ドル高/円安維持に必要な3つの条件

期待は長く続かない

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イエレンFRB(以下FED)は、10月28-29日に開催した連邦公開市場委員会(FOMC)で量的緩和(QE)の縮小を決定しました。一方、10月31日には日銀が予想外の追加緩和を決定しました。日米金融政策のコントラスト(方向性の違い)が鮮明となったことで、ドル円は11月6日に約7年ぶりとなる115円台への到達に成功しました。

2013年4月の異次元緩和導入は「規模のサプライズ」でしたが、今回の追加緩和は「タイミングのサプライズ」と言えます。しかし、サプライズの質は違ってもそのターゲットは共通しています。それはマーケットの「期待」です。「実体経済」ではなく、単に「期待」に働きかける政策が長続きしないのは、2014年の円相場と国内株式が必ずしも円安&株高一辺倒で進行しなかったことが示唆しています。よって、追加緩和のみ頼った現在のドル高/円安トレンドが続く可能性は低いでしょう。

では、日銀の追加緩和効果が剥落した後も、ドル高/円安トレンドが継続するための条件と何でしょうか?今回はこの点を考えます。


クリアすべき3つの条件

結論から言えば、その条件は3つあります。

最初の条件は、今後発表されるアメリカの経済指標が総じて良好であることです。
先月29日に公表されたFOMC声明では、労働市場の改善やインフレ見通しについて楽観的な見通しを示唆してきました。そして、最も重要な金融政策の方向性に関しては、今後の指標データにより米経済が、FEDが定めた雇用と物価目標に向かって予想よりも速く加速していることを示すようならば、FF金利の誘導目標の引き上げは現時点での見通しよりも早くなる可能性がある、と指摘してきました。
よって、今後発表される経済指標、特に雇用、個人消費そしてインフレの各関連指標が総じて市場予想を上回るようならば、マーケットはFEDによる早期利上げを再び意識するでしょう。実際、11月第1週目に発表されたISM製造業指数(10月)やADP雇用統計(同月)の良好な結果を背景にアメリカの2年債利回りには再び上昇圧力が強まっています。
条件1のクリアは、ドル買い要因と捉えておくべきでしょう。

2つめの条件は、アメリカの株式市場が高値圏を維持することです。
アメリカの株式市場がそのような展開となれば、グローバル株式も堅調に推移するでしょう。
条件2のクリアは、円売り要因として捉えておくべきでしょう。

ただし、条件1のクリアが条件2のクリアの障害となる可能性があります。
理由は早期利上げ「懸念」です。現在のグローバル株式市場はアメリカをはじめ、緩和中毒に陥っています。このため条件1のクリアが、逆にFEDの早期利上げ「懸念」を高め、皮肉にもアメリカの株式市場の下落を招く可能性があります。アメリカの株式市場が崩れれば、グローバル株式市場も再び不安定化するでしょう。そして世界的な株安はドル高/円安トレンドの逆回転リスクとなるでしょう。

そこで重要となってくるのが、最後の条件3です。
それは、日欧の緩和強化です。

「条件1のクリア→早期利上げ「懸念」→条件2のクリアに失敗」、という負の連鎖を断ち切る最も有効な手段は、FEDに代わる新たな緩和マネーの供給源です。その候補として注目されるのが、日銀と欧州中央銀行(ECB)というわけですが、上述の通り日銀は先頭を切って追加緩和に踏み切りました。
よって、今後最大の焦点はECBの動向でしょう。ECBが日銀に追随しQEの導入に踏み切ることを決断すれば、新たな緩和マネーの供給源の出現にグローバル株式市場は安堵するでしょう。そして、上述した負の連鎖を断ち切ることが出来るでしょう。また、米金利の急上昇リスクも後退(米金利の緩やかな上昇トレンドを誘発)するでしょう。
前提条件3のクリアは、ドル買い/円売りを同時に促す要因となるでしょう。

【ドル高/円安トレンド継続の条件】


ドル円、2015年秋に120円トライも

米経済指標データを見極めるための時間とECBの緩和強化待ちという状況を鑑みるに、マーケットが注目している120円トライは来年になると想定します。では、来年のいつごろ120円をトライするのか。
筆者は、早ければ来秋にもドル円は120円をトライすると考えています。理由は以下です。


①FEDが利上げに踏み切るのは早くても来年6月以降であること
②最初の利上げに踏み切っても米経済の成長を確認する必要があること
③円高に振れやすい夏場を越える必要があること
④FEDが本格的な利上げサイクルに入ったと確信することが必要なこと

尚、2011年10月31日に記録した史上最安値75.31レベルからの61.80%がちょうど120円レベルに位置しています。120円は単に節目のポイントというだけでなく、テクニカル面でもさらなるドル高/円安の重要な分岐点になると考えられます。

【ドル円週足チャート】


この市況コメントは、2014年11月6日時点のマーケット状況をもとに作成されております。

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