クリーンエネルギー(再生可能エネルギー)は化石燃料の2倍速で普及しており、二酸化炭素排出量の削減に貢献しています。ここでは、クリーンエネルギー関連株5選を紹介します。いずれも、事業展開や成長性などを総合的に考慮して算出しています。
クリーンエネルギー株とは、太陽光・風力・水力・地熱など、枯渇しない自然の力を活用して電力を生み出す「再生可能エネルギービジネス」に携わる企業の株式を指します。環境保護への寄与だけでなく、今後の成長も期待できる分野であるため、初心者が投資先を検討する際の有力な選択肢の一つだと言えるでしょう。
例えば、各国政府や企業は温室効果ガス排出量の削減目標を掲げており、再生可能エネルギーの需要は今後も増加すると見込まれています。補助金や税制優遇、固定価格買い取り制度など、国や地域によるサポートが、投資のリスクを相対的に抑えていることも魅力です。
クリーンエネルギー株は環境課題の解決に貢献しつつ、世界的な潮流に乗った成長機会を狙えます。もちろん投資である以上、価格変動リスクは避けられません。しかし、中長期的な視点でポートフォリオに取り入れることで、社会的意義とリターンの両方を追求することが可能です。
ここでは、注目のクリーンエネルギー関連銘柄5選を紹介します。株価やその他の数値は2025年11月5日時点の引用です。また、過去の値動きは将来の株価動向を示すものではありません。
パナソニックホールディングスは、従来の家電メーカーから脱却し、電気自動車(EV)向け車載電池を中核とするクリーンエネルギーソリューション企業への転換を進める企業として注目されています。特に、米国のEV大手Teslaへの主要サプライヤーとしての地位と、北米での大規模な電池工場展開は、同社の成長戦略の根幹を成しています。
クリーンエネルギー戦略の中心は、パナソニックエナジーが担う車載電池事業です。2025年9月には米国カンザス州で新工場を開所しています。
足元の業績は厳しい状況に直面していますが、ポイントとなるのは同社の決算で「蓄電システムなどで販売増が見込まれる」と明確に記載している点です。大型蓄電池はSBI証券が「2025年は大型蓄電池元年になる」と予想するなど、世界的な需要増が期待されており、これが現実のものとなりつつあることが示されています。
2026年3月期第2四半期(2025年4月1日~2025年9月30日)の決算では、売上高が約3兆8,205億円(前年同期比-10.1%)、営業利益は約1,650億円(同-23.6%)、親会社の所有者に帰属する中間純利益が約1,424億円(同-23.6%)と、大幅な減収・減益となりました。これは、期待されていたエナジー事業(車載電池)が想定以上に悪化したことが響いたためです。
2026年3月期の通期(2025年4月1日~2026年3月31日)は下方修正され、売上高が7兆7,000億円(前期比-9.0%)、営業利益は3,200億円(同-25%)、親会社の所有者に帰属する当期純利益は2,600億円(同-29.0%)を見込んでいます。
現在の株価は1,703円、予想PERは約15倍、PBRは約0.8倍と、資産面から見ると割安感があります。
パナソニックホールディングスはEV電池と水素関連を両輪としてクリーンエネルギー分野への移行を進めていますが、その中核であるEV電池事業が直近で急減速しており、市場の懸念を招いています。しかし、世界的な需要増が予想される蓄電システムで販売増が見込まれており、これが現実のものとなるかが同社の成長を左右しそうです。
住友電気工業は、世界の脱炭素化とクリーンエネルギーへの移行を支える基幹技術を有する企業として、市場から強い関心を集めています。特に、再生可能エネルギー導入拡大に不可欠な電力網の構築・安定化技術において、同社は中核的な役割を担う存在です。
同社の強みは、洋上風力発電所などで発電された電力を陸地へ送るための高圧海底送電ケーブル技術にあります。世界的に洋上風力プロジェクトが拡大する中で、この分野での高い技術力と実績は大きな受注機会に繋がっています。
2026年3月期第2四半期(2025年4月1日~2025年9月30日)の決算では、売上高が約2兆3700円(前年同期比+5.6%)、営業利益は約1,530億円(同+28.2%)、親会社株主に帰属する中間純利益は約979億円(同+29.3%)と、大幅な増益を達成しました。情報通信関連事業が大幅な増収・増益となったほか、自動車関連事業も堅調に推移しました。生産性改善やコスト低減、売値改善の取り組みも奏功しています。
2026年3月期では、売上高が4兆7,500億円(前期比+1.5%)、営業利益は3,400億円(同+6%)、親会社株主に帰属する当期純利益は2,300億円(同+18.7%)を見込んでいます。業績の好調さを反映し、上方修正されています。
現在の株価は5,902円、予想PERは約20倍、PBRは約1.9倍と、利益面と資産面共に割高感は否めません。これはグリーンエネルギー関連としての将来性が、株価に織り込まれ始めている結果だと言えるでしょう。
住友電気工業は海底ケーブルによる送電インフラを始めとする、クリーンエネルギー時代を担う技術を有しています。前述したパナソニックが「蓄電池」そのものだとすれば、住友電工はそれを電力網に繋ぎ込むための「ツルハシとシャベル」です。好調な足元の業績や、脱炭素という世界的な長期トレンド、蓄電池の需要増加期待を背景に、住友電気工業は今後も中長期的な成長が見込まれます。
ENEOSホールディングスは、国内最大の石油元売り企業としての地位を確立しつつ、脱炭素社会の実現に向けたクリーンエネルギー分野への事業転換を模索している企業です。既存の強固な石油事業を基盤としながら、次世代エネルギーへの戦略的な投資を進める姿勢が市場から注目されています。
同社はクリーンエネルギー分野において、特に再生可能エネルギーと水素・合成燃料に注力しています。2025年11月には、下松第4メガソーラー発電所が商業運転を開始しました。
一方で、期待されていた合成燃料「e-fuel」については、2025年10月に建設費高騰などを理由としてパイロットプラントの建設を無期延期すると報じられており、技術的なハードルとコスト面での課題に直面している側面も浮き彫りになりました。
2026年3月期第1四半期(2025年4月1日~2025年6月30日)の決算では、売上高が約2兆8,700億円(前年同期比-4.2%)、営業利益は約503億円(同-59.7%)、親会社の所有者に帰属する四半期利益は約-145億円(前年同期は約816億円の黒字)と、大幅な減益となりました。石油製品の販売数量減少や、米国の関税の影響による石油化学製品のマージン悪化が減益の主な要因となっています。
2026年3月期通期では、売上高が11兆7,000億円(前期比-5.1%)、営業利益は3,600億円(同+239.3%)、親会社の所有者に帰属する当期利益は1,850億円(同-18.2%)を見込んでいます。
現在の株価は964.6円、予想PERは約14倍、PBRは約0.9倍と、利益面と資産面共に若干割安感があります。約3.1%という高い配当利回りも魅力です。
ENEOSホールディングスは、石油事業という強力な収益基盤を持ちながら、メガソーラーの稼働など再生可能エネルギー分野で着実な進展を見せています。一方で合成燃料事業では課題にも直面しており、伝統的エネルギー企業からクリーンエネルギー企業への転換は途上にあります。今後のエネルギー転換戦略の進捗が、中長期的な企業価値を左右すると言えそうです。
東京電力ホールディングスは、福島第一原子力発電所の廃炉・賠償という重い経営課題を抱える一方で、国内最大の電力会社としてクリーンエネルギー供給の責務も担う企業です。同社の株価は、柏崎刈羽原子力発電所の再稼働という最大の経営変数に左右される展開が続いており、市場の注目が非常に高まっています。
クリーンエネルギー銘柄としての同社を分析する上で、原子力発電は脱炭素電源の中核として位置づけられます。最大の焦点である柏崎刈羽原子力発電所の再稼働については、2025年11月に新潟県の花角知事が「近いうちに私の考え方を示す」と述べるなど、再稼働に向けたプロセスが具体的に進展中です。
さらに、2025年8月には東京都の母島における再生可能エネルギー100%電力供給実証や、住宅太陽光発電サービス「すみふ×エネカリ」の実証実験開始を発表するなど、多角的にクリーンエネルギー事業を進めています。
2026年3月期第2四半期(2025年4月1日~2025年9月30日)の決算では、売上高が約3兆1,503億円(前年同期比-6.1%)、営業利益は約2,171億円(同+9.1%)、親会社株主に帰属する中間純利益は約-7,124億円(前年同期は約1,896億円の黒字)と、売上高と純利益が減収・減益となりました。ただし、売上高減少の一方で営業利益や経常利益は増加しており、コスト削減や効率化の取り組みが一定の成果を上げているようです。
2026年3月期通期については、柏崎刈羽原子力発電所の再稼働時期を見通せないことから、現時点で売上高や純利益などが未定となっています。今後、業績見通しが示せる状況になった段階で速やかに公表される予定です。
現在の株価は818.5円、予想PERは算出不能(現時点で予想純利益が未定のため)、PBRは約0.4倍という極端な割安水準にあります。発電所や送配電網、土地建物などインフラ資産が膨大にもかかわらず、PBRが約0.4倍という低水準であることは魅力的です。
東京電力ホールディングスは巨額の福島関連費用という財務的負担と、柏崎刈羽再稼働による収益性の大幅改善という期待が交錯する銘柄です。もし再稼働が実現すれば、クリーンエネルギーによる収益構造の抜本的な転換が進むことが期待されます。
Nextera Energy Incは米国最大級の電力会社であり、太陽光や風力発電といった再生可能エネルギー分野の世界的リーダーです。最近では、AI(人工知能)インフラの爆発的な電力需要に対応する同社の戦略が注目を集めています。
特に、2025年10月27日に発表されたGoogleとの歴史的な提携は、クリーンエネルギーとAIの未来を定義する重要な動きです。この提携は2020年に停止したアイオワ州唯一の原子力発電所(Duane Arnold Energy Center)を再稼働させるという画期的な内容です。
Googleは同社のAIおよびクラウドインフラに電力を供給するため、この発電所の電力(615 MW)を25年間という長期契約で購入します。AIデータセンターが必要とする「24時間365日」のカーボンフリー電力を、従来の再生可能エネルギー(太陽光・風力)だけでまかなうのは難しく、ベースロード電源としての原子力が再評価される大きな契機となりました。
2025年7~9月期決算では、売上高が約80億ドル(前年同期比+5.3%)、純利益が24億ドル(同+31.6%)と、大幅な増益を達成しました。同社の子会社であるFlorida Power & Lightや、クリーンエネルギー事業であるNextEra Energy Resourcesへの継続的な投資が好業績に結びつきました。
現在の株価は82.14ドル、調整後PERは約26倍、PBR約2.7倍と、利益面と資産面ともに割高感があります。これは同社の将来の成長期待を織り込んでいるからだと考えられます。
Nextera Energy Incは従来の再生可能エネルギー事業のリーダーであると同時に、AIインフラという新たな巨大需要に対して、原子力という現実的かつクリーンな解決策を提供する企業へと変貌を遂げています。特にGoogleとの提携は、この新しい成長ストーリーのエンジンとなり、今後もクリーンエネルギー分野における中核銘柄として高い注目が続くと予想されます。
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