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PCE物価減速予想 上振れのおそれも S&P500再び波乱?

アメリカの1月PCE物価は落ち着きが予想されている。ただし1月の物価統計は上振れも目立ち、S&P500に波乱のおそれも。

PCE物価減速予想 上振れのおそれも S&P500再び波乱? 出所:ブルームバーグ

アメリカ商務省が29日に発表する1月の個人消費支出(PCE)物価指数は物価上昇の減速が予想されている。総合指数の伸び率は前年同月比2.4%になるとみられ、米連邦準備制度理事会(FRB)が目標とする2%への接近が感じられそうだ。ただし1月の物価関連の統計は伸び率が予想を上回るケースも目立つ。1月の消費者物価指数(CPI)が予想を超える強さだった13日は、FRBの利下げ観測が後退してS&P500種株価指数が急落しただけに、PCE物価指数で再度波乱が起きるおそれもありそうだ。

アメリカの1月PCE物価は総合指数の伸び率が2.4%の予想

米商務省は29日午前8時30分(日本時間29日午後10時30分)に1月のPCE物価指数を発表する。ロイターがまとめた事前予想によると、総合指数の伸び率は2.4%となり、12月の2.6%から低下する見通し。また、食品とエネルギーを除いたコア指数の伸び率は2.8%となり、やはり12月(2.9%)からの物価上昇減速が見込まれている。

アメリカのPCE物価指数(総合、コア)の前年同月比伸び率の推移のグラフ(2024年2月27日作成)


1月PCE物価指数が予想通りの結果になれば、総合指数の伸び率は2021年2月(1.9%)以来、コア指数は同じ年の3月(2.3%)以来の低さとなる。物価上昇率の低下はFRBの利下げの可能性を高める状況を生み出しそうだ。FRBは物価上昇率を2%まで下げることを目指し、2023年7月まで利上げを進め、その後、政策金利を5.25-5.50%という2001年以来の高さで据え置いている。

1月の物価統計は予想よりも上振れるケースも目立つ

一方、物価に関する経済統計は1月に上振れするケースも目立つ。13日発表の1月CPIは総合指数、コア指数ともに市場予想を上回る結果。利下げ期待の後退が長期金利(10年物米国債利回り)の上昇につながり、S&P500(SPX)が1.37%安となった。また、1年前に発表された2023年1月のPCE物価指数もコア指数の伸び率が4.3%の予想に対して、4.7%という結果になり、S&P500が1.05%安となった。

S&P500とアメリカの長期金利の推移のグラフ(2024年2月27日作成)

29日に発表される1月のPCE物価がこうした前例に従えば、株式相場にとっては不安材料といえる。FRBのジェローム・パウエル議長は1月31日の連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で、次の金融政策変更が利下げ方向になることを示唆しつつも、物価上昇率が持続的に2%に向かって下がっていることについて「より大きな確信」が必要だとしていた。物価上昇率の予想からの上振れはFRBの確信を弱める結果といえ、金融市場では利下げが遠のくとの観測が強まりかねない。

PCE物価の上振れはS&P500の重荷になる可能性も

足元の金融市場ではFRBが6月までには利下げに踏み切るとの見方が優勢だ。CMEグループのデータによると、6月のFOMC後に政策金利が現状よりも低くなっていることについて投資家の動向から算出される確率は、日本時間27日午前11時段階で約62%。ただ、この確率は1月CPI発表前は90%を超えていただけに、金融市場での利下げ観測はすでに後退が進んでいるといえる。

このところのS&P500は利下げ期待の後退で一時的な値下がりに見舞われながらも、全体としては値上がり基調を維持してきた。しかし物価上昇の根強さは米国経済にとっては見過ごすことができない悪材料なだけに、事態の長期化は投資家心理にとっての重荷になりそうだ。


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