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ユーロ圏経済に低成長リスク ECBが利上げ終了示唆 ユーロ安進行

ECBが経済見通しを引き下げ、利上げ打ち止めを示唆した。低成長リスクへの警戒があるとみられ、円高ユーロ安が進んでいる。

出所:ブルームバーグ

ユーロ圏経済における低成長リスクが拡大している。欧州中央銀行(ECB)は14日の理事会で政策金利の引き上げを決めると同時に、今回が最後の利上げになる可能性を示唆。同時に2025年までの成長率の見通しを下方修正した。物価上昇抑制のために利上げを決めつつ、景気への悪影響にも配慮せざるをえない難局を迎えているようだ。金融市場では景気維持のためのの利下げにも関心が向かうが、クリスティーヌ・ラガルド総裁は記者会見で、物価上昇再加速を招きかねない利下げへの言及を避けた。ただし外国為替相場はユーロ安へと動き始めており、15年ぶりの高値にあったユーロ円相場の潮目の変化も感じられる。

ECBの中銀預金金利は過去最高の水準に

ECBは14日の理事会で政策金利の0.25%引き上げを決定。政策金利の下限にあたる中銀預金金利を4.00%にする。利上げは10会合連続で、中銀預金金利は過去最高の水準に達した。ECBは声明で物価上昇について「依然として高すぎる水準に、長すぎる期間とどまると予想される」と分析。一方、引き上げ後の政策金利の水準については「十分に長い期間維持すれば、物価上昇率が適切なタイミングで目標(2%)まで下がることに大きく貢献するだろう」と言及し、今回の利上げが最後になる可能性を示唆した。

また同時に発表された経済見通しでは、2023年の実質成長率が年率0.7%とされ、6月時点の予想(0.9%)から下方修正された。2024年も1.5%から1.0%に、2025年も1.6%から1.5%に引き下げられている。ユーロ圏の成長率は2023年1-3月期、4-6月期ともに前期比0.1%で、景気後退の瀬戸際に立たされている。

ユーロ圏の物価上昇率の低下はわずか

今回の理事会の決定は物価上昇と闘う姿勢を示しつつ、利上げ打ち止めを示唆するという相反する内容を含む。ユーロ圏の8月の消費者物価指数(CPI)の伸び率は、エネルギー、食品、酒類、タバコを除いたコア指数で前年同月比5.3%で、3月につけたピークの5.7%からの低下はわずか。にも関わらず利上げ打ち止めをほのめかす決定からは、経済成長の鈍化への危機意識の強さが感じられる。

ユーロ圏の消費者物価指数(CPI、総合、コア)の伸び率の推移

ラガルド氏は記者会見でユーロ圏経済について「約5四半期にわたり、本当に非常にゆっくりとした成長の中にある」と言及。経済成長をめぐるリスクは下振れ方向に傾ていると述べた。企業向けの貸し出しは減速し、家計向け貸し出しは大幅に減少しているといい、ラガルド氏は「これまでの政策金利の引き上げの波及効果は、過去の利上げ期よりも強い」とも述べている。

ラガルド氏は利下げへの言及を避ける

このため金融市場の関心はECBが利下げに踏み切るタイミングに向かっている。金融情報会社リフィニティブのデータによると、2024年4月の理事会後に政策金利が現状よりも低くなっている確率は4割程度あると見積もられている。一方、ラガルド氏は記者会見で利下げの可能性について問われ、「その言葉は一言も発していない」と応じた。安易な利下げへの言及が金利低下を引き起こし、物価上昇を再加速させることへの警戒があるとみられる。

ただ、ユーロ円相場(EUR/JPY)では14日のECBの決定発表後、ユーロが売られて円が買われる流れが強まった。日本時間15日午後は1ユーロ=157円台前半で取引され、発表直前の158円台前半から1円程度の円高ユーロ安水準となっている。リフィニティブによると、ユーロ円相場は8月30日には一時、159.76円をつけ、2008年8月29日(161.17円)以来約15年ぶりの高値にあったが、今後はユーロ安への動きが意識される局面も増えてきそうだ。

ユーロ円相場の推移と主な出来事

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