不安定な株式市場は米ドル相場のサポート要因に
米国株が再び不安定な状況に陥っている。株安は米ドル相場のサポート要因である。米金利の低下圧力が後退しドル円は反発ムードにあるが、その勢いに強さは見られない。ユーロ円はドル円の動きに影響を受ける状況が続くだろう。目先に予想されるトレンドと注目のチャートポイントは?詳細はIG為替レポートにて。
不安定な株式市場は米ドル相場のサポート要因に
【サマリー】
・原油安と米長期金利の低下基調は景気後退を意識した動き
・米金融引き締めの長期化観測で2年債利回りの低下幅は限定的
・金融引き締めの長期化観測と景気後退の懸念で米国株は不安定な状況が続く
・不安定な株式市場は米ドル相場のサポート要因に
不安定な状況が続く米国株
6日の外為市場は、米ドル買い優勢の展開となった。米ドル相場のサポート要因となったのは株安だった。
米国の株式市場は再び不安定な状況となっており、6日は主要な株価指数が下落した。原油安を受けたエネルギーセクターの下落(マイナス2.65%)が、米株安をけん引した。
原油先物市場では、北海ブレント原油先物(BRENT)が今年の1月以降で初めて80ドルの水準を割り込んだ。NY原油先物(WTI)も続落し、一時73.41ドルと昨年12月以来の安値を付けた。
原油安の主因は景気後退の懸念とそれに伴うエネルギー需要減の観測である。景気後退の懸念は、米長期金利(10年債利回り)の低下幅の拡大要因となっている。
原油先物相場と米金利のチャート
拡大傾向の逆イールド
注目すべきは、米2年債利回りの動きである。
上のチャートを見ると、上昇の圧力は確かに後退している。しかし長期金利(米10年債利回り)と比べると、その低下幅は限定的である。
米金融政策の方向性を織り込んで動く2年債利回りの特性を考えるならば、今の2年債利回りは将来の利上げ政策を意識した動き-利上げのペースよりもインフレを抑制するために連邦準備制度理事会(FRB)による小刻みな利上げが続くことで、結果的に政策金利の水準が引き上げられることを意識した動き-と考えることができる。
ゆえに、長短金利差(10年債利回り-2年債利回り)のスプレッド(逆イールド)は拡大傾向にある。
米国の長短金利差:2年債利回りと10年債利回りのスプレッド
不安定な株式市場は米ドル買いの要因に
米金融引き締めの長期化と将来の景気後退が同時に意識されやすい状況にあることを考えるならば、今後米国の株式市場では企業業績の悪化(業績見通しの下方修正)に対する懸念がテーマとなる可能性がある。
この懸念が先取りされやすい12月は、引き続き米国株の不安定な状況(ボラティリティが拡大する状況)を意識したい。それゆえ、外為市場での米ドル相場の突発的な反発(リスク回避相場による米ドルの買い戻し)を想定しておくことが重要となろう。
米ドル相場が反発する場合は、その強さを確認するため常にドルインデックス(DXY)の動きをチェックしておきたい。
現在のドルインデックスは104.00レベルでサポートされ、200日線(MA/105.64レベル)の上方ブレイクを試す状況にある。この移動平均線を突破し、かつ106ポイント台へしっかりとのせてくる場合は、米ドル相場の短期的な反発圧力が強まっているシグナルと考えたい。
米ドル相場の反発局面では、モメンタム(相場の勢い)の動きも重要な指標となろう。現在はゼロライン以下で推移しているが、200日線や106ポイントの突破だけでなく、モメンタムのゼロライン突破も確認される場合は、104.00レベルがひとまずサポートポイントとして意識される可能性が高まるだろう。
ドルインデックスのチャート
ドル円の展望とチャートポイント
138.00の突破が焦点に
株式市場、特に米国株が再び不安定な状況に陥っていることで、ドル円(USDJPY)は米ドル買いにサポートされる展開となっている。
強い米経済指標を受けて米金利の低下圧力が後退している状況も考えるならば、今はドル円の短期的な反発相場を意識する局面にある。
しかしモメンタム(12日間)では、反発相場の勢いが見られない。この点は、上で述べたドルインデックス(米ドル相場)の動きと連動している。
よって、ドル円が反発基調を維持する場合、目先は138.00レベルが “レジスタンス転換” し、今の反発相場を止める可能性を意識しておきたい。この展開となる場合は、ドル円の反落を想定したい。テクニカルの面では200日線(MA/134.85レベル)を再び下方ブレイクするかどうか?この点が焦点となろう。200日線の下抜けが確認される場合は、今月2日の安値133.62レベルのトライを意識したい。
逆にドル円が138.00レベルの突破に成功する場合は、21日線(MA/139.16レベル)を視野に反発相場が続く可能性が高まろう。
ドル円のチャート
ユーロ円の展望とチャートポイント
21日線での反落リスクを警戒
ドル円の動きに影響を受けているユーロ円(EURJPY)だが、米金利の反発圧力が弱いことを考えるならば、現時点ではドル円の上昇幅も限定的となることが予想される。また、上で述べた「不安定な株式市場→米ドル買い」の展開を想定するならば、ユーロドル(EURUSD)の反落リスクを意識する局面にある。
そしてテクニカルの面では、21日のMA(今日現在144.20レベル)と同EMA(今日現在144.02レベル)ので反発が止められる状況が続いている。
これらの状況を総合的に考えるならば、ユーロ円が反発しても21日線で反落の展開を警戒する局面にある。
ユーロ円が21日線の突破に成功しても、ドル円のトレンドが転換(上昇→下落)しつつある状況を考えるならば、レジスタンスライン(今日現在145.05レベル)で反発が止められる可能性が高いだろう。
一方、ユーロ円の下落局面では、142.00を再び下方ブレイクするかどうか?この点が焦点となろう。
ユーロ円の142.00ブレイクが確認される場合は、このレポートで何度も取り上げている半値戻しの水準140.90レベルの再トライを想定したい。
ユーロ円のチャート
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