメリットをしっかり理解し、自身に合った投資判断ができるようになりしておきましょう。
米国株投資のメリットは、なんと言ってもその「高い成長性」と「世界的な優良企業に投資できる」という点です。
米国は世界経済の中心であり、今もなお人口が増え続けているなど、国全体として長期的な成長が見込まれています。その成長を象徴するのが、米国の代表的な株価指数である「S&P500」です。S&P500は短期的な浮き沈みはありながらも、過去数十年間にわたって右肩上がりの成長を続けており、米国経済全体の力強さを物語っています。
また、私たちの生活に身近なiPhoneのAppleや、パソコンOSのMicrosoft、動画配信のNetflixなど、世界を舞台に活躍し、高い技術力とブランド力で市場をリードする革新的な企業に直接投資できるのは、米国株ならではの大きな魅力です。
また、日本の株式は100株単位での購入が基本ですが、米国株はほとんどの銘柄が1株から購入できます。したがって、少額から始められるため、初心者でも気軽に取り組めます。
このように、「将来への大きな期待感」、「世界トップクラスの企業への投資」、そして「投資の始めやすさ」が、米国株が多くの投資家から選ばれる最大の理由だと言えるでしょう。
一方で、米国株に投資する際には注意すべき点もあります。特に知っておきたいデメリットは「為替変動リスク」と「情報収集の難しさ」です。
米国株は米ドルで取引を行うため、株価そのものだけでなく、日本円と米ドルの為替レートの動きが、資産価値に影響を与えます。
例えば、1ドル150円の時に100ドルの株(日本円で15,000円)を買ったとします。その後、株価が110ドルに値上がりしても、為替レートが1ドル130円の「円高」になっていたらどうでしょう。日本円に換算すると「110ドル×130円=14,300円」となり、ドルベースでは利益が出ていても、円ベースでは損失が発生してしまいます。
また、企業の公式情報や現地のニュース速報は英語が基本となるため、情報の鮮度や量という面で、少しハンデがあることも事実です。ただし、最近では日本の証券会社が詳細なレポートを日本語で提供したり、専門のニュースサイトも増えたりしているため、情報収集のハードルは以前より格段に下がっています。
このように、為替の動きに資産が左右される可能性や、日本との言語の違いは、米国株投資を始める前に心に留めておきたいデメリットです。為替の動きを意識したり、無理のない情報収集の方法を見つけたりと、米国株と賢く付き合っていくことが大切です。
米国株のうち、注目銘柄を5つ紹介します(価格と株価推移は2025年10月20日時点の引用です。また、過去の値動きは、将来の株価動向を示すものではありません)。
NVIDIAは、AI革命を牽引する世界的な半導体メーカーです。AIのトレーニングや推論に用いられるGPU(画像処理半導体)で、約8割という圧倒的なシェアを誇っています。
NVIDIAの強みは単に高性能なハードウェアを提供するだけでなく、それを動かすためのソフトウェアプラットフォーム「CUDA」を一体で提供し、開発者を強力に囲い込むエコシステムを構築している点にあります。このハードとソフトの両輪による戦略が、競合他社に対する高い参入障壁となり、AIコンピューティングにおける支配的な地位を確立できているのです。
現在、中期的な成長のカタリストとして市場の期待を集めているのが、次世代アーキテクチャ「Blackwell」です 。Blackwellアーキテクチャは前世代の「Hopper」と比較して性能とエネルギー効率を飛躍的に向上させており、AmazonやGoogle、Meta、Microsoftといった世界の主要テクノロジー企業がこぞって採用を表明しています。
一方で、投資におけるリスク要因も無視できません。米中間の地政学リスクは依然として大きく、輸出規制の動向は事業の不確実性要因です。また、急成長する市場を背景に、一部では「AI関連企業への投資が過熱し、バブルの様相を呈している」との指摘もあります。
2025年5~7月期の決算では、売上高が約467億ドル(前年同期比+55.6%)、純利益は約264億ドル(同+59.1%)と、大幅な増収増益を続けています。AI向け半導体の需要が好調で、売上高と純利益ともに四半期として過去最高となりました。
現在の株価は182.64ドル、調整後PERは約52倍、PBRは約44倍と、非常に割高感があります。これは高い成長期待を織り込んだ水準だと言えます。
NVIDIAはAIという巨大な構造変化の波に乗り、驚異的な成長を続けている企業です。地政学リスクや高いバリュエーションといった課題はありますが、AI時代のコンピューティングプラットフォームを支配する同社の競争優位性は揺るぎなく、中長期的な成長ポテンシャルは引き続き大きいと考えられます。
Advanced Micro Devicesは、AI革命の中核を担う世界的な半導体メーカーの一つです。同社はデータセンターやPC向けに高性能なCPU(EPYC、Ryzen)とGPU(Instinct)の両方を提供しており、特にAI分野ではNVIDIAの強力な対抗馬として市場の注目を集めています。
中期的な成長の鍵を握るのは、AI向け半導体事業の拡大です。今年10月にはOpenAIとの戦略的パートナーシップを発表し、OpenAIの次世代AIインフラ向けに、Instinct GPUを合計6ギガワット規模で供給する予定であるとしました。このニュースは市場に大きなインパクトを与え、提携発表後に株価は急騰し、多くのアナリストが目標株価を引き上げる要因となりました。
一方で、投資におけるリスク要因も存在します。最大の課題はNVIDIAが支配するAI向けGPU市場での熾烈な競争です 。OpenAIはNVIDIAとも、より大規模な10ギガワット規模のAIインフラ導入で合意しています。
また、米中間の地政学リスクに伴う輸出規制は、依然として事業環境の不透明要因となっています。さらに、AIブームを背景に株価は高い成長期待を織り込んでおり、市場の期待に応えられない場合は株価が大きく変動する可能性もあります 。
2025年4~6月期の決算では、売上高が約76億ドル(前年同期比+31.7%)、純利益は約8億7000万ドル(同+229.0%)と、非常に力強い成長を記録しました。AIとコンピューティング需要がこれを牽引し、過去最高の四半期売上を達成しています。
現在の株価は240.56ドル、調整後PERは約138倍、PBRは約6.5倍と、非常に高い成長期待を反映した水準です。
Advanced Micro Devicesは、AIという巨大な市場でNVIDIAに挑むチャレンジャーとして、OpenAIとの提携をテコに着実にその地位を固めています。競争の激化や地政学リスクといった課題はありますが、CPUとGPUを両輪で提供できる独自の強みを生かし、AI市場の成長を取り込むことで、中長期的な株価上昇のポテンシャルは大きいでしょう。
JPMORGAN CHASE & COは米国最大の金融機関であり、個人向け銀行業務から投資銀行、資産運用に至るまで、世界中で多岐にわたる金融サービスを提供しています。その圧倒的な規模と事業の多様性が、同行の大きな特徴です。
主な強みは、強固な財務基盤と市場でのリーダーシップです。多角化された収益源は、特定の市場環境の変動に対する高い耐性をもたらしています。この経営の安定性と一貫した収益力が、市場から高い評価を受ける要因です。
ただし、米国経済が景気後退に陥った場合、貸出の伸びが鈍化し、企業の倒産増加による貸倒れ費用が増加する可能性があります。また、世界最大級の金融機関として、常に厳しい金融規制の対象となっており、新たな規制強化が自己資本や収益性を圧迫する可能性も念頭に置く必要があります。
2025年7~9月期の決算では、売上高が約464億ドル(前年同期比+8.8%)、純利益は約143億ドル(同+11.5%)と、増収増益を達成しました。史上最高値圏で推移する米株式相場を追い風に、トレーディング業務が好調でした。
現在の株価は302.36ドル、調整後PERは約14倍、PBRは約2.4倍と、利益面では若干ではあるものの割安感があります。
想定以上の景気後退や金融市場の混乱が起これば株価にはネガティブ要因になりますが、今後もその強靭なビジネスモデルを背景に、安定した成長が期待されます。
Bank of America Corpは米国の主要金融機関の一つであり、リテールから商業・投資銀行、資産運用に至るまで、幅広い金融サービスを提供しています。
広範な事業基盤を主な強みとしており、巨大なリテール預金基盤が金利変動から恩恵を受ける一方、近年強化された投資銀行部門が収益の柱の一つに成長しており、このハイブリッドモデルが経営の安定性に寄与しています。
ただし、米国経済が景気後退に陥った場合、貸出の伸びが鈍化し、企業の倒産増加による貸倒れ費用が増加する可能性があります。また、大手金融機関として、金融規制の動向が経営に影響を与えやすいことも考慮すべきです。
2025年7~9月期の決算では、売上高が280億ドル(前年同期比+10.8%)、純利益が80億ドル(同+26.0%)と、増収増益を達成しました。特に、トレーディング収入と投資銀行手数料が業績を牽引しました。
現在の株価は52.04ドル、調整後PERは約14倍、PBRは約1.3倍と、利益面では若干ではあるものの割安感があります。
Bank of America Corpは投資銀行部門の力強い成長と、金利収入の安定性が両立するビジネスモデルが機能しており、市場の評価も高まっています。米国経済が想定以上に減速するような事態にならなければ、今後も着実な成長が期待できそうです。
Eli Lilly and Coは医薬品を開発、製造、販売する世界有数の製薬会社です。糖尿病や肥満症、がん、免疫疾患、神経疾患といった幅広い領域で、革新的な医薬品を取り扱っています。
主な強みは、糖尿病治療薬「マンジャロ」と肥満症治療薬「ゼップバウンド」が、市場を席巻している点です。これらの製品は2025年上半期の売上の半分以上を占めるなど、世界的な需要に支えられています。
また、アルツハイマー病治療薬「ケサンラ」が米国や日本、中国で承認されたことや、経口GLP-1薬「オルフォルグリプロン」を含む豊富な開発パイプラインも、将来の成長を支える強固な基盤となっています。さらに、急増する需要に対応するため、米国で4つの新工場に270億ドルを投資する計画を発表するなど、製造能力の拡大にも積極的です。
ただし、近年、薬価引き下げ圧力が高まっており、特にトランプ大統領がGLP-1薬の価格引き下げに言及していることから、政治的な動向が収益に影響を与える可能性があります。また、売上の半分以上をマンジャロとゼップバウンドに依存しているため、競合製品の登場や供給上の問題が発生した場合の影響も懸念されます。
2025年4~6月期の決算では、売上高が約155億ドル(前年同期比+37.6%)、純利益が56億ドル(同+90.7%)と、大幅な増収増益を記録しました。
2025年度通期(2025年1月1日~2025年12月31日)の見通しについては、売上高を以前の580億〜610億ドルから600億ドルから620億ドルの範囲へと上方修正しています。
現在の株価は808.96ドル、調整後PERは約52倍、PBRは約41倍と、高い成長期待を反映した水準です。
今後としては、GLP-1薬のさらなる市場浸透や、オルフォルグリプロンなど開発中の新薬の進展が株価のプラス要因となる可能性があります。一方で、薬価規制の強化や競争の激化、主要製品への高い依存度といったリスクの顕在化には注意すべきでしょう。
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