銀価格見通し(10/10):50ドル突破で歴史的高値、過熱警戒も下落は押し目買いの好機か
銀価格が50ドルを突破。一時51ドル台へ急騰。短期間で歴史的高値水準を付けたことで、目先は相場の過熱を意識した調整売りを警戒。しかし反落は、押し目買いの好機と考えたい。注目の重要チャート水準をIG証券のアナリストが解説。

要点
産業需要の拡大、米国の重要鉱物の指定、米ドル信認の低下という3つの要因が重なり、銀価格は9日の市場で節目の50ドルを突破。一時51ドル台へ急騰し歴史的高値を付けた。短期間での上昇拡大で銀価格の割高感が意識されやすい状況にある。目先は調整売りが警戒される。しかし、反落の局面は押し目買いの好機と捉えたい。注目のサポートラインは48ドルと46ドル。上昇継続なら52ドルの挑戦が視野に入る。
銀価格が節目の50ドル突破、一時51ドル台へ急騰
金価格と同じく、銀価格の上昇も止まらない。9日の市場で節目の1トロイオンス50ドルを突破。一時51ドル台まで急騰し、歴史的な最高を付けた。IGレートの高値は51.25ドルだった。
銀価格1時間足チャート:10月以降

出所:IGチャート
銀価格、3つの急騰要因
筆者は、3つの要因が銀価格の急騰要因になっていると考えている。
一つが産業需要の拡大である。The Silver Instituteの調査によれば、産業需要用としての銀は、総需要のうち約6割を占めるという。太陽光発電、電気自動車そしてAI産業の成長を受け銀の産業需要が拡大している。The Silver Instituteの2025年予測によれば、銀の総需要量は5年連続で総供給量を上回る見通しにある。
また、世界銀行が2024年12月10日に公表したブログによれば、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融緩和と再生可能エネルギーに絡む需要増が、リサイクルを含む供給を上回る見通しにあるという。供給の伸びが強い需要に追い付かず、2026年も銀価格は上昇すると予想している。
情報ソース
Precious metals surge to all-time highs
米国の政策も銀価格の押し上げ要因になっている。9月にトランプ米政権は鉱物資源の調達網確保を目的に銀を「重要鉱物」の暫定リストに加えた。将来銀に対して関税が課される可能性があるとの思惑が市場に広がり、世界の現物取引の中心地であるロンドン市場から米ニューヨーク商品取引所の倉庫へ銀が大量に流入している。ロイターの報道によれば、米ニューヨーク商品取引所(COMEX)の銀在庫は先週、過去最高を記録したという。この動きはロンドン市場における流動性の引き締まりをもたらしており、需給面から銀価格を支える構造的要因となっている。
米ドルの信認問題にも注目したい。トランプ米政権が相互関税を発表して以降、米ドルの信認が揺らぎ、ドル指数は年初来で一時11%下落する局面が見られた。現在は米ドル安トレンドが一服している。しかし、金価格だけでなく暗号資産のビットコインも対米ドルで最高値を更新し、ビットコインETFに資金が流入する状況も、米ドル不信の強さを示唆している。
米FRBの追加利下げ観測が高まっている状況も考えるならば、銀価格の反落局面では、以下で述べるサポートラインでの押し目買いを狙いたい。
金銀価格とビットコインの動向:年初来

ブルームバーグのデータを基に作成 / 2024年末を100とし指数化、10月9日時点
※ビットコインETF:iShares Bitcoin Trust
銀価格のチャート分析
46ドルまでの下落を想定
上のパフォーマンスチャートを確認すると、銀価格の割高感が次第に高まっていることが分かる。2023年以降、銀価格は次第に上昇トレンドへ転じていった。この間の金銀比価の平均は83.60である。現在はその平均を下回り80.5付近まで低下している。
目先は、銀価格の割高感(短期的な上昇の過熱感)による反落を警戒したい。
金銀比価の日次チャート:2023年以降

ブルームバーグのデータを基に作成
※金銀比価:分子に金価格、分母に銀価格で算出
今日以降、銀価格が調整売りに直面する場合は、以下にまとめたサポートラインの攻防に注目したい。最初の焦点は48ドルの維持となろう。現在、この水準に10日線が上昇している。また、直下の47.87レベルは8月20日の安値と10月9日の高値のフィボナッチ・リトレースメント23.6%の水準にあたる。
銀価格が48ドルを完全に下方ブレイクする場合は、45.70ドル~46ドルゾーンの維持が焦点に浮上しよう。直下の45.78レベルはフィボナッチ・リトレースメント38.2%の水準にあたる。また、20日線も45.70台まで上昇している。46ドルはサポートラインへ転換する可能性がある。2つのテクニカルラインが交差していることも考えるならば、まずは46ドルを重要サポートラインと想定したい。
「山高ければ谷深し」という相場格言がある。46ドルを下方ブレイクほどの調整売りに直面する場合は、同じくサポートラインに転換する可能性がある44ドルまでの下落を想定したい。
サポートライン
・48.00ドル:10日線
・47.87ドル:23.6%戻し
・46.00ドル:重要サポートライン
・45.70ドル台:20日線、38.2%戻し
・44.00ドル:サポート転換の可能性あり
52ドルのトライ
短期的な過熱感は銀価格の調整売りを促すだろう。だが、前述の急騰要因を考えるならば、下落の局面は押し目買いの好機と捉えたい。
目先は以下にまとめたレジスタンスラインの攻防に注目し、買いポジションの清算とトレンドフォローを重視した新たな買いポジションの保有を考えたい。
まずは、昨日の高値と安値のフィボナッチ・リトレースメントの攻防に注目したい。現在は、半値戻しの49.82ドルがレジスタンスラインとして意識されている(45分足チャート、黒矢印を参照)。各リトレースメントのラインでの買いポジションの清算と突破後の成行き買いを考えたい。
9日の高値51.24ドル(IGレートは51.25ドル)の上方ブレイクは、さらなる上値トライのサインとなろう。この場合は51.50ドルのトライを想定したい。銀価格が51.50ドルをも突破すれば、次の節目の水準52ドルが視野に入ろう。テクニカルの面ではフィボナッチ・エクステンション161.8%の水準52.05ドルとなる。このラインでは買いポジションの清算を意識したい。
レジスタンスライン
・52.05ドル:フィボナッチ・エクステンション161.8%
・51.50ドル:レジスタンスライン
・51.24ドル:10月9日の高値水準
・50.57ドル:76.4%戻し
・50.16ドル:61.8%戻し
・49.82ドル:半値戻し
銀価格の日足チャート:2025年8月以降

TradingView提供のチャート
銀価格の45分足チャート:10月7日以降

TradingView提供のチャート
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