米ドル高優勢でむかえるFOMC　焦点はパウエルFRB議長の会見内容

サマリー

・強い雇用指標で米金利が上昇、外為市場は米ドル高優勢の展開となった
・今日も米雇用関連の経済指標が発表される、労働市場の堅調さを示すか注目
・より注目すべきはパウエルFRB議長の会見である、“タカ派”ならば米ドル高の要因に
・米国イベントがドル高要因となれば、ドルインデックスは106.51を突破するだろう

強い雇用指標、米金利の上昇、米ドル高

30日の外為市場は、米ドル高優勢の展開となった。

この日発表された第1四半期の米雇用コスト指数は1.2％と市場予想の1.0％を上回った。

強い雇用指標の結果に米10年債利回りは上昇で反応。米金利の上昇に追随し、外為市場では米ドル高の展開となった（下のチャートを参照）。

米10年債利回りとドルインデックスのチャート：5分足 米経済指標発表あとの動き

米雇用関連の指標に反応する市場

昨日は第1四半期の雇用コスト指数の他、4月の消費者信頼感指数（コンファレンス・ボード）も発表された。後者は97.0と市場予想（104.0）を下回り、2022年7月以来の水準に低下した。

しかし、米金利と米ドル相場が反応したのは、前者の強い雇用コスト指数の方だった。これら市場の反応は、米経済指標のなかでも、今は雇用指標の重要性が高いことを示唆している。

今日も米国の雇用指標が発表される。4月ADP雇用統計の市場予想は18万人（前月18.4万人）、3月雇用動態調査（JOLTS）求人件数の市場予想は869万件（前月875.6万件）である。

第1四半期の雇用コスト指数に続き、これら雇用指標でも労働市場の堅調さが確認される場合は、連邦準備制度理事会（FRB）による利下げ期待がさらに後退する要因となろう。外為市場では米ドル高の進行を想定しておきたい。

米国の雇用関連指標

より重要なのはパウエルFRB議長の会見

今日の雇用指標が強い内容となれば、「米金利の上昇→米ドル高」の要因になり得る。一方、さえない内容ならば「米金利の低下→米ドル安」の要因となろう。

しかし、雇用指標で米ドル相場がどちらに振れても、その持続性は連邦公開市場委員会（FOMC）後のパウエルFRB議長の会見内容次第となろう。

3月の消費者物価指数（CPI）と個人消費支出（PCE）価格指数では、インフレの粘着性が確認された。雇用関連の経済指標では労働市場の堅調さを示す内容が確認されている。

これらファンダメンタルズの状況が考慮され、年内の利下げ開始を想定しながらもパウエル議長はインフレ再燃の方を警戒し、政策金利を現在の高水準でより長く維持する方針を示す可能性がある。

この点を強く意識しているのが短期金融市場である。現状、9月利下げの可能性が30％前後まで低下している。想定される今年3回の利下げも、今では1回あるかどうかという状況にある。

米国 政策金利の予想推移

再び高まりつつある米ドル高のムード

パウエルFRB議長の会見内容が”タカ派”となり、上で述べた米雇用指標が労働市場の堅調さを示す内容となれば、米金利は上昇することが予想される。外為市場では米ドル高優勢の展開を想定しておきたい。

米ドル相場の大まかなトレンドを示すドルインデックス（DXY）は現在、10日線を完全に上方ブレイクしている（下の日足チャート、緑ラインを参照）。21日線にサポートされての反発であること、そしてモメンタムがゼロラインを突破し上昇基調にあることも考えるならば、再び米ドル高のムードが高まっている。

この状況で今日の米国イベントが米ドル買いの要因となれば、4月16日の高値106.51レベルのトライそしてブレイクアウトを想定しておきたい。この水準（106.51レベル）を難なく上方ブレイクする場合は、昨年11月の高値水準107.11レベルを視野にドルインデックスの上昇幅が拡大する展開を想定しておきたい。

一方、パウエル会見や雇用指標が米ドル安の要因となっても、今週3日に4月の雇用統計が控えている。内容を見極めたいとの市場心理が働きやすいため、米ドル売りは限定的となることが予想される。

ドルインデックスの反落局面では、21日線（105.45レベル）の維持が焦点となろう。

ドルインデックスのチャート：日足 23年10月以降

ドル円の見通しは別レポートで

4月29日の円高の印象が強く、今は円相場の動きに注目しがちである。しかしドル円（USD/JPY）のトレンドは、米金利の動向に大きな影響を受ける。よって今日以降は、米国イベントと米金利の反応を注視したい。

米金利の動向次第でドル円は、こちらのIG為替レポートで取り上げているレジスタンスの水準をトライする展開が予想される。