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米国株に逆風吹かず S&P500最高値 FRBが利下げ姿勢維持

FRBが公表した経済見通しは年内3回の利下げを示唆。パウエル氏の記者会見も安心材料となり、S&P500は最高値を更新した。

米国株に逆風吹かず S&P500最高値 FRBが利下げ姿勢維持 出所:ブルームバーグ

アメリカの株式相場が逆風を回避した。米連邦準備制度理事会(FRB)は20日に公表した経済見通しで、2024年中に3回の利下げを行う方向性を維持。20日の金融市場ではFRBの6月利下げの確度が高まり、S&P500種株価指数は2024年に入って19度目の史上最高値更新を果たした。また、ジェローム・パウエル議長の記者会見でも物価上昇減速や雇用情勢悪化への懸念は示されず、市場の安心材料となった。ただ、パウエル氏は引き続き、物価上昇率の高止まりや雇用情勢の急変を警戒しており、今後、FRBの金融政策をめぐる思惑が株式相場を大きく動かす可能性は拭えない。

FRBが経済見通しで年内3回の利下げ方針を維持

FRBは19、20日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で5会合連続で政策金利を維持した。また、FOMCの結果と同時に公表した経済見通しでは、2024年末の政策金利が4.6%程度になるとの見込みを提示。現在の政策金利(5.25-5.50%)を基準にすれば、0.25%幅の利下げが3回行われるとの方向性を示した形になった。12月時点の見通しと変わらない回数だ。

FOMC後に発表された経済見通しでの政策金利の水準(2024年3月21日作成)

FRBが利下げ姿勢を維持したことで、長期金利(10年物米国債利回り)は低下。20日のニューヨーク債券市場での終値は4.271%となり、前日から0.025%ポイント下がった。CMEグループのデータによると、6月のFOMC後に政策金利が現状よりも低くなっていることについて投資家の動向から算出される確率は、日本時間21日午前11時段階で約75%となり、FOMC前の水準(64%程度)から上昇した。6月利下げの確率は17日には55%程度まで下がっていただけに、投資家の利下げへの期待が大きく回復した形だ。

S&P500は今年19回目の最高値更新

こうした米国の金利の先高観の弱まりはS&P500(SPX)の追い風となった。20日の終値は前日比0.89%高の5224.62。1月19日に約2年ぶりに史上最高値を塗り替えて以来、合計19回目の記録更新となった。

S&P500と長期金利の推移のグラフ(2024年3月21日作成)

株式市場に安心感が広がった理由には、パウエル氏が今後の経済について楽観的な見通しを示したこともある。パウエル氏は記者会見で「物価上昇率は大きく減速し、雇用情勢は強い状態が維持されている。とても良いニュースだ」と発言。物価上昇率がFRBの目標である2%に向かって低下していくとともに、雇用情勢悪化の懸念も強まっていないとの見方を示した。

FOMC前の金融市場では、FRBが物価や雇用への警戒を強めるのではとの観測もあった。12日発表の2月の消費者物価指数(CPI)の伸び率は市場予想を超える高さで、FRBが利下げを決めにくくなり、S&P500の上昇の重荷になる要因。8日発表の2月雇用統計では失業率の上昇が確認され、米国経済の失速が株価を下押しする材料になりえるとの不安があったからだ。しかしパウエル氏は「経済は順調だ」として、市場の不安を払拭している。

パウエルFRB議長は雇用情勢急変のリスクにも言及

一方、パウエル氏は事態の変化も念頭においている。記者会見では最大の課題である物価上昇率について、「依然として高すぎるし、低下への歩みが確約されているわけではない」と言及。また、「雇用情勢に予想外の弱さがみられれば金融政策で対応する必要が生じる」とも述べた。

物価上昇の高止まりや雇用情勢悪化はいずれも米国経済にとって悪い材料であることは間違いない。今後の経済指標次第では、S&P500の上昇の勢いが削がれる可能性は残っていそうだ。


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